青鬼 怨霊(おんりょう)編

制作 : noprops(原作) 
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569825878

作品紹介・あらすじ

小説『青鬼』第4弾! 四たびジェイルハウスに閉じ込められたひろしとシュン。脱出を試みるが……。Ver.1.1をベースに小説化!

感想・レビュー・書評

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  • 絶望的な結末を迎えたあの日から2日後。シュンは3週間ぶりに登校した。以前と変わらぬ教室だが、そこには卓郎達の姿はなかった。あの出来事は現実だったのだと苦悶するシュン。そんな彼に追い討ちをかけるように、直樹の復讐劇が再び始まった。

    ***

    今までで一番絶望的な結末から2日後。明らかに様子がおかしい委員長を監視する名目で学校にやってきたシュンであったが、そこに委員長の姿はなかった。そして、惨劇の犠牲になった卓郎、美香、たけしの3人の姿も。胸に暗澹たる思いを抱え、苦悶しているとシュンは誰もあの事件について語っていない不自然さに気が付いた。自分を気遣って話しかけてくれたクラスメイトにそれとなく探りを入れようとすると、明らかに拒絶の姿勢をとられてしまった。いつもなら、ジェイルハウスの怪談がそこかしこでささやかれているはずで、ジェイルハウスで事件が起きたのだから、クラス内はこの話題で持ちきりになっているはずだというのに……。自分が休んでいる間、また別の場所で何かが起こったらしいと感づくが今のシュンには、それを知る術はなかった。同日、ウサギ小屋ではウサギが殺される騒ぎが起こり、校長が杏奈をわざわざ探しに来るという事件が起こってしまう。その様子から杏奈が何かをしでかしたに違いないという結論を導き出したシュンは、ひろしの力を借りようといつもの場所で落ち合うことにした。そこで、ひろしから今なぜクラスがあのような状態になっているのかという原因を知らされた。 本来の青鬼とは展開が違ってきた。この巻から大きく方向転換した印象。

    ゲームでは不気味で恐ろしい青鬼という怪物から逃げ、拾い上げた情報から脱出を図ることがテーマで、第1巻から第3巻まではそのテーマに沿っていた。ゲームを知っているとニヤリとする展開もあったし、ひろしが一人で淡々とクリアしていくゲームの展開より、一緒に惨劇を乗り越え続けた仲間たちが協力し、互いに助け合い、励ましあって問題を解決していく展開に胸も熱くなった。前作の終盤でついに取り返しがつかないほどの犠牲が出てしまい、またその犠牲も戻らないという絶望の終焉を迎え、さらに不審な行動をとる杏奈と、その裏で糸を引いている様子の直樹。

    彼らがこれからさてどうなるのかと思い読んでいたが、直樹の怨念が強すぎるせいなのか、直樹が始終出てきて青鬼がややかすんでしまっているのは些か残念だった。今までの一連の話は直樹の復讐も絡んでいたが、ここまではっきり主張してきたのは初めてだったので驚いたのもあるかも。しかし、改心したとはいえ卓郎も美香もたけしも直樹に酷いことをし続けていたし、ひろしはいじめに加担してなかったにせよ、まるで無関心だったのだから今更どうにか丸く収めようとするのは虫のいい話なのかもしれない。

    確かに卓郎は最悪だったし、その卓郎をおそれ窘めなかったたけしも、近くで見ていた美香もどう考えても最悪なのだが、困難の中人間的にも精神的にも成長した彼らに情が移ってしまっているようで、直樹の方を若干恨めしく思ってしまった自分がいた。今回も無事脱出し、一息つけたが直樹の恨みは依然深く、企みをことごとく邪魔されたことでより一層増幅されていく。次の巻で一連の事件は幕を閉じることとなるようだが、最終巻ではどのような展開になるのだろうか。

    今作でやっと青鬼の謎がある程度わかり、そのあたりはバイオホラーチックだ。ひろしがこのシリーズで時々口にしていた仮説は当たらずとも遠からずであった。自分の中で青鬼は得体のしれないモンスターという枠組みだったので、新鮮だったが、これってゲーム内であった設定だったりするのだろうか?

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著者プロフィール

『青鬼』の原作者であるゲーム制作者。RPGツクールXPで制作されたゲーム『青鬼』は、予想できない展開、ユニークな謎解き、恐怖感をあおるBGMなどゲーム性の高さが話題となり、ネットを中心に爆発的な人気を博した。『青鬼』制作以降も、多数の謎解きゲームを手掛けており、精力的に活動している。

「2023年 『青鬼外伝 ひろしの秘密の一日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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