朝星夜星

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569854038

感想・レビュー・書評

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  • 実在の人物をあつかう物語にはそれなりの制約がある。事実を歪めての展開はできない。にもかかわらず、これだけの広がりを物語に持たせる朝井まかてさんはさすがと思う。

    綺羅星の如く、幕末明治の歴史をを作ってきた人々が次々と表れるが、彼らはこの物語の中では、時代の背景にすぎないとさえ思われる。事実の隙をつくように、いきいきと描かれた庶民たちが、時代の中で精一杯生き、次の時代へと命を繋ぐ物語だ。

    草野丈吉の妻であるゆきについても、どれだけの資料があったのか。色白で大柄ということくらいしかわかっていないようだ。そこからこんなにも個性的な人物に仕立てられて、見事というほかない。
    引田屋の女将の凛とした佇まい、松竹梅の芸姑たちは、物語のそこここでコミカルな役割を演じるし、豆腐屋の親父も狂言回しとして上等だ。

    ゆきと、姑のふじが丈吉に珈琲を淹れさせる場面など秀逸でユーモアに溢れているし、義妹の相手が浮気しているのではと確かめようとしたらそれが・・・というところも展開が見事で思わず膝を打つ。
    丈吉は、事業には成功したが、家族は幸福なことばかりではなかった。それでも時代が進み、ゆきは精一杯生きる。市井の人としての姿には引き込まれ、ほぼ一気読みだった。

  • 時は明治維新後です。

    西洋文化に追いつこうと、外国人との饗応にも
    使える西洋式のホテルやレストランを大阪で始
    めた草野丈吉。

    その妻であるおゆきという女性が主人公です。

    あの五代友厚をはじめとして、名だたる歴史上
    の登場人物が顧客として描かれています。

    「細腕繁盛記」ではなく、おゆきは体も大きく、
    たくましいですが、明治という時代を懸命に生
    き抜いた物語は、朝の連続テレビ小説を観てい
    るかのようです。

    本当に原作として使って欲しい一冊です。

  • 奉公先で見初められ、小料理屋の女将となった女性の半生記かと思いきや
    もっともっと壮大な物語であった。

  • 長崎の丸山で女中をしていたゆきは食べっぷりを見染められて料理人丈吉の妻となる。西洋料理を世に広め長崎から大阪へと場所を移し、幕末から明治を国作りにかけた人々とも交流を持ち視線の先に常に公があった。妻目線で語られる草野丈吉のそこかしこにゆきのおおらかで力持ちで自然体なところが表れて、とても暖かい物語になっている。
    お妾が3人もいて、そのやり取りが面白く、ラストにはつい笑ってしまった。

  • 極貧の家に生まれた丈吉は阿蘭陀船で調理を学び、幕末の長崎で本邦初の洋食屋を始める。
    長崎で若き五代友厚、岩崎弥太郎、陸奥宗光らの知遇を得、五代の勧めで大阪でホテルを開業し、大阪経済界の大立者となっていく。

    民間の立場で国家に貢献したいという熱意は時代の空気か。
    不平等条約を背景に、政治家、実業家たちの気概も熱い。

    妻ゆきの視点で書かれる本書は、同時に草野家の家族の物語でもある。

    まだ「人生五十年」の時代なのか、大きな仕事をした人々はみな50前後でこの世を去り、草野家縁者の命も短い。

    言葉のやり取りなど、作者の大阪人らしさが本書のところどころに顔を出す。

  • ああ、胸がいっぱい。松竹梅や大吉、脇役の隅々まで愛おしい。

  • 時代の流れと翻弄されながらもつむぎあって行く自由亭の仲間たちや家族の細々が丁寧に書かれていてあっという間に読んでしまった。ご飯が出てくる本は好き。陸奥さんが良かったー。

  • 日本人初の西洋料理店スターシェフの草野丈吉と妻ゆきの評伝。全く知らなかったことばかりだったので大変面白く読んだが、まかてさんの小説の出来としては今一つかな。

  • 長かったけど・・・楽しめたかな。
    朝井さんの作品は6冊くらいしか読んだことないので、
    これを機に、未読の作品を読んでみようかな。
    読もうと思っていて、読まないままの本が結構ある。
    敬遠の原因は、本の厚さかも。
    ただ、こういう書き方というか進め方は、
    時間がかかるけど、読み手のストレスは少ない。
    安心の筆力。朝ドラになりそう。

  • 実在の日本初の洋食店を開いた料理人をモデルに、料理人の奥さん視点で書かれた物語。
    幕末や明治の歴史上の人物も多数登場し、新しい時代や国のために熱く生きる様子も感じられ、とても面白かった。
    大阪の中之島に明治にそんなレストランやホテルがあったのかと、今の中之島の様子から想像しながら読むのも楽しい。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『朝星夜星』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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