放課後に死者は戻る (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
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感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575520507

感想・レビュー・書評

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  • 「「あれ??」」
    「ぼく」  「わたし」
    「「入れ替わってるぅぅうぅぅ!!!」」
    と、今流行りのなんとかの名は的な(では無いのだが)青春ミステリー。装丁も相まって、代表作「暗黒女子」と対になるDK(男子高校生)物語のようにも感じる。

    青春ミステリーと括るとなんだか爽やかな風が吹くものだが、本書は湿度が高めだ。ねっとりした温風が流れている。
    カースト底辺層の主人公、「小山のぶお」は死者だ。彼の記憶では自分は何者かによって崖から突き落とされ死んだはずだった。だが、生きている。突き落とされた最後の記憶、崖上から声を掛けてくれたのに足を滑らせてしまったあの不運な通りすがりの名も知らぬ男と心が入れ替わったのだ。
    だが好都合であった。のぶおは自身を殺した犯人をこの男の身体を使い探し出そうとする。
    ーーーーーーーーーーーーーーーー

    のぶおの義骸となった男の名は高橋真治。
    金持ちハーフイケメンバンドマンという欲張り仕様なハイスペック種族だ。真治の顔をしたのぶおはクラスの人気者の仲間入りをし、真治の目を通してクラス内でののぶおの価値を突き付けられることとなる。

    目立つことはしていない自分がなぜクラスの人間に殺されなければならなかったのか。自分の死の真相に近付こうとすればする程、疑心に苛まれ、ハイスペック真治の生活に甘んじる事で逃避しようとする。入れ替わった真治の魂は死した自分の骸に移った可能性に目を瞑りながら。
    ーーーーーーーーーーーーーーー

    9割型未来が見えていたのに、最後の最後でやられてしまった。すごい、さながら10球中9球ストレートだったのに最後の変化球がエグいドS仕様のバッティングマシーンだ。うむ、よく分からない。
    気にせず続けるが、最後の1球を見送ったからといって9球は捉えてたからね、景品は2等くらいは持ち帰れた筈だ。何が言いたいって、「やられた」事実は揺るがないが「勝者」に変わりないということだ。
    ミステリーには敗北したいものである。

    のぶおは真治の生活を経験した事で友情を知り、恋を知る事となる。卑屈になっていたのは己自身だと気付き歩幅は限りなく小さいが紛れもない一歩を踏み出せたのだろう。
    気付けば爽やかな風が流れていた。

  • 事故にあって気がついたら病院のベット… しかも知らない誰かに入れ替わってる? #放課後に死者は戻る

    ■あらすじ
    鉄オタ、根暗の主人公である男子高校生が崖から突き落とされた。
    病院のベットで気が付くと、なんと助けようとしてくれたイケメンに入れ替わってしまったのだ。イケメンの容姿での生活を始めつつも、自らを崖から突き落とした犯人を捜すのだった。

    ■きっと読みたくなるレビュー
    人体入れ替わりモノをミステリーベースで綴られる青春ストーリー。
    恋愛ドラマでよくある美男美女の入れ替わりでなく、冴えないオタクとモテ男イケメンが入れ替わるところが本作のキモですね。

    かなり無茶な進行、展開だったりもするのですが、勢いとテンポがあってどんどん読めちゃう。カジュアルな読み口だし、キャラクターや場面場面の絵面も分かりやすい。友人、恋人、家族との関係性や会話も愛嬌満載。まさに青春ミステリーですね。

    でも本作、実はメッセージ性があって味わい深いんです。
    ラストは根暗だった主人公の成長ぶりがあまりにも爽やかで、自らの冴えない学生時代を思い出してしまいました。

    なんといっても本作の読みどころは、主人公の心情描写ですね。
    とんでもないことに巻き込まれてしまいましたが、犯人捜しを進めていくクラスメイトの会話の中で、少しずつ自らの間違いに気が付いていく。前向きに歩んでいく様子を見て、まるで自身の息子のように応援をしてしまいました。

    晴れやかな気持ちになれる、素晴らしい青春ミステリーでした。

    ■きっと共感できる書評
    魔法が使えたらいいのになぁ~
    イケメンになったり、お金持ちになったり、遊んで暮らせるような魔法とか。そうすれば、どんな人にも好かれ、愛され、幸せでいっぱいになるはず!
    まだ世間や現実を知らない子供でアホだった頃は、こんなことを思ったものでした。

    しかし多くの友人、先輩、先生、恋人などの人間と関わって人生を歩んでいくうちに、人それぞれの価値、能力、魅力があることが分かってくる。もちろん自分自身にも。

    その魅力の背景には、当然努力や才能の上に成り立っているものであって、仮にインチキで他人の魅力を得ることができたとしても、嬉しいはずなんてないんですよね。

    上辺の魅力だけでなく、自分のすべてを知って愛してくれる人と一緒いたい。本作を読んであらためて家族の大切さを知りました。

    • アールグレイさん
      こんにちは(^_^)/akiさん

      この本面白そうですね!
      なので、レビューは途中までしか読んでいません。ごめんなさい
      (>_<) また、読...
      こんにちは(^_^)/akiさん

