- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575243574
作品紹介・あらすじ
明石家は夫婦あわせて、もうすぐ180歳。一家の主、新平は散歩が趣味の健啖家。妻はそんな夫の浮気をしつこく疑っている。長男は高校中退後、ずっと引きこもり。次男は自称・長女のしっかり者。末っ子は事業に失敗して借金まみれ。……いろいろあるけど、「家族」である日々は続いてゆく。飄々としたユーモアと温かさがじんわりと胸に響く、現代家族小説の傑作!
感想・レビュー・書評
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初読みの作家さん。
TVで見かけた「ちい散歩」かと思うと全然違う。大正生まれの頑固一徹な爺さんが、強烈な個性を発揮する物語。元大工で、妻との結婚を反対され、二人で東京に出てきて、程々に成功する。二人合わせて180歳に近くなるのに、息子3人はどうしようもない体たらく。妻もボケが始まって来るが、爺さんは大変元気で、別宅に助平な物品を大量に持ち、珍しい建物や喫茶店、レストランで店員の女性との話しを好むという性格。
散歩よりも、どこにでもある家庭の問題がメインのよう。「これぞ、現代のスーパーシニア小説」と帯に謳っているが、自分の将来の理想か、と言われると・・・?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ちょっと違ったけど、の一冊。
勝手に想像していた自分好みの可愛らしい優しいおじいちゃんとはちょっと違ったけど楽しめた。
かくしゃくアラ90にびっくり。
認知症の妻との仲は微妙。これだけ長年連れ添っていれば夫婦どちらかの心にだけ引っかかってることって星の数ほどあるのかも。
独身兄弟がまた見事にバラバラ個性的で良し。
自称「長女」の健二が甘味。
柔らかい言葉と母をサポートする姿に、ホッと和んだな。ラストは新平じいさんのスマイル、ピースサインを思い浮かべた。人生最後まで楽しまなきゃね。
おやつのように軽く楽しめる作品。 -
明石新平、もうすぐ89歳。年齢の割に元気な彼の趣味は散歩。もうすぐ88歳の妻には浮気を疑われ(情緒不安定気味なのが気掛かり)、長男は引きこもり、次男は自称「長女」、三男は借金まみれ。悩ましい状況ではあるが、カラッとした新平のキャラクターが好ましい。ま、昭和を駆け抜けてきた男性らしく、一本気なところが若干面倒ではあるが。
今回改めて、藤野さんはホームドラマも上手い人だったと思い出した。ユーモアに包んではいるものの、なかなかに紆余曲折のあった新平の人生。現在パートと過去パートが交互に語られ、そのバランスが丁度よい。重すぎず軽すぎないから、却ってしみじみと、新平達の歩んできた昭和や平成に想いを馳せることが出来るというか。
そして、タイトルにもなっている「散歩」、レトロな喫茶店やレストラン、名建築巡りがとても楽しい。これは、マップが欲しいなぁ…!
ほのぼのしていたかと思えば、介護問題や手のかかる50代の子供問題など、リアルに考えさせられるところもあるが、ユルめの喜怒哀楽が藤野さんらしい。誰もが読んでいて「アイタタ…」と感じるところがあるだろうが、家族を見つめ直すいい機会となるはずだ。 -
あわせて180歳の老夫婦に、引きこもりの長男、LGBTの次男、借金まみれの三男。全員独身の三兄弟。
一家の歴史と日常の物語。
ドラマチックな展開があるわけで無し、日本のどこかにこういう一家がいるだろうと思えるただそれだけの話だが、これがまさに現実だなと感じられて、読みながら息苦しくもなる。
読み終えたあ、自分の家のことを振りかえってみたくなるのではないだろうか。 -
新平じいさんは、94歳。
すこぶる元気で逞しさを感じる。
妻の英子さんが、90歳を過ぎて倒れてからも介護をしながら朝のルーティンをこなす。
健康フードを食し、午後は3〜4時間の散歩をする。
それが楽しくて仕方ないのが伝わってくる。
それぞれ癖のある50歳を過ぎてる3人の息子たちのことも世間からみれば大変だろうと思うのだが、まったく暗さを感じさせない。
老後が、どうなるんだーなどと愚痴らずユーモアがあるじいさん。
なかなかいないよ。こんなじいさん。
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藤野千夜さんの最新作。じいさんのゆるい散歩のテンポが心地よく、一緒に歩いているような気分になります。いいなぁ。私もこんな楽しい散歩をして過ごす時間が欲しい。そして、少しずつ変わっていく妻と、少しも変わらない息子たち。どうしようもないけれどこれが、家族。じいさん素敵です。温かく、とてもいい作品でした。
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文學界2018年2月号掲載を再構成し、小説推理2019年12月号〜2020年9月号掲載を加えて2020年12月双葉社刊。確かに散歩の話は出てきますが、メインではなくあまり関係がない。本人、妻、家族、近所のとりとめのないストーリー展開で、あまり興味を惹かれませんでした。主人公が元気な人だなぁというところには感心しましたが、いずれにしても、ふーんそうなんだぁという感じで終ってしまいました。