犬がいた季節 (双葉文庫 い 64-01)

著者 :
  • 双葉社
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感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575527179

作品紹介・あらすじ

1988年夏の終わりのある日、高校に迷い込んだ一匹の白い子犬。「コーシロー」と名付けられ、以来、生徒とともに学校生活を送ってゆく。初年度に卒業していった、ある優しい少女の面影をずっと胸に秘めながら…。昭和から平成、そして令和へと続く時代を背景に、コーシローが見つめ続けた18歳の逡巡や決意を、瑞々しく描く。山本周五郎賞候補、2021年本屋大賞第3位に輝いた青春小説の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 綺麗なだけじゃなくて、痛みも書かれている。
    でもとても優しくて好き。

  • 感動した。
    高校生の頃のキラキラした甘酸っぱい思い出と犬の愛くるしさを両方味わえた。
    迷った時に戻る場所は自分も高校時代。多感な時を仲間と共に過ごした時代は色濃く残っている。同じ3年間でも、今の3年間とは密度が違う。犬にとっての3年間もまた違った密度の濃さなのだろう。
    第5話で泣いて、さらに最終話でも泣いた。
    おもしろかった。

  • 読み応えがありました!
    年度は違っても、どこかで繋がっていて、時の流れを感じながら読み進めることが出来ました!

  • 背景は昭和の終わりから平成に入り、令和で締めくくる。

    高等学校での青春物語。

    ある日、白い子犬が高校に迷い込む。
    その犬と、三年間過ごす学生が世代交代しつつ思い出を紡いで行く。

    各章、もちろん舞台が同じなので学校の先生や在校生、卒業生が主な登場人物。

    それぞれの章が関連していて最終章「犬がいた季節」に繋がる。

    青春物語なのでちょっと自分には青臭く感じたりしてしまうのかなと思ってたがそんな心配は無用に終わった。

    恋愛はもちろん、家庭事情、金の話や妬み、死について。
    清々しい友情だったり、いきなり援交などの話題があったり。

    なかなか思い通りにはいかないもどかしさやほろ苦さが、自信の学生時代を思い出したりださなかったり。

    ちょうどよいバランス具合にリアルな感じがよかった作品でした。


    久しぶりにこのジャンルを読んで読後感も良かった。☆5にしたいと思います。

  • こんなに青春を感じる本は久しぶりだった。
    青春って学生の時は自覚してなかったのに、年を重ねるほどもう戻れないからこそ羨ましくて切なくって、素晴らしい時間だったんだなって感じる。
    卒業生を優しく見送り続けるコーシローにあったかい気持ちになるし、将来への不安や家族の問題に向き合って進んでいく登場人物たちの姿にぐっとくるお話しでした。

  • いや~、いい本でした!
    今年のベスト3に入りそうな予感がするぐらい。

    しみじみ、しみじみ、優しくしみ込んでくるような感じでした。
    この本を読みながら
    私が最初に読んだ伊吹さんの作品『風待ちの人』を思い出していました。
    この本は大人の恋愛小説という感じですが
    激しさよりも凪いだ風が包んでくれるような感じでした。
    『犬がいた季節』では
    18歳で未来への一歩を踏み出すために決断を下す高校3年生たちを通して
    高校3年生って、未来への希望だけでなく、否が応でもどちらかを選ばなければならない季節だったんだ、
    甘酸っぱかったり、苦かったり、そんな気持ちもひっくるめて
    進んでいかなければならない季節だっただとつくづく思いました。
    進んでいく道が前だけではないことも、自分が望む道ではないこともあるけれど
    若さは少しだけ背中を押してくれる。
    そんな気持ちになりました。

    実はこの作品にはモデルとなった高校があります。
    著者の伊吹さんの母校でもある三重県立四日市高校。
    幸四郎と名付けられた犬は
    昭和49年から昭和60年までその高校で暮らしていたそうです。
    小説の中の「コーシロー」が「幸四郎」として
    高校生たちと過ごしていたことを知って驚き、感動が増しました。

    そして、この本の文庫解説をされている書店員さんは
    なんと幸四郎と3年間を過ごされた方でした!
    文庫解説の中で
    「まるでなんだか見ていたようですね、と言われたら、待ってました!
    全世界に書店員多しといえども、リアルに幸四郎と三年間を過ごした人はそんなに多くないはず」
    この文章とともにその”興奮”が伝わってくる勢いを感じました(笑)

