数学で未来を予測する (PHPサイエンス・ワールド新書 48)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569795546

作品紹介・あらすじ

タイムマシンで時間旅行できるなら、ギャンブルで大勝ちすることも、事故や災難を避けることもできる理屈ではある。では、数学で未来を予測することはできるだろうか。この難問に逃げることなく、正面から数学者が答えようとしたのが本書である。数学で予測できることはどんなことか、確率や統計の見方・考え方、ギャンブル必勝法を検証、経済現象の予測について考え、数学で予測できないことにも言及する。

感想・レビュー・書評

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    野崎昭弘
    1936年横浜市生まれ。東京大学理学部数学科卒業。同大学院数物系研究科修士課程修了。電電公社(現NTT)電気通信研究所、東京大学教養学部、同理学部、山梨大学工学部、国際基督教大学教養学部、大妻女子大学社会情報学部、サイバー大学IT総合学部などに在職。大妻女子大学名誉教授。専門はアルゴリズム理論、多値論理学、数学教育

    なお、コンピュータは、人間のように「音楽を聴きながら本を読む」というような器用なことはできないので、「一時に1つの基本ステップしか実行できない」、専門用語で言えば「 逐次制御方式」に従っている。しかしそのスピードはすさまじく、この原稿を書いている2011年6月の時点で世界最速のコンピュータ・システム、理化学研究所が富士通と共同開発した「 京」は、1秒間に8162兆回の演算をやってのけるという。だから「ありとあらゆる場合を調べつくす」というタイプの問題には、人間より桁違いに強くて、私にはむずかしすぎてとてもやる気が起こらない「世界一むずかしい(と称する)数独の問題」でも、私のパソコンがあっという間に解いてしまう。

    その点をからかって「数学は乙女のように清らかだ。だから子どもを産まない」と言ったのは 20 世紀のアインシュタインである。  しかし 17 世紀のガリレイが「自然は数学の言葉で書かれている」と言ったように、清らかな数学的理論が、ふしぎなくらい現実世界によくあてはまり、有効に役立った(今でも役立っている)のだから、おもしろいものである。

    そのさらに1000年以上の後、ユークリッドの公理が「現実の宇宙空間に、ほんとうにあてはまるのか」を 問題として 取り上げる人が現れた。 18 ~ 19 世紀のドイツの大数学者ガウスである。彼はハノーヴァーで大規模な測量に携わったとき、山の頂を結ぶ巨大な三角形の内角の和が「ほんとうに2直角になるか」を調べたのである。実際の測量には誤差がつきものなので、測定された内角の和は「ぴったり2直角」にはならないが、もしそのずれが、当時の測定誤差の範囲を越えていれば、「現実の空間には、ユークリッドの公理系はあてはまらない」とわかったことになる。

    「この方式に従って ければ、必ずもうかる」という必勝法は、私は存在しないと確信している。

    そもそもギャンブルの楽しみは、ひとつは「ソンをするかもしれない」というスリルであり、それがあるからこそ「当たった!」ときは、それこそ天にも昇る喜びを感じられるのである。その快感を一度でも味わうと、何回ソンをしてもその喜びが忘れられず、ギャンブルの深みにハマってゆく人もいる。

    数学的な必勝法があるのなら、多くのカジノがとっくにつぶれている。

  • 統計学について興味が出てきたところ、目に付いたので読んだ。
    はじめの方は面白い話も多かったが、次第にコラムと称して数式を載せただけのページが増えて読むのに苦労した。
    「標準偏差」の説明が全くないにも関わらず「大事なキーワード」としているところがあり、困惑した。大事なキーワードなら初歩から説明してほしかった。
    そのくせ著者の人を見下した冗談や雑談は頻繁に登場する。ここが一番好みじゃなかった。

    この本に興味を持つ層が本文中の内容だけで理解するのは難しいだろう。しかし内容を苦もなく理解できる層は、この本を手に取らないのではと思う。どこへアプローチしたかったのか不明な本だった。

  • 当たり前なことが多すぎて面白くない。面白かった部分はギャンブルの確率論。掛け金を倍掛けしていくことで確実に儲かる、マルチンゲール法と、確率1/2の賭けに2の乗数ずつ賭け金が出ることで期待値が無限大になる、ペテルスブルグのパラドックス。どちらも数学的には儲かるが、時間とお金が無制限にないといけない。

  • 縁遠いと思っていた数学をぐっと身近なものにしてくれて、「わかる!」と楽しい気持ちにさせてくれる本書。だからこそ、説明の過程に間違いがあってはいけません。校正をする際に一番気をつけたのは「数式に誤りがないか」という点でした。
    http://works.ouraidou.net/?page=2

