【248冊目】【248冊目】著者の遠藤誉さんは中国研究者で、かつ、科学者。そして、中国で生まれ育ったということもあって、知識と主張が溢れ出てくる感じが伝わってくる。資料を何も見ないで書いてるんじゃないかと疑ってしまうぐらい笑。
中国製造2025(発表は2015年)で特に注意すべきなのは半導体、そして宇宙航空関係であるというのが本書の主な主張。とはいえ、習近平氏が2025を出す前から、特に半導体の重要性に中国は気付いていたようで、実態面ではスローガンが出来る前から徐々に歩を勧めていたらしい。特に電子機器等について「世界の工場」となった中国が、実は「世界の組立工場」に過ぎなかったと自覚してからの国ぐるみの注力はすごい。
ホァーウェイの躍進や嫦娥4号の月裏側着陸等近年目覚ましい躍進を遂げている中国だが、本書で最も印象に残ったのは「千人計画」(2008年)「万人計画」(2012年)に代表される中国の人材還流政策。これらの計画は、海外の優秀な人材を獲得するための計画だと思っていたが、実は、海外で学んだ自国民を還流させるための政策だったというのは私にとって新しい認識だった。
特に、シリコンバレーで働く中国人の言葉だという次の一節は、日本との対比で大変興味深い。
「国家はわれわれを知的資源の宝庫として位置づけ、大事にしてくれていますから、当然、私たちも祖国にもっと喜んでほしいと、誰もが全面的な協力体制に入っています。」
あと、2016年に打ち上げられた世界初の量子通信衛星「墨子号」についてもきちんと触れられていて好印象。