さらさら流る

著者 :
  • 双葉社
3.25
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本棚登録 : 1403
感想 : 203
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575240528

感想・レビュー・書評

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  • この本を読んで暗渠(あんきょ)って言葉を知った。
    見えないように地下を流れ上には蓋がされている。なんか人生みたい。
    そう、周りに見えないようにしながら生きていきたいこともある。

    主人公がとある事でリベンジポルノにあってしまうのだが、こんな事がなさそうと思わず自分に置き替えてみてほしい。いつでもどんな理由でもあり得ること。
    リベンジポルノはこの本の中では女性ですが、世の中にはきっと男性にもありえるだろう。

    流すヤツと流されてしまった本人。流されてしまった方にも責任はあるかもしれないが、流すヤツは許せない。


    ※本の概要※
    あの人の中には、淀んだ流れがあった――。28歳の井出菫は、かつて恋人に撮影を許した裸の写真が、
    ネットにアップされていることを偶然発見する。恋人の名は光晴といった。
    光晴はおどけたりして仲間内では明るく振る舞うものの、どこかそれに無理を感じさせる、
    ミステリアスな危うさを持っていた。しかし、なぜ6年も経って、この写真が出回るのか。
    菫は友人の協力も借りて調べながら、光晴との付き合いを思い起こす。
    飲み会の帰りに渋谷から暗渠をたどって帰った夜が初めて意識した時だったな……。
    菫の懊悩と不安を追いかけながら、魂の再生を問う感動長編。

  • 大雨大変ですな

    ってな事で、柚木麻子の『さらさら流る』

    純粋な恋愛小説と思って読んでると、あっという間にリペンジポルノの被害にあい苦しみながらも懸命に立ち向かっていくお話。

    よくある日常が、こんなにも苦しめる事になるんで気を付けないといけんな。

    チビ達に読まして自己管理、危機管理を学んで欲しい一冊。

    2019年29冊目

  • ごく普通の大学生、菫(すみれ)が入ったサークルの飲み会で、酔って介抱してあげた光晴君。家まで歩いて帰るくだりがなかなかユニーク、暗渠(あんきょ)をめぐって歩いて送ると言う彼の誘い何が起こるのかワクワクしながら読み始めました。そしてたった一度彼に撮られたヌード写真をネット上に流失、偶然見つける。そこからの菫の行動が興味津々、いかにして立ち直るのか?そして光春君は?「自分は地下を流れる暗渠で彼女は陽の当たる緑道だ」これがこのお話のしめくくり、ちょっと変わった今までにめぐりあえたことのない恋愛小説でした。

  • リベンジポルノに立ち向かい強く立ち直って行くお話。
    天真爛漫な女の子が恐怖の中 強さと弱さを併せ持ち、素敵な家族 素敵な友人に支えられて自分を取り戻していく。
    東京の地下に巡る水路の話も絡めているのだけれど、最初はただの話題の様に見せていたけれど、元カレや人の心の推移を表していたのだろうと最後に感じられた。

  • 非常に辛く悲しい目にあったにもかかわらず、前に進んでいく強く美しい話でした。
    辛くて読むの止めようかなと思いましたが最後まで読めてよかった!

  • せっかく感想を書こうと思ったのに、二つ隣の席に座ったおとこが猛烈に汗臭い!

    まぁ、よい。関係ない。移動しよう。これ書いてから。
    気軽に手に取った一冊だが、なかなか読み進められなかった。重い。重いよ。出だしは普通な恋愛が絡む若い2人の爽やかな生活が描かれる小説だと確信していた。違う。違うんだよ。これは世の男性にキチンと読んで欲しい大切な相手への思いやりについて考えて欲しいヒントがたくさんある本だ。出会えて良かった。

  • 東京の水脈に関する話が象徴的に使われており、引き込まれた。タイトルも含め冒頭だけだと爽やかな印象だが、内容は極めてハードだ。

    元恋人が撮った自分の写真を、偶然ネット上で発見する主人公菫。物語は、二人の出会いや家族との会話など過去の情景と、現在の二人の状況を並べながら展開する。どの人物にも深い背景が描かれ、特に心理描写が細かい。元恋人である光晴が菫に対して抱いていた羨望や、菫から見た彼の不安定さ、菫の大親友百合の、正義感に直結した行動力、そして菫も含めた家族の信頼関係…。緊密な人間関係や背景は、いずれも菫が再生するための要素である。