      この本面白そうですね!
      なので、レビューは途中までしか読んでいません。ごめんなさい
      (>_<) また、読みたい本が増えてしまったけど、嬉しい悲鳴です。
      (@^^)/~~~
      2023/01/17
    • autumn522akiさん
      アールグレイさん、こんばんわ~
      お元気でしたかっ ここ数日、寒くなりましたね。
      いつもレビュー見てくれてありがとうございます!
      なかな...
      アールグレイさん、こんばんわ~
      お元気でしたかっ ここ数日、寒くなりましたね。
      いつもレビュー見てくれてありがとうございます!
      なかなか面白いので、ぜひお時間があれば~
      2023/01/17
  • 転生もんになるのかな?
    ミステリー要素多めで、更に大どんでん返し…
    最後は分からんかった…
    のぶおくんは、一皮むけて成長したんかな。
    SFとかで、たまにある違う世界に迷い込んで、そこで色々経験して成長していくという感じの
    「転生&ミステリー(人死んでる)」版
    (まとまってないタイトル ^^;)

    鉄オタで陰気な男が、イケメンと入れ替わり!(入れ替わる時に人死んでるのが、知ってるのとちゃうわ)
    そら、人生180度変わるわな。人は見た目が9割とか100%とかいう本もあるし。
    しかし、イケメンの方は、陰気な男に入れ替わっても平然としてる。やはり、見た目だけやなく、心構えというか精神的なものも大きいということか…
    でも、それは、今まで、男前とかイケメンだとかで、チヤホヤされて育って来た人の考えで、今まで、スルーされてた人に求めるか?って思わんでもない。

    あかん!イケメンに嫉妬してる(^◇^;)
    心だけでも男前になろ!

    一気読みでした〜(^-^)v

  • 崖から突き落とされた鉄道オタクの冴えない主人公は、目が覚めると巻き添えになった美形男子高校生の姿に変わっていた……。という特殊設定ミステリ。

    主人公は他人の姿で過ごす中、元の自分では気づかなかったクラスメイトの別の顔を知っていくことになります。こういう場合、だいたい裏の顔・性格の悪い面なんかが多いと思うのですが、主人公が知っていくのは元の自分では関りがなかったり偏見などによって知りえなかった優しさや揺るがぬ友情などの陽の面がほとんどで、その為読後感は序盤からは考えられないほど爽やか。正直ミステリと考えると弱いのですが、青春ものとしては楽しめました。

  • 2014年刊行された本ということで驚いた。

    今となってはなろう系発の小説、アニメが流行り始めていて、その中ではイケメン、美女に転生なんてものが多くある。最近かと思ったが、意外と前の作品だった。それもありこの年というのに驚いた。

    この作品を通して人のいい面、悪い面がありそれが人によって見え方が変わるということ、そしてその見え方は自分の在り方によっても変わるということを改めて感じた。全部が全部という訳ではないがそういった要素も現実にあるのだろう。

    何となく、量に対して詰めすぎで最後駆け抜けすぎたかなぁとも感じる。

  • 冴えないオタクの男子高生が崖に突き落とされる。目覚めると、イケメン男子高生に。
    ありがちな設定ながらも、最後はうるうるとした。
    流行りのスクールカーストを極力避け、犯人探しに徹するストーリー。
    秋吉理香子が、イヤミス作家からの脱却に見事成功した一作でした。

  • 秋吉理香子さん2作目。絶対正義がなかなかゾッとする内容だったので、これもとんでもない展開が待っているのではないかと思ったが、爽やかなラストだった。読めば読む程誰もが怪しいし、疑心暗鬼にもなるのだが、安心して読み進めて良いタイプの物語。暗黒女子がずっと気になっていて、未読だが近々読んでみたい。

  • 高校生が感じるルッキズムやそれに伴う葛藤が、非現実的な設定を通してよく描かれていると思います。

    前作『暗黒女子』と同様のイヤミスを期待していると、拍子抜けしてしまうかもしれませんが、切なさと爽やかさを残す読後感は、前作とは違った一面が垣間見えるようでした。

    次作以降の作品も楽しみです。

  • 他の人のレビューが辛口でびっくり。
    個人的に最近読んできた他の作品が暗かったからか、こういういい子ばかり出る作品にホッとした。
    話のはじめから犯人捜し。ミステリーだし登場人物の裏ばかりを想像してしまう。頭がよくてカッコよくてお金持ちな高橋真治と入れ替わった小山のぶお。真治の表面上は優等生でもやっぱ犯人?丸山さんがストーカーだったのは、すぐ分かったけど、ストーカーだから犯行現場を目撃してるんだと思ってた。
    教室の花瓶に騙された。別の作品でもこういう演出あったのに、まんまと引っかかった。いないように扱われてて当然。それを知ると文化祭準備中の城崎さんとのやり取り読み直してしまった。なるほどね。
    今回文末の岡田麿里さんの解説が腑に落ちてそうそうとこっちに共感。本作のミステリー部分よりのぶおの共感部分に尺が多く使われてるところ。のぶおの素直さ、相手の気持ちに寄りそう想像力と思慮深さ。ただのミステリーとしてでなく、ありきたりだけど心情の描写がよかったなぁ。

  • 僕たち私たち入れ替わってるはともかく幽霊オチ???

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。ロヨラ・メリーマウント大学院で映画・TV製作の修士号を取得。2008年、短編「雪の花」で第3回「Yahoo!JAPAN文学賞」を受賞、翌年、同作を含む短編集『雪の花』で作家デビューを果たした。ダークミステリー『暗黒女子』は話題となり、映画化もされた。他の作品に『絶対正義』『サイレンス』『ジゼル』『眠れる美女』『婚活中毒』『灼熱』などがある。

「2021年 『息子のボーイフレンド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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