ぬるくゆるやかに流れる黒い川 (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575524987

作品紹介・あらすじ

六年前、武内譲は無差別に二家族を惨殺し、動機を明らかにしないまま拘置所で自殺した。遺族の栗山香那と進藤小雪は事件当時の武内と同じ二十歳になったとき再会する。小雪は「事件をあらためて調べよう」と香那を誘う。二人が真相を追うごとに気づかされるのは、世代を越え女性憎悪の感情で繋がる男の存在だった。ミソジニー、女性憎悪の闇を追う長篇サスペンス。

感想・レビュー・書評

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  • 櫛木理宇『ぬるくゆるやかに流れる黒い川』双葉文庫。

    長編ミステリーという触れ込みであるが、過去の日本の男尊女卑に端を発したある一族の血を巡る事件の全貌を描いた小説だった。乏しい伏線の中で、いきなり犯人が登場するという終盤の展開、犯人の動機もまた希薄で、とても納得出来るストーリーではなかった。

    横溝正史が描いてもおかしくないなテーマであり、横溝正史が描いたならもっと重厚でおどろおどろしいミステリー小説になったであろう。

    閑静な住宅街で起きた極悪非道の無差別殺傷事件。中学の同級生の栗山香那と進藤小雪は昼休み中に教師から呼び出され、家族の悲劇を知る。栗山香那は母親と弟を失い、進藤小雪は祖母と母親、妹を失ったのだ。現行犯逮捕された20歳になったばかりの武内譲は動機を明らかにしないまま拘置所で自殺する。

    6年後に再会した大学生の栗山香那と進藤小雪は事件を根本から調べ直そうとする。少しずつ見えてくる武内譲の異常な動機と武内一族を巡る忌まわしい過去……

    本体価格780円
    ★★★

  • 感想を書くのが難しい。
    そんな感想を抱いたこの作品。

    男尊女卑。女尊男卑。
    からゆきさん。
    モラハラ、マタハラ、DV、虐待、ネグレクト。
    そんな色んな問題が詰まった作品でした。

    武内譲に家族を殺された栗山香那と進藤小雪。
    そして、その事件を追っていた今道刑事。
    六年の時を経て、武内譲の過去を追っていく。

    譲の親族である武内昭也は、譲の祖父である武内和偉の弟であった。しかし、香那と小雪が会おうとしていた前日に何者かに殺害されてしまう。

    譲が産まれてすぐに失踪してしまった母、由布子。
    冒頭の手紙に出てくる武内チヤ。
    由布子の母である光子。
    祖父、和偉が結婚を考えていた由良すず子。

    それぞれの女性に起こった、それぞれの残酷な運命というか、因果というか、そんな何かに薄ら寒くなった。

    唯一の救いは、香那と小雪の間に友情が育まれたことかな。あの教室でのシーンを書きたくて、きっと櫛木さんはこの本を書いたんじゃないかな。

    急に現れた光子と、急に今道刑事が会いに行った犯人は本当に何も伏線がなくて、え?どっからその推理出てきたの?ってなりました。

  • ❇︎
    ある日突然、当たり前にあるはずだった
    家族を惨殺されてしまった二人の少女。

    二人は6年の年月を経て、犯人が何故
    犯行を行なったか動機を調べて始める。

    過酷な生育環境。
    負の感情の連鎖。
    歴史的な背景。

    抗えず歪んでしまった人、抗って生き抜いた人。

    どうしようもない闇い感情に取り込まれて、
    生きていたいと思えない人が
    いまもどこかで膝を抱えているのかも
    知れないと想像してまいました。
    どうか、その衝動が自分や人を傷つけることに
    向かわないでほしいと感じた物語です。

  • 家の施錠をしていなかったため、香那と小雪の家族が惨殺された。
    副担任が二人を呼びに来て、それぞれ事件を知らされた。
    犯人は拘置所で自殺した。
    それから六年。
    香那と小雪は再会し、事件を調べ始める。
    事件の背景にあったのは世代を越え女性憎悪の感情で繋がる男たちの存在だった。

  • 登場人物が多すぎて全体的にとっちらかっている印象。結末が唐突に突きつけられた感じでした。
    ただ小雪と香那の間に本物の信頼と友情が芽生えて、「怒っていいんだ」という感情を得られたところはとても良かったと思う。
    タイトルの川って血筋の事なのかな?と。

  • なぜ、どうして、から遠ざかった香那。
    自ら真実をつかもうとする小雪。
    協力してほしいという小雪。
    悩みながらも協力することにした香那。

    自分達はあのときの犯人と同じ二十歳になった。

    事件を忘れられない刑事と弁護士。

    調べれば調べるほど闇は濃くなる、深みにはまる。



    177ページ~180ページ

    345ページ~349ページ

    453ページ~454ページ

    重い話だった。読んでいて苦しかった。
    女性蔑視など女性の問題を多く取り扱っている。
    いろいろと考えさせられるテーマだったと思う。

    救いは、香那と小雪の関係性の変化と刑事の家族団らんシーン。

  • 虐待の連鎖を止める話だった

  • この本の願いといったら、2人の友情がどこまでも続きますようにってだけ。

  • 簡単に「分かる」とは言ってはいけないとは思いつつも、加害者の心境も被害者の心境もなんだか分かる気がしてしまった。

  • 読んだ後、嫌な余韻が長引く。
    動機が弱い割に残酷な描写が続いて、時々飛ばしちゃう。

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著者プロフィール

1972年新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞。同年、「赤と白」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、二冠を達成。著作には「ホーンテッド・キャンパス」シリーズ、『侵蝕 壊される家族の記録』、『瑕死物件 209号室のアオイ』(角川ホラー文庫)、『虎を追う』(光文社文庫)、『死刑にいたる病』(ハヤカワ文庫JA)、『鵜頭川村事件』(文春文庫)、『虜囚の犬』(KADOKAWA)、『灰いろの鴉 捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎』(ハルキ文庫)など多数。

「2023年 『ホーンテッド・キャンパス 黒い影が揺れる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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