    光晴の行動は絶対に許されるものではない。そんな状況の彼にも、著者は再生の道筋を与えている。冒頭に描かれた水脈もその過程に生きてくると思えた。未来を絶望視しない展開に少しだけほっとした。

  • 読み進めるのが辛いほど、この男のことが憎く、嫌いだった………元カノの母親に甘えたい衝動があるところとか、おぞましかった………育った環境がアレだったらなんでもありなわけあるかい…………なんとか読了。

  • 都内を巡る暗渠とその
    上を覆う緑道。

    私の人生はどちらかと
    いうと、

    陽のあたる緑道よりも
    暗渠を辿ってたように
    感じます。

    幼い頃から周囲に気を
    遣い、

    欲しいものに、すっと
    手を伸ばせる素直な人
    を眩しく感じてました。

    傷つくことをやたらと
    恐れて自分の気持ちに
    蓋をして、

    まわりの顔色ばかりを
    うかがって・・・。

    でも、暗渠も辛抱強く
    辿っていけば、

    いつか明るい大海原に
    辿り着く。

    自分の辿る道が誰かに
    与えられた道なのか、

    はたまた自分の意志で
    選びとった道なのか、

    もはやわかりませんが、

    暗がりのなか途方ない
    時間と距離を、

    なんだかんだここまで
    歩んできた自分を少し
    は信頼しようかなと。

    私が辿るこの道の先に
    光溢れる世界が開ける
    ことを信じて。

  • よく、こんなにも両側を描けるなあ。すごい。心理的安全性の高い家庭で育つ「強くて」「持てる者」の側と、家庭での愛情を感じることができず拗らせた「弱い」「持たざる者」の側の両方。
    申し訳なさを感じる「恵まれた」菫と、自分と相手の差は環境で自分はあんなに輝けない、と感じる「持たざる者」光晴。
    どちらも共感でき過ぎて、はらはらした。まさに百合!
    だからこそ夏の開けた日差しと濃い緑の中で、清濁併せ持って自分と向き合って自分を大切にして生きていくのが正解なのかも、と気づいた光晴のラスト、他人の目が恐ろしいながらも自分の強さを信じることができた菫、自分の目を信じられた百合に拍手喝采!ラストが真夏で、白い暑い日差しと濃い緑の記述がとても生きている。夏に読めてよかった!東京の地理が出てきて、よく行き来していたエリアが出てきて楽しかった。あと女の恥ずかしがる裸体写真を扱う人たちとその悪意の無さも具体的であるあるーと思う。無垢な子どもがその様子を見たら不気味でしかないと言うのも、改めて、変だよなと思わせる仕掛けになっている。全編を通して感情のプロセスが丁寧に書き込まれている。
    裸体を見せるな・撮らせるなということではなく、本当は嫌だと感じているのに相手に好かれたいからと差し出してしまうという選択が結果的に自分にダメージを与えるということ、でも万が一、多数の目に晒され消費されたとしてもあなたそのものは決して削られたりなくなったりするものではなく強く美しくあってよいもので、存在して良いものであり自分を信じて良いこと、家庭環境やそれに影響を受ける幼少期からの対人関係の距離感、さまざまな要因があれど、自分が自分を受け入れて清濁併せ持って歩く勇気を持つこと。人は天使でも悪魔でもなく、あらゆる混ざり合った感情があるものだということ。

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著者プロフィール

1981年生まれ。大学を卒業したあと、お菓子をつくる会社で働きながら、小説を書きはじめる。2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞してデビュー。以後、女性同士の友情や関係性をテーマにした作品を書きつづける。2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞と、高校生が選ぶ高校生直木賞を受賞。ほかの小説に、「ランチのアッコちゃん」シリーズ(双葉文庫)、『本屋さんのダイアナ』『BUTTER』(どちらも新潮文庫)、『らんたん』(小学館)など。エッセイに『とりあえずお湯わかせ』(NHK出版)など。本書がはじめての児童小説。

「2023年 『マリはすてきじゃない魔女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚木麻子の作品

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