生活保護vs子どもの貧困 (PHP新書)

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569815459

作品紹介・あらすじ

基準が引き下げられた「生活保護」と、拡大しつづける「子どもの貧困」。制度だけでは救えない真の問題に、新たな枠組みを提唱する。

感想・レビュー・書評

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  • 商店街に居場所をつくる
    風のすみか農場
    地域就労創出モデル
    山梨 タダゼミ
    子どもの貧困問題について調べていくと、勉強を教えるという支援方法が貧困の予防に効果が高い

  • 主に生活保護のシステムについての論。
    適正化モデルと人権モデルという2つの視点から生活保護のシステムの揺れ動きについて述べている。
    日本の貧困状況についても詳しく述べられている。
    子どもの貧困対策が、将来的な生活保護人口を減らす効果があることについても述べている。
    ただ、タイトルにあるほど多く子どもの貧困について述べているわけではない。うしろの方にほんのちょびっと載っているだけ。


    Facebookで誰かが読んでいて、興味があったので札幌市の図書館で借りた本。

  •  著者は福祉事務所のケースワーカーを皮切りに、生活保護行政の現場でずっと働いてきた人。そしてそのかたわら、ネット上で「生活保護110番」を運営し、ボランティアで生活困窮者の相談に乗ってきたという。
     つまり、行政側の視点と困窮者支援団体側の視点――両方から生活保護を論じられる稀有な立場にいるのだ。

     本書には、その2つの視点が十全に活かされている。どちらにも偏らない中立の立場から、生活保護行政のいまが論じられているのだ。

     著者は、生活保護を論じるには「適正化モデル」と「人権モデル」の2つの立場があるとする。

     「適正化モデル」とは、貧困の原因を個人に求め、個人や家族の責任を強調する立場。もっぱら問題視するのは「濫給(不必要な給付)」や「不正受給」である。片山さつき的立場といえようか。
     
     「人権モデル」とは、貧困の原因を社会に求め、政府の責任を強調する立場。もっぱら問題視するのは「漏給(生活保護を必要とする人が給付から漏れること)」や役所の不当な申請拒否である。湯浅誠的立場といえようか。

     著者は2つのどちらにも偏ることなく、両論併記的に双方の言い分を紹介する。そして、双方が歩み寄り、協力し合えるような解決の方途を探していく。

     私は「人権モデル」のほうに共感を覚えるし、これまで読んできた生活保護に関する本もおおむねそちら側の本である。だからこそ、バランスよく双方の視点を兼備した本書の内容は新鮮であった。

     後半は、子どもの貧困の問題にぐっとズームインしていく。
     この後半も示唆に富む内容ではあるが、前半とのつなぎがうまくいっておらず、テーマの異なる2冊の本を無理やりくっつけたような印象を受けてしまう。
     そこが弱点だが、いろんな意味でバランスの取れた内容であり、生活保護問題に関心のある人なら立場を超えて一読の価値がある。

  • 行政の現場で生活保護に携わる傍らで、ボランティアで「生活保護110番」を運営した著者による読み応えのある内容だった。 生活保護をめぐる「適正化モデル」と「人権モデル」のそれぞれの主張、世論の流れを当時のニュースを交えながら、記されている。双方の主張は、どちらも理も非もあるものではあり、著者は、双方を組み合わせて「統合モデル」を主張している。今後の生活保護の運用にあたっては、必要な人にとって、生活保護を受けやすくするとともに、生活保護から脱しやすくするという理念をしっかりと追求してほしいと思った。また、日本でのこどもの貧困が叫ばれて久しいが、貧困の連鎖が生み出されている状況をいかに解決するか、多様な主体が取り組みを進めなければいけない。また、本書の最後に、「厚生労働省の体制を充実させよ」という提言があることが素晴らしいと思った。世間一般では、公務員の無駄削減、人減らしが正義のように語られがちだが、生活保護という社会保障の根幹といえる制度の企画・運営がわずか数人でできるわけがない。必要な体制の強化に予算をかけることを惜しむべきではない。

  • 人権モデルと適正化モデルの対比,著者自身のケースワーカーとしての経験から,日本の生活保護の現状を変えていくためにどうすればいいのかの議論が展開されていたと思う。現実を冷静に見つめた上で徐々に現状を改善していくにはどうすればいいかという著者の姿勢に共感した。
    あと,「出口」という表現があったが,生活保護受給者に高齢者世帯や傷病・障害者世帯が多い中で「出口」をどのように考えたらよいのかなと思った。今後,考えていきたい。

  • 期待した内容とは異なっていたが、生活保護の現状に関する多くの情報を知ることができた。欲を言えばもう少し子供の貧困にフォーカスを当てて欲しかった。
    キッズドアのタダゼミなどの活動に従事されている方には本当に頭が下がる思いだ。何か力になれることがないか探してみようと思った。

  • 生活保護と子どもの貧困をテーマとして書かれている

  • 子どもの貧困は連鎖する。

  • 生活保護情勢に一石を投じる意見書。
    人権モデルと適正化モデルのどちらの意見もよくわかるけど、それをさらに一歩進めていかないと、せめぎあっているうちにどんどん貧困がせめてくるというのが分かり、怖くなる。
    生活保護費の増大に歯止めをかけていくことが、なぜ必要なのか、考えさせられる。結局は社会的な損失なんだろうけど、打ち切ったら余計ひどいことになるんですね。

    筆者も語っている通り、頑張っても無駄なら頑張らないとは、生活保護受給者だけでなく、その家庭の子どもにも波及していきそうで、その連鎖をいかに絶ちきるのか。そうするために自分になにができるか。よーく考えてみたい。

  •  生活保護制度を人権モデル(日弁連)と適正化モデル(財務省)の双方の視点から捉え、時代の中でどのように制度が揺れ動いてきたのか? またその争点等、理解が深まる一冊。
     子供の貧困対策法や自立支援法など最新の状況も丁寧に解説。
     良書だと思う。

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著者プロフィール

社会福祉士

「2013年 『生活保護vs子どもの貧困』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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