- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575246032
作品紹介・あらすじ
僕は三年前に小学校の教員を辞めた。
昼間の世界から逃げ込むようにして就いた夜勤の警備員の仕事。
他人と深く関わらずに生きようと決めていたはずだった。
でも、勤務先で置引未遂を起こした女児との出会いが僕の止まっていた時間を動かして……。
損をしてまで誰かを助けることは愚かなことだろうか?
挫折した青年の再生と新たな一歩を描く、書下ろし長編小説。
感想・レビュー・書評
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今作も小野寺史宜さんの小説の主人公はいい人でした!
小学校教師を辞め、商業施設で警備員として働く石村。
困っている人を助けたいと思ってとった行動が元で教師を辞めることになり、人と関わることを避けて生活してきたが、勤務先で置き引きをしようとしている少女を見かけたことから、もう一度自分の心を見つめ直すことになる。
自分が正しいと思ったことも世間からは正しくないと思われることがある。思われるだけではなく糾弾されてしまえば自分の信念を貫き通すのは難しい。
でも、自分を偽って生きるのはもっと苦しい。
石村の周りに石村を理解してくれる人がいて良かった。それが一番の力になる気がする。
ラストはタイトル通り光を感じました。
自分を信じて踏み出せた石村、本当に良かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
石村圭人、周りの人のためにベストを尽くす、困った人を放っておけない。
教師をやめて、警備員になった。
教師だって警備員だって、石村圭人は、石村圭人なんだ、変わらない。
限界なら仕事はやめればいい。教師は仕事なんだから。
仕事が変わってもなにも変わらない。
圭人が同僚の杉原先生に言った言葉が印象的だった。
人は人との関わりの中で、良くも悪くも変わっていくんだと感じた。
明日は光が射しますように…。 -
教師を辞め夜勤のある警備員になってから三年。
人との関わりが煩わしく感じて、夜勤のある職につき不規則さにも慣れてきた石村圭斗32歳。
施設警備の巡回中に気になる小学生の女の子の姿。見ているとゲームをしているおばあさんの置いたかばんを盗むところを目撃する。
この少女との出会いから子どもの頃の自分のことを思い出し、なぜ教師になったのか。
そして、なぜ教師を辞めたのかを振り返りながら物語は進む。
石村圭斗は、真面目だなと思った。
真摯に生徒の親と対応したから…と言えばそうなのかもしれないが、迂闊だったと思って悔いたことの結果かもしれない。
周りの被害を最小限に納めるためのことかもしれない。
それは、彼も充分に感じていただろう。
だが、教師を辞めて警備員になっても誰かが困っていれば助けるのだ。
ひとりで頑張らないで、そっと手を差しのばす人なのだ。
じんわりと彼の人の良さが伝わってくる。
そんな彼のことをよくわかる人が現れて、最後はなんだか嬉しい気分になった。
余談だが、私も「家、ついて行ってイイですか?」は、見る。
そこでもいろんな人生を見る。
「モヤモヤさまぁ〜ず」も見る。
町ぶらも見るのか好きだ。
ひとりでいるのは好きだけど人と関わりたいということなのかな…。
私もよくわからない。
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圭斗が傷ついていく姿に
はらはらしつつ
その不器用な気持ちでも
誰かを助けたいと思う姿に
人間の温かさを感じます
こういう先生が
心を病んでしまうんじゃないかなぁ
と切なくもなる
児童虐待の話が絡むので
やはり読んでいて辛いです
ハンカチをご用意ください -
優しくゆったりとした話でした。セリフが多め。何か大きな事件が起きる訳ではなく、ただ1人の人間の生活の様を描いている。小野寺さん特有の文章に、あぁこれこれ『ひと』もこの感じだった!と思い出しました。
元教師の警備員の男性の話なのですが、優しいと優柔不断の境目といった感じかな -
主人公の心根の良さに、ただひたすら癒される作品でした。
主人公は警備員として働く、元教師。警備員の仕事の最中に置き引きを行おうとする少女と出会い、そして…というような感じのストーリー。
構成としては、教師時代を描く過去の描写と、警備員として働く現在の描写が交互に差し込まれる構成。
このお話の見どころはなんと言っても、主人公の心根の良さです。現在と過去、ぶれずに一貫して人のために行動できる主人公の性格はとても見習いたいものでした。また、それを取り巻く人たちも、その人の性格を理解し、力になってあげたいと思う人が多く、幸せな世界だなぁと感じました。
しかし、小野寺さんの代表作である「ひと」と比べると、評価は普通くらいかなと思いました。 -
私が読む小野寺史宜氏作品の16冊目。
今並行して読んでいる津村記久子氏の『水車小屋のネネ』はまだ冒頭部分だけなのだが、どちらも「シングルマザーの育児放棄」「小学生女児が、母親の男から虐待を受ける」という共通点があり、なんだかなぁという気持ち。
本書の主人公は良く言えば「いい人」だが、悪く言えば「不器用」で「ひとが良過ぎ」て「ちょっと考えが足りない」。
彼が教師だった時、この先どういう展開になるか想像できたので、彼が引き受けると言った時には思わず「ばかっ」と声を出してしまった。
シングルマザー(この人は育児放棄した人ではない)も、まず職場の上司に相談しなさいよ。
警備員となった現在も、やり方が危ない。
君だけが周りに目を配っているわけじゃないよと言いたくなる。
逆に君のその行為(善意だけど)を、不審な行動として見つける善意の第三者だっているよ。
読んでいて、ひやひやした。
本書では地域名や駅名を出していないが、描写からわかった。
何年も前に、ひとり街ランをした時に、ここのもう少し北側の銭湯を終着点としたことがある。
銭湯の後、南下して駅へ行くまでの間に、この商業施設(主人公が警備員をしている駅南側のではなく、踏み台を買いに行く北側の方)にも立ち寄った。
その先も、主人公がどこをどう歩いたのかを地図で追いながら読んだらドンピシャだった。
あの駅で間違いない。
ついでに、あの時の銭湯は…と地図で確認したら、該当する地域に2軒あって、2軒とも様変わりしていた。
自分が寄ったのはどちらの銭湯だったのかわからなくなった。
「看護師さんの存在は患者にとったら医師以上」という点には大いに賛同する。
実際、昨年ケガで入院した時に私は看護師さん達にその言葉を感謝の意とともに伝えてきた。
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会話が「みつばの郵便屋さん」みたい。元々「みつばの〜」は大好きなシリーズだったので、バトンを受け継いだという事にしておこう。それとも著者の才能が枯渇してしまったか…