    著者伊吹有喜さんのインタビュー動画。

    https://www.youtube.com/watch?v=K8U7ye9dtxc

    この中の伊吹さんの言葉にまたしみじみ、しみじみ。
    「私たちは平成も、世代によっては昭和も
    そして、20世紀の終わりの混乱も
    すべて超えてここまで来ました
    そして、これからも超えていきます。
    この「犬がいた季節」は変わっていく時代の中でも
    変わらないものを描いた作品です。
    それは希望。
    言い換えれば勇気。
    前へ進む勇気の物語です。」
    (双葉社総合チャンネルより引用)

    味わいながらゆっくりゆっくり読むつもりが2日で読了。
    読み終えてしまったときには「終わってしまった…」
    寂しさがひしひし。
    でも、感動がじわじわ、じわじわ。

    『犬がいた季節』は2021年度の本屋大賞第3位。
    えっ⁉ この本が3位⁉ と思ったら
    第1位が町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』
    第2位が青山美智子さんの『お探し物は図書室まで』
    ちなみに私はどちらも大好きな作品で☆5をつけています。
    この年の本屋大賞ってすごかったんだ、と改めて…

  • 私の中ではちょっぴりブームな作者さん。今度は2021年本屋大賞第3位のこの本。
    ある日、高校に迷い込んできた一匹の子犬。ある生徒の名前をとって「コーシロー」と名付けられたその白い犬は、入学しては卒業していく生徒たちとともに学校での生活を送っていく。

    昭和から平成に続く時代を背景に、コーシローが見つめ続けた、高校生たちの恋や友情、迷いや決意、秘められた思慕やお互いの秘密などが描かれるが、どの話にもその年頃に特有の心情が露わにされ、切なかったりほろ苦かったり甘酸っぱかったり、高校生の頃に戻ったような気持ちになった。
    『ただ、何もかも……もっと自分が大人だったらと思うよ』という光司郎の言葉には、口に出せない想いへのもどかしさがたっぷりで切ない。(第1話)
    学校生活では全く接点がなかった堀田と相羽がF1を通じてつながる様は、その年頃でしかできない無鉄砲さで、なんだか懐かしい。(第2話)
    災厄と身近な人の死に効率が悪い生き方を選んだ奈津子(第3話)や、それぞれのロッカーの秘密を共有する鷲尾と詩乃(第4話)の姿にも好ましいものを感じた。

    12年間高校で暮らしたコーシローが教師となって母校に戻って来た優花の膝の上で、花々にお菓子のように甘く優しい色がついているのを見る終章の場面にじんとする。
    最終話、母校の創立100周年の式典に集まった登場人物たちの卒業後の姿に、それぞれがかつての思いを胸にしっかり生きてきたことが知れ、とても温かい気持ちになった。

    • マメムさん
      初コメです。
      最後の式典まで伏線と青春が詰まった素敵な作品ですよね^_^
      伊吹有喜さんの作品は『犬がいた季節』だけ読了なので他の作品でオスス...
      初コメです。
      最後の式典まで伏線と青春が詰まった素敵な作品ですよね^_^
      伊吹有喜さんの作品は『犬がいた季節』だけ読了なので他の作品でオススメがあれば、教えて頂けると嬉しいです♪
      2024/05/03
    • ニセ人事課長さん
      マメムさん
      コメントありがとうございます。
      この作者さん、ずっと前に読んだ「ミッドナイト・バス」も良かったのですが、最近のマイブームは「...
      マメムさん
      コメントありがとうございます。
      この作者さん、ずっと前に読んだ「ミッドナイト・バス」も良かったのですが、最近のマイブームは「雲を紡ぐ」で火がついて、「なでし子物語」で燃え上がりました。
      この前読んだ「四十九日のレシピ」も良かったです。
      次はこの本の解説の書店員さんが推されていた「彼方の友へ」を読もうと思っています。
      2024/05/04
    • マメムさん
      ニセ人事課長さん、お返事ありがとうございます。
      色々とご紹介ありがとうございます。『雲を紡ぐ』は話題作でしたね♪
      『なでし子物語』はシリーズ...
      ニセ人事課長さん、お返事ありがとうございます。
      色々とご紹介ありがとうございます。『雲を紡ぐ』は話題作でしたね♪
      『なでし子物語』はシリーズ作品みたいですが、あらすじが気になったので読んでみようと思います!!
      『彼方の友へ』のレビューも楽しみにしています^_^
      2024/05/04
  • ひょんなことから学校で飼われることになった捨て犬のコーシーロー。生徒たちと出会いと別れを繰り返していく十二年の連作短編。
    私はパパ活の女の子の話が好きだったな。
    どの主人公も思春期であり、人生の帰路にあるからこそ思い悩むし、その最中も呑気なコーシーローが密かに彼らのキューピット的役割を果たしていてほっこり。
    その後の話はじんわり良かったとなりました。

