ウラ事情がわかる!  「ユダヤ」で読み解く世界史 (PHP文庫)

著者 : 佐藤唯行

• PHP研究所 (2022年2月2日発売)

作品紹介・あらすじ

「ユダヤ・パワー」「反ユダヤ主義」「日本とユダヤ」……。ユダヤが世界史とどう関わってきたのかを、基礎知識なしで読める本。

感想・レビュー・書評

[rafmonさんの感想 · 2024年3月24日]

よくここまで纏めたな、という印象だが、キュレーション（まとめサイト）というより、新聞のスクラップを雑多に並べた感じ。ユダヤ人百科事典。なので、読みながら自分で目的を持って文脈を形成していく必要がある。その思考法が楽しいか煩わしいかは、興味の度合いと暇次第。

私なりに、という切り口で言えば「ユダヤ人の優秀さ、迫害の背景」の理解を深めたいという動機。断片的に複数の本を読み進めても抜けがある。では、以下、反ユダヤ主義について。

古代オリエントや古代ローマには、反ユダヤ主義は存在しなかった。ユダヤ人の公官職就任資格に対して初めて法的に禁止したのは438年のテオドシウス法典。キリスト教勢力が増大する中で、救い主を死に至らしめたユダヤ人が、救い主が血を流して救おうとしたキリスト教徒に権勢を振るのはおかしいと考えられるようになったから。

ドイツとイタリアを中心に15世紀後半以降設立されたユダヤ人隔離居住ゲットー。追放を望む都市住民と税収を失いたくない都市当局とのせめぎ合いの中で、生み出された妥協策。先の大戦よりもっと前から存在していた、ユダヤ人差別。

反ユダヤ主義の起源。12〜13世紀に反ユダヤ主義が一挙に盛り上がる。十字軍運動による聖戦意識の高揚｡更にユダヤ人が、消費者金融の中心勢力として、威勢を奮い始めたことから、巨富を得たユダヤ人に対して、キリスト教徒が妬みを抱いた。

もっと遡る。ヨハネ伝福音書では、イエスがユダヤ人たちに「あなた方は悪魔を父に持ち、その父の望みを行おうとしている」と語りかける。また、西暦50年頃、パウロが書いたテサロニケ人への第一書簡では「ユダヤ人は、主イエスと預言者たちを殺し、神に喜ばれず、人類の敵となり」と記される。

カトリック教会は1960年代になり、ようやくキリスト教の教義の中から「反ユダヤ的文言」を削除することを宣言した。ようやく、だ。

運命的に仕組まれた迫害の歴史。その作用の中で、ユダヤ人は自衛のためとも取れる、社会的地位や権威を取り戻す。金融、不動産、小売、映画産業、ITプラットフォーム、一代限りのユダヤ系ギャング、様々な業界にその影響を行使する。

連関する歴史、連関する戒律や制度設計の中で自ずと際立つ特異性が、不謹慎ながら、迫害と優秀さを表裏一体に齎したのだろう。何ものにも属さないことが独創的だという。否応なく阻害されたものもまた、意図せず天才性をもつ。悲運の選択圧を生き抜いた民族の証明。

[そよかぜさんの感想 · 2023年10月25日]

戦後日本への影響や、米国大統領選挙への影響など様々な形で存在感を発揮していることが、理解できました
厳然とした生き残り戦略という面でも学ぶ点は色々あると思います

[藤岡優多さんの感想 · 2023年7月3日]

12世紀から現在までのユダヤ人の歴史とユダヤ・パワーが世界に与えた影響がこの一冊でわかる。特に米国は大統領選や政治、経済はユダヤ人が大きく関わってることに驚愕。

[まりさんの感想 · 2023年6月19日]

短い細切れのエピソードをひたすらランダムに並べてる感じ。ユダヤ人がここにも関わってたんだ！という感動を味わいたくて買ったが、細切れなので大きな流れがわからないし、淡々とエピソードを並べてるだけで深みがなく、つまらなくて３分の１も読まずに挫折した。

[雷竜さんの感想 · 2022年6月30日]

　内容的にはとても素晴らしいのですが、書き下ろし感満載で、レポート的なまとめ方なので、不満は残る。章立てに統一感がなく、短い雑多な題目パーツを世界史を動かしたユダヤパワーとか経済、反イスラエル主義とかのテーマで括ったものだ。
　これを統一感のある世界史にして欲しいと思いました。

[チルコートさんの感想 · 2022年4月25日]

読みやすいし、ユダヤに関する歴史やエピソードが網羅されている。しかし、筆者のイスラエル寄りのスタンスを強く感じて、フェアな記述ではないと感じる。

著者プロフィール

獨協大学教授

「2022年 『ウラ事情がわかる！「ユダヤ」で読み解く世界史』 で使われていた紹介文から引用しています。」