ジャポニスム謎調査 新聞社文化部旅するコンビ (双葉文庫)

著者 : 一色さゆり

• 双葉社 (2022年6月16日発売)

作品紹介・あらすじ

全国紙である日陽新聞社の本社文化部に異動してきた雨柳円花に対しての、先輩記者・山田文明の印象は最悪だった。自分にはタメ口だわ、ＳＮＳで人気者だわ、社会人としての礼儀はなってないわ……そして自分より先に連載企画を担当するとは！！　アートに関しては知識と興味が人一倍ある円花が企画した、日本に息づく伝統的なワザを〔再発見〕する新連載、その補佐役を山田は命じられる。硯、大津絵、漱石の肖像写真、灯台、円空仏。様々なテーマに取り組み、取材で各地を二人でまわるうち、自由奔放なだけではない円花の良さ、自分にはない能力と魅力にいつしか山田は気づかされ――。そんな二人の取材の成果をお届けします！　芸大出身の著者が紡ぐ、文庫オリジナル連作小説。ＡＲＴ＆ＥＡＴの魅力がたっぷり！　

感想・レビュー・書評

[ひだまりトマトさんの感想 · 2023年7月6日]

エンターテイメント・ユーモアお仕事ミステリー小説ですね。

新聞社の文化部の山田（三十才）と新人の雨柳円花（二十六才）のコンビが、新連載の”日本の文化を発見する“を担当することに～。
山田は慎重な「橋を叩いて渡る性格」
円花は自由気儘天衣無縫の性格。民俗学の権威の祖父を持ち、小さい頃から可愛がられ、共に取材の旅をした経験を持つ。並々ならぬ慧眼の持ち主。
そんな凸凹コンビが、日本の奥深さを求めての物語。
美味しい食べ物と、文化遺産、そして人びととの出逢い。
バラエティー豊かに、作家の一色さんの美術知識に裏打ちされて、ユーモアたっぷりに綴られています。

とにかく、面白い、エンタメたっぷりで、円花の自由奔放にかき回されながら、それでも何故か、取材先の人びととからは、気に入られてしまう。
五話とエピローグの短篇連作物語です。
新聞社の悲哀もテーマにあり、円花と山田の過去のトラウマあり、人間模様も巧みに紡ぎ出されていてホロリともさせてくれます。
読みごたえのある作品でした。

[Lillyさんの感想 · 2022年11月10日]

自由奔放、ちょい非常識めな雨柳円花とコンビを組まされ、土着文化の魅力に迫る「ジャポニスム謎調査」の記事を書くことになった山田。
高名な文化人の孫である円花は、幼い頃から各地の民芸品などに触れてきただけあって、取材先であふれ出る土着文化への愛と知識がすごい。
硯、大津絵、漱石（ガラス乾板）、灯台、円空（仏）をめぐる取材旅行。

歴史的背景から土地の名物まで
いろいろな蘊蓄が語られておもしろかった！

[更さんの感想 · 2024年3月18日]

　日本美術や工芸品の由来や秘密を解き明かす、アート系お仕事小説の連作短編集。
　大手新聞社の文化部に籍を置く、生真面目だけれど杓子定規の先輩記者・山田と、天真爛漫で自由奔放な後輩女性・円花が組んで、日本の伝統文化を紹介した記事を書くべく、各地で取材を敢行しては、珍道中を繰り広げる。
　表題のように謎解き要素のテイストは薄いが、凸凹コンビが全国を旅して美術と地元名物を堪能し、コミカルな掛け合いを見せながら成長し、知識欲と探求心を満たしてくれるロードムービーの趣向もある。
　雄勝硯、大津絵、漱石の写真、神子元島灯台、円空仏と、少々マイナーな題材が並ぶが、適度な蘊蓄に加え、歴史の掘り下げとスポットの当て方が巧みで、最後まで飽きずに楽しめる一冊。

[本読み好きわんさんの感想 · 2022年8月13日]

こまったちゃんの円花に振り回される山田が面白い。続きが気になります！

著者プロフィール

1988年、京都府生まれ。東京藝術大学美術学部芸術学科卒。香港中文大学大学院修了。2015年、『神の値段』で第14回『このミステリーがすごい！』大賞を受賞して作家デビューを果たす。主な著書に『ピカソになれない私たち』、『コンサバター 大英博物館の天才修復士』からつづく「コンサバター」シリーズ、『飛石を渡れば』など。近著に『カンヴァスの恋人たち』がある。

「2023年 『光をえがく人』 で使われていた紹介文から引用しています。」