劣化する民主主義 (PHP新書)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569848617

作品紹介・あらすじ

「一発屋興行師」だったトランプ前大統領。安倍氏の個人的つながりを欠いた日本外交は機能するのか。菅政権の内閣官房参与が語る。

感想・レビュー・書評

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  • 夫れ兵の形は水に象る。水の行は高きを避けて下きに趨く。もし世界に普遍的な真理があるとするなら、今混乱する世界はいずれ成るべくして幾つかの想像可能な結末の一つに落ち着くであろう。それは水が高いところから低いところへ流れていくのと同じく、重力という普遍的な真理に逆らうことが出来ないからだと思う。その結末の一つには当然の事ながら人類の破滅も含まれている。何故なら地球も広大な宇宙空間に存在する寿命のある一つの星に過ぎないからだ。ただそう簡単に人類は破滅せず、破滅の方向に向かいながらも(良い意味で)しぶとく生き残る。そう考えなければ世の中に蔓延る週末思想の下で自暴自棄に陥ってしまうが、人類はそんなに愚かでは無い。だから子孫繁栄を願い少子化の進む先進諸国は人口減少に何とか立ち向かおうとする。
    話は本書の内容とは大きく逸れたが、現在の世界が直面する課題は数多く存在する。課題として捉えるには知識と思考能力が必要だから、人が何かを望み希望を持ち、明日以降も幸福な生活に期待をするなら、それを阻害する要因を捉えて、如何に解決していくか課題感を持つのは当然だ。世界の抱える課題は地球規模で見ればSDGsに代表される様に解決された未来・ゴールへ向かう様な「生きる」上での全体課題、そして国という概念や地域、民族が抱える個別の課題に分かれる。本書は主に後者に関して重要課題の背景と今後進むべき道筋、そして未来を示唆していく。とは言えグローバリズムの下で極度に繋がり影響し合う世界では、特定の地域で発生した事象が簡単に周囲に伝播していくし、それを回避や受容といった様々な手を駆使しながら国家運営していかなければ、容易に「国」という形は崩れていく。本書はそうした過去から世界が直面してきた危機を「勢い」「偶然」「判断ミス」をその要因として捉えて、現在もそれは世界中で発生している事に警鐘を鳴らす。勿論それだけではなく、人々が思考の労力から逃れ、考えなくなった社会が出来上がりつつあることも原因の一つとして捉えている。つまりは自己愛に満ちた世界で自分(達)だけの幸せを追求するような指導者の到来は、やがては世界を更なる危機へ導き破滅を加速させる事に繋がる。その一例がトランプの登場に現れたのではないか。自分の頭で考えずに、目先の利益に誘導され流されて行った結果がトランプ大統領の出現であり、世界のトップを走る国でそれが発生したのだから衝撃は計り知れない。
    まずは自分の頭で考える事。そして自分の力で変えていこうとする意識を持たなければ、いつまで経っても政治任せ、官僚任せ、悪い結果にだけ文句を言う無責任に支配されていくだろう。そうならないためにも、本書のような考えに触れ、自分はそうならないと鼓舞している。

  • たった数年前に出版された本ですが、ウクライナ戦争が起こってしまい、米大統領も代わり、国際状況は目まぐるしく変化していることを感じます。
    国際状況の変化により、日本の安全保障が変化を迫られている現状を中心に書かれています。大変勉強になりましたし面白かったです。加えて文章も若干のユーモアを加えたとても読みやすいものでした。
    平和や安全は決して無償で担保されるものではなく常に危機感をもって対処していく必要がありますね。

  • 月刊誌『Voice』に掲載された巻頭言を再構成したもの。そのせいか全体を通じたストーリーがなく印象が薄かった。というのは切れ切れの時間で読んだせいかもしれないし、私の理解が浅いせいかもしれないが。
    筆者からは私の考えなどは空想的平和主義として一蹴されてしまいそうだ。たしかに東西冷戦のなか軍備がなくても(自衛隊があるのだから軍備はある?)平和が保たれた日本は例外的に幸運だったのかもしれない。ウクライナ戦争をみても島国というのは危機感のレベルがちがうと思う。「平和=非軍事」は非常識ということなので、うう層的平和主義者としても軍事の勉強は必要かもしれないと思わせられた。
    砂川事件で裁判所が判断を避けたことは私も常々おかしいのではないかと思っていたけど、筆者はそれを言明している。
    筆者の戦略論には納得した。①敵を一つに絞り、複数の敵には優先順位をつける。②絞った敵に対し最も適切な同盟国を選ぶ。③負ける戦争は絶対にしない。④勝てる戦争のみを可能な限り戦わずして勝つ。ウクライナのゼレンスキー大統領はこの③と④あたりを間違えたんではなかろうか。

  • 元外務省官僚。
    いろんな人のこう言う本を読んでるが、なんとなく、軸ズレてる感じで共感できない。
    地政学的な優位が崩れてるのは当然だ。今や、外患は海を渡るのでなく空を超えてくるのだから。

    そこまで言って委員会でも、最近パッとせんからなあ。

  • 【目次】(「BOOK」データベースより)
    序章 米国の自信喪失を考える(米議会襲撃で始まった二〇二一年/ダークサイドの覚醒 ほか)/第1章 日本の宿題ーなぜ手をつけないのか(国家非常事態宣言を出せない日本/生物化学兵器関連法令の適用除外、敵国の資産凍結まで ほか)/第2章 覚醒した世界のダークサイド(中東七カ国「地獄の遠征」/薄れる「アラブの春」の熱気 ほか)/第3章 「一発屋興行師」だったトランプ(冷戦時代にはありえなかったお粗末な振る舞い/世界の混乱はトランプが原因だったか ほか)/第4章 失われる地政学的優位(戦略論の「師」たち/戦略的思考の三カ条 ほか)

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著者プロフィール

1953年神奈川県生まれ。東京大学法学部を卒業後、外務省に入省。外務大臣秘書官、在米国大使館一等書記官、中近東第二課長、中近東第一課長、日米安全保障条約課長、在中華人民共和国大使館公使、在イラク大使館公使、中近東アフリカ局参事官を歴任。2005年8月外務省を退職し、外交政策研究所代表を務める。2006年4月より立命館大学客員教授。2006年10月〜2007年9月、安倍内閣で総理大臣公邸連絡調整官。2009年4月より、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。

「2023年 『通説・俗説に騙されるな! 世界情勢地図を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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