帰蝶(きちょう) (PHP文芸文庫)

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569768632

作品紹介・あらすじ

斎藤道三の娘で織田信長に嫁いだ帰蝶(濃姫)。その謎多き人生に大胆に迫り、女の目線から信長の天下布武と本能寺の変を描いた衝撃作。

感想・レビュー・書評

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  • 以前から興味を持っていた濃姫、「麒麟がくる」を観ていてもっと詳しく帰蝶を知りたくなった。
    帰蝶は本能寺の変よりずっと以前に早世したか離縁させられたと考えられていたが、近年京都の織田家過去帳に78歳で亡くなった帰蝶らしき人の記載があり、著者は帰蝶は生きていたとみる説が自然ではなかろうかと考えたという。帰蝶が表に出なくなったのは疱瘡で顔に痕が残ってからとの説明に信憑性を感じる。帰蝶は道三の娘で信長の妻となってからも戦国時代を生き抜いた勝ち気な女性という印象が強かったが、子が授からず側妾らが産んだ子を育て慈しんだと知り別な面を知れた。
    諸説がとびかう本能寺の変についても、本書は立入宗継を登場させ興味ある展開となっている。名物茶器「楢柴」を使い、信長の上洛時間を早めた結果に本能寺の変となった運びは面白い。どこまでが史実なのかと思わずにいられない。宗継は天皇や院の財産管理を請け負った金融業者(禁裏御倉識)で、豊かな経済力と人脈を縦横に駆使して暗躍した実在の人物である。
    いやはや諸田さんの想像力に脱帽した。

  • 通説では、早世あるいは離婚したと考えられていた信長の正室=濃姫(帰蝶)。
    近年になって、織田家過去帳の記載から、帰蝶が信長の死後も生きながらえたとの説の信憑性が高まったことが、著者がこの小説を書くきっかけだそうだ。
    本能寺の変の実行者は明智光秀だが、その黒幕は?と、古来様々な説が流布されている。足利義昭説、秀吉説、徳川家康説等々、かまびすしいばかり。
    それだけ、当時の信長の存在が絶大だったという証左だろう。
    この小説で著者は、黒幕とまで言わないが、光秀を決起させる舞台を設定し、唆せた人物を提示している。
    この人物と帰蝶との、世俗を超えた淡い交流を絡ませながら、作家の想像力と創造力の翼を広げ、この物語を創作した。
    それにしても当時の武将は、自家の存続のためとはいえ、何と多くの子をなしたことか。この作品にも、信長の子が何人も登場する。
    それぞれの数奇な運命が、作家の想像力を刺激するのだろう。信長の子の一人、冬姫の名が処々で語られる。信長の二女冬姫を主人公とした、葉室麟著の歴史長編がある。再読してみたくなった。


  • 織田信長といえば 
    かなりドラマとかにも なっているので 
    時代小説は 名前を読むだけでも苦戦する私には
    この本は 読みやすかったです。

    しかも、この本は 信長の正室を中心に描かれていました。
    謎多き 正室の人生とは。。。。

    昨年旅行で 安土城の模型を見ていたので
    城の中を描いているシーンは
    とても わかりやすく読めました。

    このあたりって 事実も色々わかってるけど、
    わからない部分も多いから 小説にしやすいのでしょうね~~

  • 何か「少し違う角度から視た戦国」という感の物語だ…<本能寺の変>が発生した事情の「裏に在った仕掛け?」を示唆するような内容も在って、一寸興味深い…

    ページを紐解き始めると、少し勢いが出て、一気に読了してしまった一冊だ…

  • 織田信長の妻の帰蝶(濃姫)を主人公とした歴史小説。帰蝶は信長の観察者である。帰蝶を信長の理解者とする描かれ方はあるが、本書の帰蝶は信長と異なる価値観を持っている。たとえば騙し討ちを卑怯と感じている。「夫が弟を成敗したことについてあれこれいうつもりはなかったが、信行は信長の仮病に誘われ、見舞いにきたところを惨殺された。騙し討ちというやり方が帰蝶は気に入らない」

