行方

著者 :
  • 双葉社
3.66
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本棚登録 : 214
感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575239744

感想・レビュー・書評

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  • 心が震えました。
    この表紙とタイトルで、物語の展開はなんとなく想像できたんですが…
    引き込まれました。

    幼稚園のお迎えの時間に、ほんの少し遅れてしまった。
    そのわずかな時間のいたずらで、消えてしまった娘。
    自分を責めつづける母。
    ひたすら娘の帰りを待ちわびた家族。
    生きているのか、それとも────。

    以下、ネタバレです。



    もちろん犯人が一番悪い。
    どんな理由があろうとも、決して赦されるべきではない。
    犯人は逮捕され、娘は本当の家族の元へ帰る。
    それが簡単にできたら何も言うことはないのに…。
    でも長い、長い年月と情が、それの邪魔をする。

    母が娘の髪をやさしく撫でながら、犯人に問いかける。
    激することなく淡々と、本当に静かに…
    その答えを、犯人に寄り添うように心の中で叫ぶ娘。
    この場面は圧巻でした。
    涙があふれて仕方がありませんでした。

    失われた年月が物語る、
    憎み切れない結末のせつなさが、深く胸に残ります。

    • ひとしさん
      杜のうさこさんこんにちは!
      うさこさんのレビューは素晴らしくて、うさこさんが☆5を付けている本のレビューを読ませてもらっては、『読みたい』...
      杜のうさこさんこんにちは!
      うさこさんのレビューは素晴らしくて、うさこさんが☆5を付けている本のレビューを読ませてもらっては、『読みたい』リストに入れさせてもらってます( ..)φメモメモ
      2018/07/13
  • 八日目の蝉的な切ない話でした。

    先が気になりノンストップで読んでしまいました。
    とてもうまくできていたと思います。

    せめて、どこかで幸せに生きていて欲しいと願うのが親心というもの。
    なのでいい結末だったと思う。

  •  これは、読んでいて本当に辛かった。こんなことがあっていいのか。そして、心ない周囲の対応に、フィクションであることを忘れ、本気で頭にきて本を破って捨てようかと思ったくらい(笑)

    3歳児の娘を持つ妙子は、スーパーでパートをしている。勤務は2時までだが、遅番のパートが度々遅刻をするので、その度に2時半まで勤務せざるを得なくなり、そんな日は幼稚園のお迎えに行くのが遅くなる。
    その日もやはり、遅番のパートが遅刻して、妙子は2時半まで勤務しなければならなくなった。幼稚園に少し遅れるので、待たせておいて欲しいとお願いし、急いで幼稚園に行くと娘の琴美がいない。先生に聞くと、恋文が琴美と遊びたいとグズり、恋文の母親の朱里が連れて行ったと言う。
    なぜ待たせておいてくれなかったのかの言葉を飲み込み、公園に向かうと誰もいない。一体何が起こったのか。琴美を勝手に連れて行った朱里に話を聞こうにも電話に出ない。夜中に押しかけやっと話を聞くことができるも、のらりくらりと言い訳をして話にならない。
    それから22年。衝撃の展開とともに事件は一気に動き出す。

     実際、自分が妙子の立場だとしたら、諦めただろうか。妙子のように強く待ち続けることができただろうか。そして、誠司はどんな思いで楓を育てたのだろう。誰も悪くない。いや、悪いか。でも、許してしまいたくなる。

     いろいろな事実を考えるとモヤモヤが残るが、それでも最後は心に爽やかな風が吹く。良い本を読んだという読後感だけが残った。

  • 犯人を匂わせて惑わせる手法のようで、自分の子供を行方不明にさせてしまった親の葛藤とその後の強い愛を描いていた。
    いつもの春口作品のような最後にあっ!となる驚きはなく大体想像通りの展開だったけどすらすらと気持ちよく読めた。
    不幸になる人がいなかったのが良かったな。

  • 「八日目の蝉」に似てると思った。
    どんな理由があっても、愛して育てようとも、誠司のしたことは許されない。父和彦が、孫の希美を琴美だと思っているシーンが、この家族の失われた時間の長さを感じさせて切なかった。

  • ラストのお父さんの言葉が悲しかった。中傷を受けても、帰ってくる娘を待ってその土地に留まる家族の気持ちがやりきれない。
    犯人にも同情すべき点はあったけれど、やはり家族を離れ離れにさせた罪は重い。

  • 2016/9/24

    3歳の娘が公園で行方不明になった...
    一緒にいたはずのお友達もお母さんも何も知らない...
    怖すぎて一気読み。
    周りの人の保身によって、真実から遠ざかっていくことも多いんだろうな。
    娘を大事にしよう。

  • 読み終えてカバーの絵を見た時、何か違うな・・・と思った。
    大まかなあらすじを知っていて、それでこのカバーとなると暗く重い内容かと思ってしまうけど、読後感はそうじゃなかった。

    公園で遊んでいた3歳の女の子がいなくなった。
    その子の母親はパート先で残業をする事になり、幼稚園にお迎えに行くのが遅れた。
    その際、幼稚園に連絡を入れていたが、他の園児の母親が自分の子供を迎えに来た際、いなくなった幼児も一緒に連れて公園に行った。
    その母親というのが色々とよくない噂のある母親で、子供がいなくなった際の事を聞いても嘘を言ったりごまかしたりする。
    結局、子供は見つからないまま20年以上の年月が流れて話は突然変わる。
    20年後の子供をなくした家族の様子、ペンションを経営している親子の話、母親のせいで家庭崩壊した女性の話と話は続く。

    子供をなくした家族は父親は定年退職前、子供の兄は警察官になっていた。

    ペンションを経営している頑固な父親に娘は今つきあっている男性がいると言えないままでいる。
    その内その男性は実は結婚していたと知る。

    母親というよりも女のままの母親。
    男と遊びまわり、引きこもりの弟を溺愛。
    弟と自分とを差別するーそんな母親の元で育ち自身の生活も乱れてしまった女性。
    そんな彼女の元に一通の手紙が届く。
    手紙の差出人は妹が突然いなくなり、警察官になった男性。

    子供がいなくなったという話が時系列でずっと続くと思っていたら途中で違う人たちの話になったので「あれ?」となった。
    そして、もしかしたら・・・と推測して読んでいく。
    だけど、途中「あれ?」と思うような事があり、すんなり自分の予想のままじゃないストーリーなんだと思う。
    だから引き込まれて・・・。
    その辺がうまいな・・・と思った。
    読後感も悪くない。
    読んでいる時も十分面白いと思える。
    だけど、感動的な話なはずなのに、心に響くようなものはなかった。
    何となく登場人物が生かせてないような・・・中途半端な印象を受けた。

    最も読んでいて引き込まれたのは男と遊びまわる母親の嫌らしさを描いている所。
    生き生きと描けてるな~と思った。
    そういう描写がやはりこの作者の真骨頂なのかな・・・と思った。

  • 一つの出来事に見えても、多くの出来事が人生には関わると改めて気づきました

  • 3歳の娘が行方不明になり家族の焦燥や自分を責める母親の描写が辛い。子供を勝手に連れ去る身勝手さが何とも腹立たしい。20数年の歳月が経った後半からは、だいたい想像どおりに展開していくのだけれど、いなくなった娘が見つかっても、幸せに暮らしているのならと名乗らずにいる母や兄の気持ちがとても切なかった。終わりは良かった。良かった良かった。父の認知症の描写は心を打ちました。どんな理由があっても子供を攫うなんて酷すぎる。失った年月は戻らない。

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