ヤスの本懐 ヤッさんファイナル

著者 :
  • 双葉社
3.58
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本棚登録 : 144
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575244304

作品紹介・あらすじ

誇り高き宿無しにして食の達人のヤッさんがオモニとともに誰にも何も告げずに突如姿を消した。一番弟子のタカオは二人の行方を捜しはじめるが……。二人の身に何が起きたのか(「ヤスの本懐」)。シリーズ6弾目にして、完結編。涙なしには読めない表題作を含め計3編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 『矜持ある宿無し』で無償の飲食コンサルタント、『ヤッさん』が様々な迷える若者たちを成長させていくシリーズ完結編。

    今回は完結編らしく新たな登場人物はいない。
    二番弟子のマリエと一番弟子のタカオの話が続く。
    飲食業界なのでコロナショックでどうなったのかと心配していたが、二人ともテイクアウト商品やネット商品で乗り切ったようだ。
    それどころかマリエは鯖サンドというヒット商品を生み出すし、タカオの妻・ミサキは妊娠中も出産後も元気に蕎麦を打ち店は繁盛。

    だがマリエは有名デパートから出店の打診を受けて迷走を始める。一方のタカオは三番弟子・真菜の店が嫌がらせを受けていることを知り解決に奔走する。
    こういう時にこそヤッさんの出番なのだが、何故かヤッさんは豊洲市場から消え更にオモニの店までなくなっている。一体何があったのか?

    最終話はタイトル通りヤッさんの話。詳しくはネタバレになるので書けないが、ヤッさんは何と札幌にいた。そしてヤッさんが一番迷走していた。
    事情が分かれば理解出来るが、タカオと同様、ヤッさんに喝をいれたくなる。ヤッさんにはどんな時でも『矜持ある』スタイルを貫いて欲しいのだ。『損得勘定より真義』を取るヤッさんを見たいのだ。若い弟子たちが迷っていれば喝をいれて欲しいのだ。それが逆になってどうする。

    最終的にはヤッさんは自分を取り戻すのだが、スッキリ爽快な結末とはならない。
    だがこれはいつか来る世代交代。マリエやタカオに子どもが生まれたのは良い機会なのだろう。ヤッさんの『矜持』はヤッさんだけのものではなく、様々な人たちへ広がっていく。

    この完結編だけではページ数含め少し物足りなさがあるが、シリーズ全体としては弟子たちの頼もしい成長が見られて良かった。

    ※シリーズ作品一覧
    (★はレビュー登録あり)
    ①「ヤッさん」
    ②「神楽坂のマリエ ヤッさんⅡ」
    ③「築地の門出 ヤッさんⅢ」
    ④「料理人の光 ヤッさんⅣ」★
    ⑤「春とび娘 ヤッさんⅤ」★
    ⑥ 本作 ★

  • これで最後というのは悲しいです。
    まだまだ続けて欲しいけど仕方ないですね。
    登場人物も年を取るから。

  • 孤高のホームレスで一流の食のコンサルタントヤッさんと弟子たちの物語。
    本作が総集編とも言える現時点での最終話。
    ヤッさんとオモニが突然いなくなるところから始まる。
    これまでの登場人物が勢揃いして最後もヤッさんらしいエンディングだった。

  • どんな物語にも終わりはやってくる
    この「ヤッさん」シリーズにも
    例外ではない
    人気のあるシリーズになればにるほど
    産土の作者は
    さぞ大変でしょう

    この完結編に納められているのは
    三章の物語

    私個人としては
    第一章の「マリエの覚醒」
    第二章の「タカオの矜持」
    が 読み応えありでした
    ヤッさんそのものは登場しないのですが
    その行間に 
    よりヤッさんらしさが彷彿と湧き上がってきて
    これまでのヤッさんにまつわる数々のエピソードが
    浮かび上がってくる
    これは シリーズを読み継いできた
    この読者ファンの特権ですよね

    そして第三章「ヤスの本懐」
    始めの二章が とてもいいなぁ度合いが
    強かったので
    どうしても 物足りなさを感じてしまう
    これは人気シリーズであるがゆえの
    宿命かもしれませんね

