TPPでさらに強くなる日本

  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (178ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569811826

作品紹介・あらすじ

安倍政権は自由貿易に舵を取るとき! TPPによる農業の崩壊も、外国人労働者の流入やサービス低下も起こらないことを証明する。

感想・レビュー・書評

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  • 結局TPPとは何か。そしてTPPに加入することで生活に何が起きるのか。

    1.農業について…TPPで関税が撤廃される結果農業が破滅するというが、実際関税の高い作物の収支を概観するとそれらは農業として成り立っていない。それを守ることに意味はあるのか。TPPに加入することで安い農作物が入ってくることは消費者にとってプラス。農業従事者には打撃を受ける分、補償をすればよい。

    2.弁護士などの資格制度…外から入ってきてもすぐ食い荒らされる心配はない。

    3.公共事業…すでに都道府県と政令指定都市については海外の業者の入札を受け入れており、TPPによるインパクトは薄い。

     …本当かな。

     論理的におかしくないか?と思われるのは、

     農作物がTPPで安意輸入品が入るので消費者にとってはプラス。消費者が享受するプラスの分を農家に補償すればいい、というところ。

     消費者が享受する利益は、それぞれの家計に入ります。しかし、これは支出が減る、という形の利益なので所得税の納税が増えるわけではありません。百歩譲って農産物購入に対する支出が減る分、ほかの品目の消費を増やすと仮定してもそれはその品物を売った産業の「売上」。国家に還流する税金はそのごく一部のはず。

     それに対して農家に対する補償は100%国からの支出ですから、国家財政を圧迫します。

     また、全体としてTPPによるプラス効果でGDPは3兆円上がる。税収は1兆円位上がるだろう、としていますが、今の日本経済はGDP450兆円に対し国の税収は42兆円。地方税を合わせても50兆円位のはず。その割合では税収は増えないでしょう。

     税収が持ち上がるまでの間、関税を農家の補償に流用すればいい、と簡単に書いていますが関税も含め国家財政は赤字です。関税分がまったく手つかずで積み立てられているのなら良いですがそうでない以上、補償を増やす分の財源が必要です。

     いろいろな資料を読み込み、新しい視点もいくつも提示していますが、「急いで書いた」感がぬぐえません。

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著者プロフィール

1950年生まれ。東京大学農学部卒業。学習院大学博士(経済学)。経済企画庁国民生活調査課長、海外調査課長、財務省財務総合政策研究所次長、大和総研専務理事チーフエコノミスト、早稲田大学政治経済学術院教授、日本銀行政策委員会審議委員などを経て、現在、名古屋商科大学ビジネススクール教授。著書『昭和恐慌の研究』(共著、東洋経済新報社、日経・経済図書文化賞受賞)、『日本国の原則』(日経ビジネス人文庫、石橋湛山賞受賞)、『若者を見殺しにする日本経済』(ちくま新書)、『ベーシック・インカム』(中公新書)、『デフレと闘う』(中央公論新社)など多数。

「2021年 『コロナ政策の費用対効果』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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