つまらない住宅地のすべての家

著者 :
  • 双葉社
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感想 : 267
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575243857

作品紹介・あらすじ

とある町の、路地を挟んで十軒の家が立ち並ぶ住宅地。そこに、女性受刑者が刑務所から脱走したとのニュースが入る。自治会長の提案で、住民は交代で見張りをはじめるが……。住宅地で暮らす人間それぞれの生活と心の中を描く長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 序盤から登場人物が多すぎてテンション下がり気味だったんですが、路地を挟んで10世帯の家族の話が一気に流れ込んできてコールセンターでクレームの多さに拷問にあってるようでした。

    ①妻が出て行ったことを隠して暮らす自治会長と息子(丸川家)
    ②小学生姉妹が暮らす親子2代のネグレスト家庭(矢島家)
    ③放浪癖のある中1の息子を倉庫に閉じ込めようとする夫婦(三橋家)
    ④二人暮らしの老夫婦(笠原家)
    ⑤矢島家の長女誘拐を企む一人暮らしの青年(大柳家)
    ⑥学生に悩む大学の先生夫婦(相原・小山家)
    ⑦スーパでパートはじめた一人暮らしの女性(山崎家)
    ⑧そのスーパーで警備員をしてる男性(松山家)
    ⑨高齢の母と息子の二人暮らし(真下家)
    ⑩祖母が一家を仕切る3世代同居家族(長谷川家)

    つまらない住宅地もフェードインしていくといろんなことが明るみにでてきて雑多なことが多すぎてキャパオーバーしてしまい脳みそポップコーンのように爆発しそうでした。
    なんせ、4つまでしか覚えてられない虚弱体質な低スペック脳なので新たに2つ覚えようとするとと最初の2つが押し出されてしまい直近の4つしかストックできないんです。
    パスワードも4桁までなら覚えてられるのに8文字以上にアルファベットの大文字小文字も含めてとかになるとキャパオーバーで登録した端から忘れるんですよね。
    辛抱強く忍耐して中盤すぎるとじわじわと楽しめるようになるんですが。
    近所出身の脱走犯の女受刑者がこの町内に近づいているとゆうことからローテンションを組んで道路に面した笠原家の2階から夜間の見張りをすることに。
    脱走犯は凶暴な無差別殺人犯じゃなくって、横領罪の女性とゆうこともありなんかのイベントみたいにテンション上がってる感じなんです。
    私はこの女が登山サークルの会社に勤めていたってとこに親近感湧いてたのですけど。
    ひとつのピースがつながるとそこからいろんな繋がりがみえてきて最後はまあまあいい感じで、この事件がきっかけで住民たちの交流が増えていったってところです。
    遠からず近すぎない距離感って大事ですよね。

    • つくねさん
      ゆーき本さん、こんばんは♪

      登場人物多すぎて大変でした
      闇堕ち間近の人たちもいてご近所さんとの交流でギリセーフでした(*´∇`*)
      ゆーき本さん、こんばんは♪

      登場人物多すぎて大変でした
      闇堕ち間近の人たちもいてご近所さんとの交流でギリセーフでした(*´∇`*)
      2024/04/11
    • かなさん
      つくねさん、こんばんは!
      いやはや…きっとこの作品、
      私は読めないヤツだぁ(;・∀・)
      そんなにたくさん色んなこと詰め込めないもの…!...
      つくねさん、こんばんは!
      いやはや…きっとこの作品、
      私は読めないヤツだぁ(;・∀・)
      そんなにたくさん色んなこと詰め込めないもの…!
      でも、つくねさんはちゃんと読了されて
      スゴイですよぉ…。
      2024/04/11
    • つくねさん
      かなさん、こんばんわ!

      中盤までが淡々と進んで新聞記事読んでるみたいで退屈で何度か寝落ちしてしまいました。
      それ過ぎると馴染んでくるのです...
      かなさん、こんばんわ!

      中盤までが淡々と進んで新聞記事読んでるみたいで退屈で何度か寝落ちしてしまいました。
      それ過ぎると馴染んでくるのですがなんとか読み終えました。
      この作家さんは淡々としたペースで語る長期間の物語だと余韻とか情景楽しめるんだけど、この作品では場面の切り替わりも早くて緊張した場面とか臨場感とか抑揚がいまいちな感じでした。
      2024/04/11
  • ちょっと古めの住宅街に逃亡犯が来るかも‥という時点から始まる話。自警のための動きを通して住民達それぞれ抱える事情が次第に明らかになる。コミカルとまじめの絶妙なバランス。この住民は知り合いに似てる等楽しみながら読んだ。津村さん良い!