  • 結論はそんなことはできないということでした。ギャンブルとか投資とかでもうけようと思って本書を開いた人には残念でした。野崎先生の本は非常に読みやすい。数式を追いかけることができる。わかった気にさせてもらえる。今回も、2項分布などいくつかなるほどと思えたものはあった。もちろんいつも通り他人に説明できるほどではないのだけれど。さて、私は一切の賭け事、ギャンブルはしない。宝くじや株なども含めて。トータルで見ると、こちらがもうかるようには作られていないと考えるからである。全くもって、おもしろみのない人間なのだ。たぶん、この点は父親ゆずりなのだろうと思う。ところが、何を血迷ったか、ストックオプションとかで、自社の株を買ってしまった。最初は調子よく、いくらもうかったなどと考えていたが、ふと気がつくと、下落。売れば損をする。売るときは退職するときとあきらめてしまった。本当は、自分の力で会社を盛り立てて、株価を上げよう、というインセンティブが働くはずなのだが。株や経済の話は複雑過ぎる。数学で何とか解釈しようとしても、人間の感情が入るので、一般論としてはほとんど不可能なのだ。そのことは、本書を読んで納得した。だからこそ、自分の頭でしっかり考えて冷静に判断する力が大切であるということもよく分かる。子どもたちにそういう力を身につけさせていく、それこそが今の教育に必要なものである、ということもよく分かる。しかし、20万円が24万円になったときの値上がり率が分からない?大学生?どこの?・・・女子大?中学受験の対策をしている小学5年生でも即答してくれる(と期待する)くらいの問題なのに。という意味では中学受験の勉強は決して悪くない。最後にそう感じたのでした。

  • 図書館で目当ての本の横にあり何となく目にとまったので読んでみた。要は確率・統計のお話し。それもかなり一般読者向けなので、前半は少し退屈でしたが、後半の確率・統計の話しになったところはそれなりに楽しめた。一般読者向けなので、データから予測する統計の話なんかは分かりやすくて専門書を勉強する前にこういう文章を読んでおくと分かりやすいかな。ただ、金融工学とか経済現象の話しは、「投資はギャンブルだ」などと結論していて全く参考にならない。著者は経済学のことはまともに知らずに数学的に述べているだけな雰囲気です。

  • 絶対は、ない! 老数学者が奏でる「3.11」犠牲者へのレクイエム。

  • 『201208 数学強化月間』

    統計学と経済のあたりが解りやすくてよかった。
    悪名高いブラック・ショールズ方程式がなぜ失敗したかよくわかった。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784569795546

  • 野崎先生の文章は判り易い.特に第4章の「大数の法則」や「仮説検定」などは数学ギライな人でも楽しく読めることだろう.

    ただ,第5章や第6章にある「こんな現実離れした理論でノーベル賞が取れるの?」という件はいただけない.

    Black-Scholes-Merton がノーベル賞を受賞するに到った主たる業績は「無裁定原理を利用することで "リスクに対する各投資家の選好"を推計することなくオプション価格評価を行うための理論から方法論を確立した」点であると思われる(例えば http://www.nobelprize.org/nobel_prizes/economics/laureates/1997/press.html の The method あたり).

    Black-Scholes 方程式は,あくまでこの業績の「副産物」であり,1) 完備市場を仮定(i.e.「なだれ現象」は起きない)した上で,2) 株価が幾何Brown運動に従う時に,3) Europen option 価格を簡便に評価できるツールでしかない.

    著者は,この(応用法の1つでしかない) BS方程式の前提となる 1) や 2) が現実的ではない,という理由で「こんな理論でノーベル賞が取れるのだろうか?」と主張しているのである.また,金融工学の基本的仮定と題する節はランダム・ウォークについての説明に終始しており,肝心の無裁定原理については一切記されていない.

    この点において,本書の内容はあくまで「数学で未来は予測できるか」についてであり,この点では高く評価できる.金融工学に対する批判の部分は,教科書の内容を鵜呑みにせず「しっかり考える力」を身に付けるいい教材と思えばよいだろう.

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著者プロフィール

野崎昭弘

一九三六年(昭和一一年)、神奈川県生まれ。五九年、東京大学理学部数学科卒業。六一年、東京大学大学院修士課程修了。東京大学助手、山梨大学教授(計算機械学科)、国際基督教大学教授(理学科)、大妻女子大学教授(社会情報学部)、サイバー大学IT総合学部教授を歴任。現在,大妻女子大学名誉教授。専攻、情報数学。著書に『電子計算機と数学』(ダイヤモンド社)、『πの話』(岩波書店)、『とらんぷ』(ダイヤモンド社)、『計算数学セミナー』(日本評論社)、『詭弁論理学』『逆接論理学』(中公新書)、『計算機数学』(共立出版)、『数学的センス』(日本評論社)、『トランプひとり遊び』(朝日新聞社)、『はじまりの数学』(ちくまプリマー新書)ほか。

「2021年 『まるさんかく論理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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