  • 20231022

  • ヤッさんシリーズの最終作。二番弟子のマリエの悩みから始まり、寿司屋の真菜を助けるためにタカオが立ち上がる。最後は行方不明になったヤッさんが病気のオモニを支えるために札幌で奮闘する様が描かれ、ヤッさんは再び旅立っていった。最後にヤッさんが悩むところを見て、人間だなぁと思った。

  • お気に入りのヤっさんシリーズ完結編。
    「矜持ある宿無し生活」をしながら、築地や豊洲界隈で働く様々な職人や料理人のために奮闘してきたヤっさんのお話がついに終わりを迎えてしまった。

    一言で言うと寂しいに尽きる。
    オモニとの関係、オモニと仲間たちとの別れ方、築地・豊洲に戻らないヤッさん、これからの人生など、寂しさと切なさが溢れている。
    世代交代なのか、この時勢のせいなのか、オモニとヤッさんが生きてきた人生ゆえの価値観・スタイルなのか、ファンとしては切なさでいっぱい。
    でも、タカオの成長ぶりとミサキの相変わらずの頼もしさ、マリエの覚悟が見られたのは嬉しかったし、続編が出たらやっぱり読みたいと思う。

    それにしても、前作で築地市場の豊洲移転、東京オリンピックなど、リアルな社会情勢を踏まえたストーリが描かれ、ヤッさんもそれに翻弄される展開となっていたが、今作は新型コロナの影響で大打撃を受けた飲食業界、オモニを含め苦労・奮闘した人々の話があり、現代小説、特に飲食業界を舞台にした小説においては、新型コロナが与えた打撃、影響を書かないわけにはいかないのだと改めて思った。
    フィクションであっても、コロナの影響が無い社会・業界を描くことはリアリティの無さだけではなく、人々の価値観、ライフスタイルの変化もうまく捉えきれないのかもしれない。

    こんな時期があって、こんな風に小説にも描かれてたんだなーって過去のことのように言えるように早くなってほしい。

  • おもしろい
    シリーズ全部を読んだわけではないが、
    今回はファイナルを読む
    魚市場も築地から豊洲に移り
    コロナ禍で飲食業が苦難の様相を呈している中、ヤッさんの弟子達が悪戦苦闘しながらも、叩き込まれた教えを胸に筋を通して行く様を描いている
    北海道の札幌に場所を移して、老舗洋食店を救う活躍には、元銀行マンとの勝負もある

    最後は、皆の母親役に寿命が来る
    人と人を繋げて、人の為に走り回って生きてきたヤッさんの女房役の死だ
    脳梗塞で倒れ、二度目には半身麻痺と言語障害だ
    ついに三度目の発症で死に至る
    著者も68才 寿命の話しも身近な主題のはずだ

    関わってきた人達からはいくらでも手が差し伸べられる
    現実にそんな終わり方ができるものなら素晴らしい幕切れとなるだろう

  •  『ヤッさん』シリーズ最終巻。3話からなる連作短編集。

          * * * * *

     シリーズ構成を逆に辿って、1話目からマリエ、タカオの順で一本立ちさせ、最終話で弱気になっていたヤッさんが立ち直るという絵に描いたような大団円。なかなか楽しめました。

     それにしても、そうなるだろうという読者の期待に沿いつつ満足感を与えられるよう、その期待よりワンランク上の仕上がりにする作者の力量は、率直に讃えたいと思います。本当にお疲れ様でした。

     なお、築地を舞台にしたスピンオフ作品をぜひお願いしたい。原先生、どうかご検討ください。

  • お疲れ様でした。長かったですね。途中で思いもかけない事件ばっかり起こって、連作も大変だったと思います。まあ世の中スッキリ解決できひん方が多いけど、小説くらいはこういうのもありかと。ファイナルらしい大円団でした。

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著者プロフィール

1954年、長野県生まれ。早稲田大学卒。97年に作家デビュー。2007年『床下仙人』が第1回啓文堂書店おすすめ文庫大賞に選ばれるなどベストセラーに。他の著書に「佳代のキッチン」シリーズ、『天下り酒場』『ダイナマイト・ツアーズ』『東京箱庭鉄道』『ねじれびと』(以上、祥伝社文庫)、「ヤッさん」シリーズなど多数。最新作は『間借り鮨まさよ』。

「2023年 『うたかた姫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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