    • ☆ベルガモット☆さん
      111108さん こんにちは

      題名が何だか不穏な感じですね~
      絶妙なバランスだなんて、興味湧きます
      住みたくない感じでしょうか、そ...
      111108さん こんにちは

      題名が何だか不穏な感じですね~
      絶妙なバランスだなんて、興味湧きます
      住みたくない感じでしょうか、それとも愛着がわく住宅街なんでしょうか
      今は津村さんと深澤さんの「ダメをみがく」を読んでまーす
      2022/07/29
    • 111108さん
      ベルガモットさんコメントありがとうございます♪

      不穏な題名ですよね。
      読みはじめは何の比喩とかでなく文字通りですね。そのあとは読んでのお楽...
      ベルガモットさんコメントありがとうございます♪

      不穏な題名ですよね。
      読みはじめは何の比喩とかでなく文字通りですね。そのあとは読んでのお楽しみということで‥
      もう「ダメをみがく」ですか⁈ベルガモットさん、ペースが早いですね!見習いたいです。
      2022/07/29
  • 読み始めは、すごく難しかった。とにかく、登場人物が多過ぎて把握するのに苦労した。

    この住宅地にはダメ人間ばかり住んでて、どうしようもないなあと思いながら読んだ。いい人もいるけど、断然ダメ人間が多い。ダメ人間がいい人をいいように利用するし、読んでてイライラしてしまった。この話、最終的にはどうなるのか?このまま終わったら嫌だな。そう思ってたけど、後半に進むにつれ話がいい方向に向いていったので良かった。ある出来事がきっかけで、近所同士が分かり合えたのが良かったんだと思う。あと、子供たちの方が大人よりしっかりしてる。

    『四方八方に散らばってしまったボールが、最後には一つのカゴに全部収まった。』そんなイメージがこの話を読んで頭に浮かんだ。あと『雨降って地固まる』という言葉も。

  • つまらない住宅地に住む10世帯の人たち。
    一見どこにでもあるような住宅地の平凡な家族のようだけれど、ある家の両親は子どもを庭の倉庫に閉じ込める計画を進めているし、その近所のシングルマザーは小学生の子どもを放置して彼氏にうつつをぬかしているし、そこんちの子どもを誘拐しようとしている独身男はいるし。
    まったくどいつもこいつもろくでもない!(もちろんそうでない人もいるけれど)

    そんな中、刑務所を脱走した犯人が近くにいるらしいというニュースを受けて、妙に張り切る自治会長が夜中に交替で近所の見張りをしようと言い出します。
    困るわ〜、こういう人、って私が住民なら思うけど、普段からそれほど交流のなさそうな近隣住民は意外に協力的で、大人が協力的でない世帯からはなんと子どもが自主的に参加したりして、老若男女、住民たちが交わり始めて…

    犯罪すれすれな件の住民の大人たち、そして大人の身勝手を受け止めながらもがいている子どもたち。
    淡々とした筆致で描かれる閉塞的な日常がリアルで、そこに非日常である『脱走犯』が絶妙の距離感で絡んで、物語は転がっていきます。

    登場人物が多くて、慣れるまで読むのがちょっと大変ですが、でもとても面白かったです。

    人との関わり合いの中で、ちょっと視点がずれたり気づいたり、そんな事が実は結構大事なんだよねえとしみじみしたけど、頑迷なまでに変わらない人は変わらなくて、それもまたリアル。

  • 絶妙な津村ワールド

    "なんでもない住宅地 "
    なんとなく顔はわかるけど、話したことはない。
    それぞれ家庭に事情はある。

    そんな住宅地に、«逃亡犯が向かってきているらしい» 、という情報から住民同士が路地の見張りをすることになる。


    登場人物も多いし、名字で語られていた人が次のときには名前で出てきたりと混乱を極めるけれど、だいたい把握できていればオッケーくらいで読み進める。

    物語中盤くらいから登場人物に感情移入してくる。

    余計なおせっかいや仕切りに、わたしだったら戸惑うだろうなと思うけれど、『誰かの思いつきにつきあう』。それをすんなり受け入れる人や、その余波を受けた人が意外と孤独から救われる。

    相変わらずの津村ワールド
    またも堪能してしまった。

    逃亡犯はどうなるのか。
    それぞれ登場人物はどうなるのか。

    自分は逃亡犯に逃げ切ってほしいのか、つかまってほしいのか、意外といろいろな感情になった。


    津村さんは圧倒的に人への興味がすごい。
    なんだかんだ人が好きなんではないか、
    人の力を信じているんではないか、と思う本だった。面白かった。

  • 和む一冊。
    刑務所から脱走した受刑者を見張ることになったとある住宅地にながれる時間を描いた物語。

    うん、良かったな。なんてことはない、ただどこにでもありそうな家庭事情、心情、負の感情、危うさが綴られていくだけなのにとても惹きつけられる世界。

    ちょっとしたきっかけで一歩その人に近づく、心が和らいでいくのは読んでいて和むから好き。

    なんだか誰もの心の灯り、電球を新しく変えたような感じ。新しい眩しさを得て見えなかった箇所が見えた感じ。
    それが気持ち良くてさらに和む。

    読後は思いっきり新しい灯りに包まれた住宅街を思い描いた。

  • 『つまらない住宅地』とあるが、『つまらない』どころか個性だらけの家庭ばかり。

    妻が出ていったことを隠している丸川家、母親も祖母も幼い姉妹を育児放棄している矢島家、暴れたり放浪癖があったりする息子を閉じ込める計画を夫婦で進めている三橋家に、間取りも家族関係もちぐはぐな長谷川家、極め付きは矢島家の少女を拐かそうと企む独り暮らしの大柳。他にもごみ屋敷あり、目を掛けて世話した学生に振り回される大学講師夫妻など十軒の事情が入れ替わり描かれる。

