- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569850689
作品紹介・あらすじ
小梅とつぐみは和菓子屋の二人姉妹。ある日、亡くなった曾祖母の魂がつぐみに乗り移ってしまい――少し不思議な感動の家族小説。
感想・レビュー・書評
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女が強い家系の瀧乃家は「凍滝(いてたき)」という和菓子店を大阪で営んでいます。
3年前まで祖母の清美が店主だった店を母の小枝と私こと小梅と従業員の真柴さんで今は営業していて、父は東京の会社に単身赴任しています。
妹のつぐみは大学のアラビア語科の学生ですが、演劇にも打ち込んでいます。
ある日妹のつぐみに、昔「凍滝」の店長として切り盛りしていた、もう亡くなっている曾祖母の榊さんが一定時間だけ乗り移ってしまうというお話です。
曾祖母の榊は43年前に愛人の家で亡くなった夫の禎文の愛人に渡した大事な手紙を取り返したいという目的があり、小梅とつぐみがそのために奮闘します。
以下ネタバレです。お気をつけください。
手紙は夫の愛人だった綾乃が80歳で生きており返してくれますが、それは曾祖母が返してほしかった手紙とは違うものでした。
そして、明らかになる曾祖母と綾乃、曾祖父の禎文との関係。
家庭内のミステリーが解き明かされ、家族の秘密を小梅とつぐみは知ることになります。
最初の手紙の内容の過激さには驚きましたが、曾祖母が取り返したかった本当の手紙は、じんわりとしてあたたかいものでした。
タイトルの「おはようおかえり」は「いってらっしゃい」という意味だそうです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ハートフルオカルトミステリーですね。
大阪の和菓子店「凍滝」は七十年前から営業を続けている。
店の若き姉妹が主人公。
姉の「小梅」はのんびりした性格で高校を卒業して「凍滝」の仕事を手伝っている。跡を継ぐか思案中。
妹の「つぐみ
」は大学に行き、エジプト留学が夢でアラビア学科を選考、演劇も好きで将来自分で劇団を持つと豪語しているハリキリ娘。
ある時、つぐみに『ひいお祖母ちゃん』が憑依した事から物語が始まる。
「ひいお祖母ちゃん」の「ひいお爺ちゃん」の浮気に対する蟠りから甦った事が物語のキーワード。
家族のしがらみと成長する姉妹の心温まるドラマをユーモアを交えながら、近藤節で鮮やかに描かれています。
近藤さんの文章は柔らかく、時に鋭く、私には心地よい作風ですから楽しく読み進めました。 -
姉妹と曾祖母を繋ぐ家族小説。
大阪で七十年続く和菓子屋を継ぐため、毎日働く姉の小梅。
妹のつぐみは、学業にバイトに演劇にと自由奔放である。
突然、妹に曾祖母の魂が乗り移り、曾祖父の浮気相手から手紙を取り返してほしいと告げてくる。
曾祖母の秘密が姉妹の関係を変化させていく。
おはようおかえり、このことばを使ったことはないが、意味は知っていた。
確かに祖母から聞いていたような記憶がある。
違う時代に生きていたら、どんなふうに物事を見て、どう受け止めるだろうか。
そう言った姉のことばに共感できる。
姉は、何か特別できらきらしたものを見つけることができず、臆病だから家業を継ぐこと、いわゆる消極的判断しかできないと思っている。
たった一度の人生だから、やりたいことをやった方がいい。
たった一度の人生だからこそ、よく考えて行動したい。
なかなか若いうちから考えて行動することはないのでは…と思ったのだが。
自分自身が、なるようになる、の考えで生きてきたからかもしれない。
だが、どちらかというと姉よりの性格になるのだろうか…などと思いながら読み進めた。
妹の身体に曾祖母が憑依したとき、妹は「先祖や家ってどこまで付いてくるものなの⁇
家族が嫌いなわけじゃない。
二度と会わないとか、そういう極端な話じゃなくて、会いたいときに会って、後は忘れてたい。」
これには、妹寄りだわ。と共感した。
姉妹各々の長所や短所が、読んでいて頷けるものであり時代が変化しても曾祖母の気持ちを慮る優しい内容で、じんわり沁みた。
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対照的な姉妹とひいおばあちゃんが織りなすお話し。
姉妹の成長やひいおばあちゃんの存在が温かく描かれていて良かった。 -
関東育ちには分からないタイトルの「おはようおかえり」の意味。
とりあえず、いつも読んでいる作家さんの作品だから手に取る。
今回の舞台は大阪北部にある和菓子屋「凍滝」
女性の強い家系で、曾祖母の時代から女性が看板を繋いできている。
そんな家の長女として生まれた小梅は漠然と、自分が「凍滝」と継ぐのだろうと、高校を卒業して、そのまま母が切り盛りするお店で働く毎日。
一方次女であるつぐみは、アラビア語を勉強したり、舞台をやったりと好奇心旺盛な女子大生。目下の夢はエジプトに留学すること。
そんな二人の日常が描かれるのかと思ったら、ある日突然つぐみの身に曾祖母の魂が乗り移り、自分の心残りを果たして欲しいと訴える。
まぁ、この手の話で来たかぁ・・・って感じだったけど、その中にも2018年に起きた大阪北部地震や、甚大な被害をもたらした台風21号の話が出て来たり、突然父親が在日韓国人であることをカミングアウトし、人種差別の話になってみたりと、話があちこちに散らばり過ぎている感が否めない。
結局曾祖母の探していた手紙は見つからなかったのに、納得して成仏してしまったようなので、何だか拍子抜け。
結局、何を描きたかったのか・・・
ちょっと残念。 -
時代によって常識が変わっていく。今の常識もあっという間に、非常識となっていくのだろう。
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近藤さんの新刊だ!?と楽しみに手に取った分、今回は思ってたのと違ったというか…面白くなかった訳ではないのですが、辛口評価ごめんなさい。。
色んなことを詰め込み過ぎて、何が一番言いたかったのかテーマが分からなかったです。
差別のこと?震災のこと?姉妹で性格が違って比べてしまうこと?和菓子で挑戦すること?曾祖母のことに至ってはハテナハテナハテナ。
もしかしたら、それら全てひっくるめて「生きていくこと」ってのがテーマなのかな?? -
とある心残りから曾祖母が妹のつぐみに乗り移るようになる。
明治と令和では女性の立場も生活環境も違うけれど、家族に対する想いはそう変わらない。
読み終わってタイトルを眺めた時『早く帰ってらっしゃい』ってものすごい愛だなと思った。
和菓子の奥深さが伝わる描写も良い。 -
近藤史恵さんの本を読みたかくて借りた。以前から気になっていた。
実家の和菓子店を継ぐ小梅と、何事にも自分を貫くつぐみ。小梅がその人生を楽しんでいるのであればいいのだけどな。ちょっと思っていたのと違っていた。曾祖母はがつんとつぐみに乗り移っていた。つぐみの身体で曾祖母がお菓子を丁寧に作る姿は美しいと感じた。