- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575243970
感想・レビュー・書評
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かつての賑わいを失ってさびれつつある温泉街に暮らす男子高校生たちの話。主人公の伶は普段は土産物店を営む飾らない性格の寿子との二人暮らしだけれど、毎月第3週は複数の事業を展開する実業家で寿子よりも年長の伊都子と、大きな屋敷で過ごすのが子供のころからのならわしで、寿子をおふくろ、伊都子をお母さん、と呼んでいる。父は居らず、話題にものぼらず、昔からそうだったので事情を知ろうにもきっかけも見つけられず、そろそろ進路も決めねばならない年ごろながら遠慮深く常に他人の気持ちをおもんぱかる性格でいろいろ考えているのに何も結論が出ず知らず知らずのうちにストレスが溜まってしまっている。と、書くと、シリアスな感じだけれど、三浦しをんさんなのでテーマは深刻であっても全体の雰囲気は大変なごやかでくすりと笑ってしまうような小さなやりとりが随所にちりばめられており、楽しく読めました。父親に関する謎はなんだかスッキリしないというか、伶の葛藤と成長を描くための記号に過ぎない感じで漫画っぽいというかラノベっぽい感じではありましたが、それよりも友人たちとの青春模様とか、都市部とは違う温泉街の人たちのかかわり方や人情の在り方などが、読んでいて心地よかったです。近ければ近いほど、共通点が多ければ多いほど、合わない部分や違いが際立って仲が悪くなる、の典型のようなさびれた温泉街だけれど、対抗しながらも相手を思いやる伶たちの暖かい人となりに、とても好感を持ちました。個人的な好みからすればだいぶんラノベ寄りの作品ではありましたが、面白かったです。
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図書館で借りた本。
田舎の温泉町の高校生の話。
物心ついた時から、母親が2人、父親は居ない環境で育った伶が主人公。 -
のんびりした雰囲気のなか、事件が起こりつつもどこか牧歌的に感じる。
本当に温泉みたいな雰囲気の本 -
心がホッと暖まる作品でした。
迷惑なんてかけあえばいいっていうセリフが、慌ただしい毎日の中で周りと自分への優しさを忘れている私にはハッとさせられました。 -
ゆるい高校生たちが日常から少しはみ出す⁉︎
熱海が舞台なのが分かるが餅湯温泉って、、、笑える。 -
山と海に囲まれた餅湯温泉に住む高校生たちの青春群像劇。と言っても熱い青春ドラマではなく、全体的にゆるゆる〜としていて、クスッと笑えるところが多くリラックスしながら読み終わりました。
熱血青春ドラマではないからこそ、中高生に寄り添ってくれそうな小説だと思いました。大人の私にとっても高校生の時を振り返って「あー、わかる!」と思うところが多かったです。夢はなにか?やりたいことは何か?とかに悩んでるときに読むといい感じに力が抜けると思います。
最終的に自分の中で着地した感想は「何かが劇的に変わることはないだろうけど、何歳になっても今に振り回されながらなんとか生きよー」でした。
最後の感想はゆるっとしてますが、餅湯温泉街の生活を堪能しないとなかなかココに至る説得力がないのかな、と思うので肩の力がぬける温泉街の風景を楽しめたのだと思います。
装幀に惹かれてジャケット買いのようにして買ったのですが、三浦しをんさんの小説は描写が多いわけではないのに舞台の全体像が浮かびやすく没頭できるマジックがあるな、と思います。
装幀で描かれてるとおり、街の全体像を思い浮かべながら楽しめる感じがします。ちょっと旅行にいった気分にもなりました。もちろんこんな街はなかなかないんですが、観光地の日常を垣間見たような気になりました。 -
2024.1.12 読了
声を出して笑った。高校生の男子は底抜けにバカで、それでいて優しい。おふくろの寿絵も、商店街の人たちも同じ。
秘密を優しい嘘で包みこんで、むしろそれが疎外感を与えていることにも気が付かないで過ごしている。
「さびしい」ということについて、「敵だと思われたいひとなんてたぶんいない。けれど大切な相手であればあるほど傷ついたり傷つけたりしたくなくて踏みこめず、敵よりも遠く隔てられわかりあえないこともある。」「世界を敵味方に分類して考えるひとは、孤独かもしれないがさびしくはないだろう。だれかとわかりあいたい、一緒にいたいと願わないなら、さびしさだって生じようがない。」と主人公に語らせるが、ストンと腹におさまった。
騒動の末に、それぞれの未来へ力強い一歩を踏み出した彼らに、エールを送っている自分がいた。 -
シンプルな青春群像劇なので正直三浦しをんさんの作品としては異質というか、らしくない小説だと思った。
個人的には青春群像劇が大好きなので、その系統が好きな人には楽しめるのではないなと。
悩み溢れる青春時代の葛藤や学友との日常はみててホッコリするし、かつての青春時代を振り返ってしまう。 -
想像できる風景が好きすぎる
昔は田舎の海沿いの街に住むのに憧れてたのを思い出した