    どんな家庭にも中に入れば何らかの問題を抱えているものとは言え、問題ありすぎだろうと戸惑いながら読み進めていくと、更に女性の脱獄犯がこの住宅地方面に向かっているニュースの話が出てきてカオスな予感。

    自治会長の丸川家父は、この逃亡犯がこちらに来ないか見張りをすることを提案する。さらに住宅地の面々に見張りの当番を割り振り、住宅地の入り口である老夫婦の笠原家の二階を見張りの場所として借りることを承諾を得るなど、やけに張り切っている。

    各家庭の事情は不穏なのに、津村さんらしく呑気でとぼけた雰囲気だ。
    物語の方は、逃亡犯の見張りというご近所同士の共同作業がご近所同士の距離も変えていく。
    互いに何となくあの家は問題を抱えていそうだと感じつつも突っ込まないでいたところを、例え距離感が変わっても突っ込むことはないのだが、気の持ちようが変わっていく。

    逃亡犯とこの住宅地の人々との関係も絡み合っていて面白い。逃亡犯が元々犯罪を犯した原因にも、逃亡の理由にしろ大いに関わっていた。
    逃亡犯の犯罪が軽くはないが残酷なものではないものだったこともあり、関係する人たちが逃亡犯を否定的に見ないところが長閑な雰囲気なまま展開していったように思う。

    逃亡犯という不穏な出来事が住宅地の人びとの不穏な問題をそれとなく解決するという面白さ。
    家にひっそりと仕舞われていた問題をこの機に明るみに引き摺り出すのではなく、何となくそうではないかと察し、或いは自分で何となく立ち止まり、気付いたら上手いこと収まっていたという感じが良い。逃亡犯の結末も上手く着地した。

    中でも丸川家の亮太くんとその友人・恵一の活躍は良かったし、矢島家のみづきちゃんの頑張りとそれを察し対等な目で力を貸す山崎家の独り暮らしの女性も良かった。
    そんな中で長谷川家の祖母が一人異質な感じを貫いていて印象的だった。

    ただ皆さんのレビューにもあるように登場人物が多過ぎて、特に序盤は混乱した。半分くらいの人数にしてそれぞれの物語を掘り下げた方が読みやすかったように思う。

  • 津村さん作品にしては、珍しい群像劇スタイルの
    作品で、登場人物が多いです。ある住宅地に紛れ込んだ、刑務所から脱走した女性。その目的とは何なのか。そして、その住宅地に住む人々に隠された秘密とは。

  • なかなか読み進まなかった!

    登場人物と地図を、何度もめくりながら、覚えるのが大変。
    ジグソーパズルをしているような、じれったさだ。

    でも、後半からは、ワクワクしてきた。

    底なし沼の中に石が投げられて、波紋が広がるように、
    沼全体が動き始め、見通しの悪い木の枝を伐採し、
    光が当たってきて、徐々に、見え始めてきた感じ。

    どこにでもあるような住宅地、
    どこにでもいそうな人々、
    どこにでもありそうな家庭問題、
    そのすべてを一冊にするなんて、すごい。
    けして、つまらなくなかった!

  • 路地を囲むようにして並ぶ、十軒の家。
    そこの(個性豊かな)住人たちが、代わる代わる登場しながら物語が進んでいきます。

    日々、同じような住宅地を行ったり来たりして、変わり映えのない日常を過ごしていた住人たちですが、
    横領犯の女性受刑者が逃亡したいう事件をきっかけに、希薄だった住人たちの関係にもちょっとずつ変化が生じます。

    家が隣近所だからといって、特段親密になる必要はないかもしれないけれど、
    少し勇気を出して踏み込んでみたら、思った以上に良い関係が築けたりする…かも?

    みんな、現状を変える何かのきっかけを待っているのかもしれないですね。
    私もチャンスを見つけたら、逃さないようにしなきゃなぁと思います。

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著者プロフィール

1978年大阪市生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で第21回太宰治賞。2009年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2019年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞など。他著作に『ミュージック・ブレス・ユー!!』『ワーカーズ・ダイジェスト』『サキの忘れ物』『つまらない住宅地のすべての家』『現代生活独習ノート』『やりなおし世界文学』『水車小屋のネネ』などがある。

「2023年 『うどん陣営の受難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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