- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569850092
作品紹介・あらすじ
「わたしがこの子の母になる」ーー内向的な少女は、いかにして平安王朝の“国母”となったか。藤原彰子の生涯を描いた感動の歴史長編。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
ラストが胸打つ一冊。
興味はあれどちょっとした知識しかなかったこの時代の内部関係。
見事に彰子の人生を、心情を、願ってやまなかった想いを描き届けてくれた物語だった。
12歳で入内し、怨念を捨て、願うのは"和"。
ただ誰よりも和を願う彰子に天は平和な時間さえも許さない。
別れ、一族の圧力、怨念、火災…なんて生きづらくままならない時代なことか…。
朧げな人物像でしかなかった彰子が凛とした姿で心に入り込んできた。
そしてその都度炙り出される哀しみも。
ラストシーンが秀逸。
輝き纏ったかのような彰子の姿、想いが涙と共に胸を打つ。 -
道長の娘で、一条天皇の后となった、彰子の生涯を描く。
定子サロンでも道長でもなく、彰子を軸にした作品は、珍しかった。
幼く、選択肢のない政略結婚に流されていた彰子が、自分のなすべきことに気がつき、だんだんと変わっていく。
夫が本当に愛した、定子とその子どもたちへの思い。
一条天皇を支えるためには、自分はどうあるべきか。
権力者である父・道長の傀儡ではなく、自ら考える。
なかなか思い通りに行かなくとも、変わろうとする彰子の姿がさわやか。
紫式部との交流と絆もよかった。
後半の方は、事実の羅列になりがちで、やや冗長。 -
12才で入内した彰子は、父道長の戦略に使われる駒でしたが、成長とともに聡明さと器の大きさを発揮します。また、教養を深めることで一条天皇とも仲睦まじく信頼しあえる関係を築きます。一条帝亡きあとは、道長も侮れない、和を大切にする国母の道を極めるのでした。前半部分は楽しいが、愚直に彰子の生涯を追うのは小説としての面白さを欠いてしまっています。それよりは、才女が集まった彰子サロンの様子や、道長と紫式部とのやりとり、一条天皇辞世の和歌の解釈など、好奇心をもっと喚起して欲しかったなぁ。紫式部の造型とかは物足らないですね。
-
450ページ近い長編だが、とても面白く読めました。今年の大河ドラマと重なる題材で、エピローグ的な感覚で興味深かったです。親子、叔父叔母、従兄弟、従姉妹、兄弟姉妹、登場人物が錯綜して、家系図なくして理解不能。はじめはなんとなく間延びした展開が途中主人公の藤原彰子が国母となる事を決意してからの話の流れが面白く、あとは一気に読みました。平安時代の貴族の複雑な絡みがなかなかスリリングでした。彰子の入内から亡くなるまでの心の成長に感じ入って読み進めました。
-
demukatsuさん、フォローをありがとうございます。
未だレビューに挙げてませんが、澤田瞳子さんの「のち更に咲く」と「月ぞ流るる」(今...demukatsuさん、フォローをありがとうございます。
未だレビューに挙げてませんが、澤田瞳子さんの「のち更に咲く」と「月ぞ流るる」(今読んでいる)2作続けて読んでいます。
おっしゃるように家系図なくしては理解不能、天皇家と藤原家一族の家系図を首っ引きで読んでいます。大河の配役を頭に浮かべられるのでかなり助かりますが(笑)。
冲方丁さんも『月と日の后』で藤原彰子を描いているのですか! 読みたい気持ちと、平安時代の貴族文化にはそろそろ距離を置きたい気持ちがせめぎ合い、難しい選択を迫られそう。
2024/05/05
-
-
物語というより、伝記のようなストーリー。
ただ、紫式部の悔しさや彰子の願い、がひしひしと伝わってくる。
特に彰子の宮廷の身の振り方は、ビジネスに繋がると思う。そう思いながらも、自分には、なかなか達することの出来ない心境に、感服し、感動した。 -
平安中期、絶大な権力を誇った藤原道長の娘・彰子の生涯を描いた物語です。
わずか12歳で一条天皇の后となった、彰子。そもそも一条天皇には、既に定子という最愛の后がいて二人の仲は睦まじいものだったのですが、道長のごり押しで彰子を中宮に押し上げ、いわば正妻が二人という異常な状況がつくられてしまい・・。
この本を読むまでは、帝に愛されながらも、不運な末路を送った定子VS権力者の父を後ろ盾にのし上がった、勝ち組・彰子。という印象を個人的に持っていたのですが、そのイメージがガラリと変わりました(勿論フィクションですが、それでも)。
入内した当初は幼さもあり、一条天皇に心を開けず帝に愛されている定子を横目にふさぎ込んでいた彰子が、定子が亡くなり、その遺児を預かる事になってから“自分がこの子を守らなくては!”と目覚めていく様が興味深いです。
自分の実子だけでなく、いわばライバル関係にあった女性の遺児にも分け隔てなく愛情を注いで後ろ盾になろうと尽力したなんて良い意味で意外でした。
そして、彰子といえば紫式部の主として有名ですよね。本書でも紫式部との交流が生き生きと描かれていて、個人的にはこの箇所は読んでいて楽しかったです。
とにかく一条天皇が、優しくて賢く人間ができたお方で、“朝廷の和”を念頭に仁政を心がけた人だったのですが、権力者からの圧に押されて思うような人事ができなかったりとお気の毒な方だったのですね・・。
そんな一条天皇の“和”を望む志をしっかりと引き継いだ彰子が頼もしい“国母”となっていく様も見どころです。
残念なのが、後半部分がまるで“朝廷ネガティブ事件簿”という感じで度重なる災厄や権力争いの羅列が続き、この部分は正直読みづらかったです。
あと、朝廷モノではお約束とはいえ“複雑な姻戚関係”もわかりづらく、巻末の関係図を何度も見返す羽目に(;´д`)(この図は巻頭に持ってきた方が良いと思います)。
とか、色々書かせていただきましたが、なかなかな読み応えの本書。ラストは秀逸でしみじみとした気持ちになりました。 -
『はなとゆめ』を書いた冲方丁が、定子の次に彰子にスポットを当てたことに感慨深く?なって、すぐさま読みました。
以下ややネタバレあり、注意。
そういえば、これまで清少納言と定子サロンの物語は幾つか読んだけれど、彰子のお話って読んだことがなかった。
賢く儚い定子に対し、道長によってお膳立てされたお嬢ちゃんが彰子というイメージがあったのだけど。全然違った。
作中では、国母詮子と向き合うシーンが、凄い。
背景では、合唱が鳴り響く中、詮子から放たれる「怨」。しかし、また、この出来事が彰子の立場を改めてくれる。
ここは、実際の描写で、怖気だっていただきたい。
定子の遺児を大切に育てることや、一条天皇の支えとなるため、自ら政を知ろうと行動する彰子は、自分の思い描いていた消極的な姿とはかけ離れていた。
人の「怨」は、そのまま火となり、何もかも奪ってしまう。
生み出そうと、作り上げようと、一瞬にして無に帰してしまう火の力に、和を以て立ち向かい続けることの強さよ。
タイトル『月と日の后』は、「輝く日の宮」を連想させるのだけど、どのような意味が込められているのだろう?
望月と、藤壺?
時間経過に倦まされないほど、テンポよく展開されていて、気付けば読み切っていた。