日本推理作家協会賞受賞作全集 8 (双葉文庫 な 14-1)

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  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575658071

感想・レビュー・書評

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  • アンソロジー作品『日本推理作家協会賞受賞作全集 (8)』を読みました。
    ここのところ、国内の作家の作品が続いています。

    -----story-------------
    権謀術数の渦巻く日中戦争末期の中国大陸を舞台にした「売国奴」。
    農村の風土や住民の描写が独特のムードを醸しだす「狐の鶏」、新聞記者明石が係った犯罪を通してユニークで複雑な女性心理を描く「笛吹けば人が死ぬ」。
    三人の作者の持ち味が生きる短篇集。
    -----------------------

    1955年(昭和30年)から1958年(昭和33年)の間に日本推理作家協会賞の短篇賞を受賞した以下の3篇が収録されています。

     ■売国奴(永瀬三吾)
     ■狐の鶏(日影丈吉)
     ■笛吹けば人が死ぬ(角田喜久雄)
     ■解説 山村正夫

    雰囲気が陰鬱なのですが……イチバン印象に残ったのは永瀬三吾の『狐の鶏』ですね。

    戦地で流行性脳脊髄膜炎にかかって以来、自分の言動に漠然とした不安を持ち、いつ発狂するかと脅えていた男・柄葉真次……一緒に働いていた妻・望が疎林の中で殺され、それが夢で見た場所は凶器(斧)と一致したことから、真次は自らが記憶の無い状態で望を殺してしまったのではないかと思い込み、死体を隠してしまうという展開、、、

    主人公の思い込みによる恐怖が、主人公の弱い立場と農村特有の閉鎖的な社会の描写の克明さによってより際立ってくるんですよね……義姉の死の真相と結末とは!?この余韻が残るエンディングが特に印象に残りました。

    戦時中の天津を舞台にした永瀬三吾のスパイ小説『売国奴』、

    新聞記者の良輔と警視庁の岡田警部が、容疑者の義妹で花売りの少女・三井絵奈から完全犯罪論を吹きかけられる角田喜久雄の『笛吹けば人が死ぬ』、

    は、まずまずだったかなー 派手さがないせいか、読後の印象は強くなかったけど、少し経ってから面白さが感じられる……そんな作品でした。

  • 実に秀逸な作品集です。
    3つの実に濃厚な作品が掲載されています。
    どの作品も非常に良作で甲乙つけがたいのではありますが
    優れた作品はやはり「狐の鶏」でしょう。

    これは閉鎖的な集落で起きる
    事件なのですが、そういう地方だからこそ起こる
    悲しい風習が出てきます。
    それがこの作品の主人公の男。
    実に悲しく映ることでしょう。

    あとの2作品も
    短編ながら濃い作品でした。

  • (収録作品)売国奴(永瀬三吾)(日本探偵作家クラブ賞(1955/8回))/狐の鶏(日影丈吉)(日本探偵作家クラブ賞(1956/9回))/笛吹けば人が死ぬ(角田喜久雄)(日本探偵作家クラブ賞(1958/11回))

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