- Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575235814
感想・レビュー・書評
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筋金入りのいじめられっ子 亮太はこれまでの自分やいじめっこたちに別れを告げるため、一念発起して大学へ進学する。
しかし、いじめの首謀 畠田も同じ大学へ入学していて・・・ここでも結局這い上がれずカモにされ続けるのか・・・と人生を悲観したところへ、金髪のサル男が登場、鮮やかにいじめっ子を退治してくれる。
トモイチ、と名乗るその男についていった先には「正義の味方研究部」を名乗る一団がいて・・・・
その名の通り、学内に蔓延る悪を次々成敗!していく訳だけど
ある事件のときから亮太の心には消えないモヤモヤ感がつきまとうようになって・・・
中盤まではヒーローもののように爽快だったけど、途中から色々考えさせられる。
正義とはなんなのか?
タイトルをカタカナにした意図にニヤリ。
正義の名の下、デスノートの夜神月みたいに暴走する人がいないとも限らない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いじめられッ子の主人公、蓮見亮太。
が、大学に進学すれば、そんな生活ともおさらば。
なぜなら、元々、大学進学率の低い高校の上、同じ高校からの受験者がいない事を注意深く確認した上で受験したからだ。
大学でもいじめっ子はいるだろうが、高校時代の経験から、その見分け方なら身に付いている。
そんな連中と関わらなければいい。
バラ色の学生生活の始まり。
・・・と思いきや、よりによって一番タチの悪いいじめっ子だった畠田が同じ大学に入学していた事が判明。
しかもまた、捉まってしまう。
明るい学生生活は儚い夢だったのか、と諦めかけたその時、「救世主」が現れる。
助けてくれたのは、桐生友一。
高校ボクシングのインターハイ3連覇の肩書きを持つ猛者。
友一に助けられた後、訳も分からないまま、とある部室に連れてこられる。
その部室の看板には、こう書かれていた。
「飛鳥大学学生親睦会 正義の味方研究部」
その名前からするとオタク集団を連想するが、学生自治会以上、警察未満といった感じのグループ。
大学内のトラブル(特に警察沙汰にすると被害者まで傷付くようなケース)を監視し、仲裁する。
いじめられていた所を助けられたのがきっかけだったが、亮太は、この「正義の味方研究部」に「スカウト」されたのだ。
部員は5名。それぞれ、腕力・知力・交渉力などで図抜けた能力を持っている人たち。
自分は一体、何が買われたのだろうとクビをひねる亮太。
友一曰く、「ディフェンスにおいて、ほぼ完璧。攻撃も身に付ければ鬼に金棒」
高校時代、いじめられ、殴られ続けた事で(悲しいことに)ダメージを最小限にする方法を自然と身につけていたのだ。
自分が役に立てる事があるのだろうか、と思いいつつ、6人目の「正義の味方研究部」メンバーとして活動を始めることになる。
個人的には「正義の味方研究部」には、何よりまず、「危うさ」を感じてしまった。
その設立の経緯、これまでの活動内容を見ても、その名に恥じる事は何もない。
が、これから先は?
「正義の味方研究部」が暴走した時、それを止める仕組みがないのだ。
そうでなくても、わずかだが「上から目線」的なものを端々に感じてしまう。
最後まで読み進めると、どうやら部長を選ぶ際に歯止めになりそうな人物を選ぶ事になっているようだが、それもルールとして明確に決まっているわけでなく「申し送り事項」のようになっているだけ。
その条件とは「かつていじめられッ子であった事」
いじめられる「痛み」を「自分の痛み」として知っている者でなければならないようだ。
が、その条件も一歩間違うと「復讐」に向かってしまう危険性もある。
亮太も最初のうちは無我夢中だったが、ある大きな事件を契機に「正義の味方研究部」に違和感を感じてしまう。
かつていじめられッ子だったせいか、「悪」として叩かれる側の事情も理解できるのだ。
相手がやっている事は悪い事であり、見逃してはいけない事、未然に防ぐべき事ではある。
が、だからと言って、即、ルール違反と言って叩いてよいのだろうか?
自ら好んでやった者と他に選択肢がないからやった者を一緒くたにしていいのだろうか?
「1つの間違いを怖れて、9つの悪を見逃すのは間違っている。
ただ間違えた方にとっては10の中の1つだが、間違えられた方にとっては、それがすべて。
そして、自分は間違えられる側の人間だから、「正義の味方研究部」にはいられない」
という旨の亮太のセリフが印象に残る。
そのセリフに共感を覚える自分も「間違えられる側」の人間なのだと思う。 -
とても良い作品ながらエンディングの結末は個人的には少し微妙でした。もっと正義のミカタをやり切って欲しかったかな
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ずっといじめられっ子だった亮太が大学で入ったサークルが『正義の味方研究部』。
大学の悪と戦う『正研』。正研での親友、先輩との出会い、その後の間先輩との関係、実の父親の会社のこと、そんないろいろで、亮太は一回り大きく強く成長していく。
すっごく良かったです。
前半は、ひたすら面白い青春小説だと思っていましたが、中盤から後半にかけての展開に、胸をかきむしりながら悶絶しました。
正義。
正研があるから、大学は悪から守られる。
でも、正義を語り、正義を前面に出せば、誰かを傷つけてしまう恐れもある。
亮太が最後に選んだ道は、カッコ悪いけど、やっぱりカッコ良かった。
でも、きっと亮太は、その言葉を喜ばないと思うから、言ってはいけないのでしょう。
サブタイトルのI am a loserに、納得です。
亮太は、自分で、負け犬であることを選んだのですね。
後半部分では、何度も泣きました。
彼らの友情が壊れることがなくて良かった。
亮太は、やっぱりあのお父さんの息子だった。
それにしても、部長…、彼は本当紙一重。怖い人だなと思いました。 -
武勇伝なんてなくたって、誰でも精一杯生きてる中で、誰かのために何か行動してみる。それが正義につながるんだと思えた一冊。
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正義のミカタ
ミカタを漢字にすると…
正義の見方…
正義の味方…
果たして? -
後半に向かって大きく展開があり面白くなっていく。最後の対決の場面ではどきどきしながら読みました。
でもなんとなく後味がすっきりしない終わり方に感じます。
間先輩の社会の不公平観や中国人の話が印象に残りました。 -
『男性』を、『男子』に戻らせる作品だと思う。
青臭くて、ご都合で、滑稽で、でもそれが気持ちいい。
とにかく読みやすくて、あっという間に読めた。
金城一紀のゾンビーズシリーズには劣るが、「男子」には気持ちいい影響を与える作品。
続きがあるなら、買うね。
でも、これはここで終わっていいんだと思う。 -
再読。
マスコミやネット界隈に悪意のある正義の味方が全盛の今となっては、古臭さは否めない。主人公の成長譚として、何度読んでもわかり易く楽しめる好著。