  • ある高校で暮らすことになった犬と、その犬とともに青春時代を過ごした高校生たちの物語を描く短編集。

    恋愛、友情、家族など、各短編で描かれる物語は様々だが、どの物語にも必ず「別れ」がある。しかし、「別れ」がただ寂しいものではなく、新しい扉を開くためのものとして描かれており、どの短編も読後感が爽やかである。

    ラストは高校の百周年記念で登場人物のその後が判明するが、各々が充実した人生を過ごしてきたのだろうと想像できる。もちろん、書かれていないだけで辛い時間もたくさんあるには違いないが、母校に集い、もう二度と会わないと思っていた仲間と再会することで、その辛い時間を忘れられる。目立つ人間、目立たない人間。思春期にはとても気になることであるが、どんな人間にも必ず「仲間」がいるのである。

    展開が少し早いと思う短編もあったが、爽やかな読後感のおかげでそれほど気にならなかった。犬、コーシロー視点での匂いの描写は、犬だからこそリアルであり、人間視点であれば少しクサくなったかもしれない。昭和の終わりから令和までの物語であり、コーシローも最後にはいないが、「動物が死ぬ」という事象で涙を流させるような物語ではないことも、個人的には良かった。

    昭和の終わりに青春時代を過ごした人であれば、「ああ、そんなことあったな」とより物語を楽しめるのではないか。

  • この本を読むと、平成の時代、自分は何をしていたのか、どんな曲がヒットしていたのか、様々な出来事を、懐かしく振り返ることができます。

    昭和63年、昭和最後の年、三重県の高校に捨てられた一匹の子犬。コーシローと名付けられ、高校生たちによって、大事に育てられます。卒業していく生徒に引き続いて、次の生徒が、バトンタッチのように面倒を見ていく。桜の咲く時期は、別れの時期。今まで面倒を見ていた人が、いなくなってしまう。コーシローも、徐々にそのことが、わかってきます。とても切ないです。

    ここに出てくる高校生は、みんなパワフルです。受験勉強はもちろん、将来の事を真剣に考える。好きな事に、全力でのめり込む。でも、好きな人の前では、臆病になってしまう。迷いながら、傷つきながらも、前へ力強く進む姿は、こちらも勇気づけられます。

    精一杯生きることを、改めて教えられ、また、あたたかい気持ちになれる一冊です。

    • マメムさん
      初コメです。
      時代ごとに振り返れば、色んな想い出が浮かんでくる作品ですよね^_^
      いつか振り返った時に「コロナ禍」とかあったねぇ〜と良くも悪...
      初コメです。
      時代ごとに振り返れば、色んな想い出が浮かんでくる作品ですよね^_^
      いつか振り返った時に「コロナ禍」とかあったねぇ〜と良くも悪くも想い出になるのでしょうね♪
      2024/04/22
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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒。出版社勤務を経て、2008年「風待ちのひと」(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)でポプラ社小説大賞・特別賞を受賞してデビュー。第二作『四十九日のレシピ』が大きな話題となり、テレビドラマ・映画化。『ミッドナイト・バス』が第27回山本周五郎賞、第151回直木三十五賞候補になる。このほかの作品に『なでし子物語』『Bar追分』『今はちょっと、ついてないだけ』『カンパニー』など。あたたかな眼差しと、映像がありありと浮かぶような描写力で多くのファンを持つ。

「2020年 『文庫 彼方の友へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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