『遺言』 闇社会の守護神と呼ばれた男、その懺悔と雪辱

著者 :
  • 双葉社
3.43
  • (2)
  • (7)
  • (2)
  • (1)
  • (2)
本棚登録 : 44
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575307269

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「人情派特捜検事」が成り立たないと気づいて弁護士へと転身してバブル紳士たちを弁護したキャリアを振り返る。
    獄中で胃がんが発見され、治療しながらの収監生活をインサートしながらの自伝。

    『闇の盾』の寺尾氏よりも自身の行動を明確に語っていて(真偽のほどは知らない)、自伝としての完結感というか、誠実感というか、があると感じた。

  • 「反転」を読んで、続けて「遺言」を読むこととした。
    反転が、実に面白かったので、遺言にどんなメッセージがあるのか?
    反転は、まだ闘う姿勢が強いものだった。
    遺言は、刑が確定し、刑務所に入り、そして ガンとなる。
    その絶望感の中でも、言葉を紡ぐ姿勢が尊い。
    そのため、反転の時の明るいトーンと比べて
    同じような経過を語るにも 暗いトーンが満ち溢れる。
    どうしても、同じようなことを書かざるをえなくなる心境も分かる。

    有罪、弁護士資格剥奪、がんという苦難の中で、
    その心の底流として、論語に支えられているのが、興味ふかい。
    日本人は、最後は そこに行き着くかもしれない。
    論語は、東洋人の思想の基層をなしているのだろう。
    確かに 田中森一が 聖書に向かったら、違ったテイストになる。
    許永中に対する想いが断ち切れないところが、
    精神的に強さがありながらも、どこかに繋がりと救いを求めるのだろう。

    結局は、田中森一を落とし込めるための特捜部の執拗な怨念が
    にじみ出てきて、特捜のストーリー逮捕が、暴かれている。
    田中森一は、まさか自分にそのような仕打ちをされるとも
    思わなかっただろう。脇が甘いといえば、甘い。
    無罪を主張するのは、痛々しくも 田中森一は無実と思う。

    法の枠の中だけでなく、法の外も含めて、
    法律家として、ドブ掃除をする価値を貫き通した。
    ご冥福を、祈ります。

  • これだけのバイタリティーと優秀な頭脳を持ってしても、特捜部という国家権力には抹殺されるのかと思うと怖くなった。晩年の絶望的な最後の苦悩が切なく感じた。

  • 出てくる金額の大きさに現実味が無く、読むのに凄く疲れた。しかし、充分に面白い。任侠の人がだなとも思いました。

  • 2014年11月に亡くなった田中森一の最後の著書。

    『反転』とかぶっているところも多いが、それでも十分面白い。検事→弁護士→5年間の服役をしてきた男の自伝。
    恨みからは何も生まれない。人への恨みはやがて凝り固まり、根深さを増し、人を恨むことが人生のようになってしまう。だから田中は自分陥れた人間を恨まぬよう気持ちをコントロールしてきた、というくだりに頷かせられる。

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

田中森一(たなか・もりかず)

 1943年、長崎県に生まれる。岡山大学法文学部在学中に司法試験に合格。1971年、検事任官。大阪地検特捜部などを経たあと、東京地検特捜部で、撚糸工連汚職、平和相互銀行不正融資事件、三菱重工CB事件などを担当。その辣腕ぶりが「伝説」となり、名声を博す。1987年、弁護士に転身。2000年、石橋産業事件をめぐる詐欺容疑で東京地検に逮捕、起訴され、無罪を主張するも実刑が確定。4年8ヵ月の獄中生活を経て、2012年11月に出所。
 著書には30万部のベストセラーになった『反転 闇社会の守護神と呼ばれて』、共著に『検察を支配する「悪魔」』などがある。

「2013年 『塀のなかで悟った論語 現代人を癒す24の答え』 で使われていた紹介文から引用しています。」

田中森一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×