    濃姫は歴史上、信長の人生において、それほど大きな存在として描かれなかった。濃姫の父親の斎藤道三が信長の将器を見抜いた話は有名であるが、それは道三の話であって、濃姫自身の話ではない。濃姫は、いつ亡くなったかも分かっていない。

    漫画『信長協奏曲』やNHK大河ドラマ『麒麟がくる』で濃姫(帰蝶)が重要キャラクターとして描かれるようになった。特に『麒麟がくる』は帰蝶役の沢尻エリカさんが大麻取締法違反で放送開始が遅れるという不幸な注目のされ方をした。しかし、急遽代役となった川口春奈さんが好演し、むしろ川口さんの帰蝶しか考えられなくなった。映画『レジェンド&バタフライ』は織田信長と帰蝶のダブル主演の物語である。

    『麒麟がくる』の帰蝶と明智光秀は美濃時代からの知り合いであった。椎名高志『MISTERジパング』でも二人は知り合いであった。これに対して『帰蝶』では帰蝶の幼少時に会った程度であり、帰蝶は光秀に指摘されるまで覚えていなかった。

  • 気まぐれで純粋ゆえに一旦怒ると手がつけられないが、帰蝶にだけは甘え信頼する。「麒麟がくる」の信長みたいだと思いながら読んだ。

  • 本能寺の変までの道のりがこんなに細かく書かれている本は初めて読んだかもしれません。
    帰蝶については、よくわからない部分が多い方ですが、こんな人だったらいいなーと思いつつ読みすすめました。

  • 歴史の真実は誰にもわからないから、それを逆手に小説を紡ぎ出せるなんて素晴らしいし、楽しませてくれてありがとうございますの気持ちでいっぱい。

    知的好奇心も刺激される。

    本能寺の変を計画した真の立役者は?
    もしかして本当かもしれない…と思いを馳せる。

    史実に基づくフィクションは、目線を誰かにするかによっても大きく違ってくる。
    帰蝶が軸の物語は初めて読んだのでなかなか新鮮な戦国体験ができました。

  • 帰蝶が主人公の本、今まで読んだことがなかったなあ。
    それにしても信長がひどい描かれようだったし、(著者が嫌いだからといっても、全面にだしすぎかなあ)けちょんけちょんやな。
    徳姫の自分の恋を成就させることしか考えず、思い立ったら後先考えず行動起こして突っ走る感じ、ひどいなあと思いながら読む。
    本能寺の変へ至る説は面白かった。

  • 大河ドラマ「麒麟がくる」で、沢尻エリカが演じるはずだった帰蝶(濃姫)。
    本能寺の変のあとも長く生きていたとは知らなかった。道三の娘で信長の正妻、明智光秀と旧知の仲、まさに歴史の真ん中で翻弄された人生で、何を考えて生きていたのか。

    本書では、彼女はあまり表舞台には出ないけれど、多くの側室やその子供たちをまとめ上げ、夫を支える聡明な女性として描かれている。
    本能寺の後、女性や子供たちが命からがら城を出る場面や、光秀の妻子を思いやるようなシーンも出てくるが、武将たち中心の戦国歴史ものと違って、淡々と現実を生き抜く女性の目線は新鮮に感じた。

    あとがきで、作者は信長が嫌いだと言っている。ながい日本の歴史を見ても、比叡山焼き討ちなど大量殺りくを実際にやったのは信長だけだそうだ。
    「麒麟がくる」では、結局帰蝶さまの出番はあまりないみたいだが、予定どおり沢尻が演じていたなら、夫を裏で操るダークな妻として描かれたのでは、とちょっと残念な気がする。

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著者プロフィール

諸田玲子
静岡県生まれ。上智大学文学部英文科卒。一九九六年『眩惑』でデビュー。二〇〇三年『其の一日』で吉川英治文学新人賞、〇七年『奸婦にあらず』で新田次郎文学賞、一八年『今ひとたびの、和泉式部』で親鸞賞を受賞。著書に『お鳥見女房』『あくじゃれ瓢六』『きりきり舞い』シリーズのほか、『四十八人目の忠臣』『波止場浪漫』『帰蝶』『女だてら』『尼子姫十勇士』『しのぶ恋』など多数。

「2023年 『其の一日 増補新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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