- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784576041896
感想・レビュー・書評
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『着物の国のはてな』の参考文献になかったものの、良い復習になった。
宇野さんご自身「自分は専門家ではなく、好きが高じて着物デザイナーになった」と仰っていたが、『着物の国のはてな』に比べるとこちらの方がマニアック。(着物自体は好きなので、色々画像検索しながら読み切った)
手作りでも楽しめる着物ファッションがテーマの一つなので、着物やお裁縫が好きな方は興味をそそられるところがあるかも。
「私のきものをデザインする流儀は、日本本来の伝統を大切にして、その古いものを十二分に咀嚼し、受け継いで、新しい感覚にほんやくして再現するーそういう形式が大好きです」
「大正から昭和初期は日本人のおしゃれがもっとも成熟していた時期」と『着物の国のはてな』にあった。よってその頃のお話を期待していたが、実際は彼女のキャリアやコレクションで出展した作品・着物をもっと身近に楽しむテク等が紹介されていて、雑誌のコラムっぽかった。
それもそのはず、本書は「日本ファッション誌の先駆けともいえる『スタイル』誌の増刊号『きもの読本』に収録された随筆」だと、あとがきで知る。
それまで写真や図説のタッチ等昭和レトロな箇所はあったものの、「本書の刊行年(2004年)前後に書かれた文章かな」と勘違いするほど、古めかしさを感じさせない話が続いていた。
随筆家で着物デザイナーの二足の草鞋を履かれていた宇野さんは、「どちらも好きで続けてきた」と本文で断言されている。
「好き」の力は凄い。前述したように着物好きが高じてデザイナーとなり、自身の名を冠した「きもの研究所」やお店まで出された。デザインした着物は海外のショーでも披露されている。
それらの絢爛たる様子や、着物が身体の一部みたいに馴染んでいる宇野さんポートレート、「お洒落になりたいなら黙って私の着物を着なさい」と聞こえてきそうな表紙の(美しき!)ドヤ顔…。
創ることへの自信はあながち間違いでないようだが、着物に対しては決して傲慢な態度は取らない。プロの方や歴史から学び、リスペクトの念と自身が表したい世界観を上手く調合させている感じだ。
ウィリアム・モリスを彷彿とさせる草木の模様、元禄時代をヒントに細帯コーデを編み出したりと、海外にも親しまれるようなデザインも強みである。「着物ウェディングドレス」みたいなぶっ飛び型もあるけど、迎合している訳ではない。
全ては、着物から遠ざかっている世代にも気軽に着てもらえたら…という想い一筋なのだ。
着物本2冊を読んできて一番驚いているのが、着物で飛行機に搭乗しそのまま現地で過ごすというエピソード。『着物の国のはてな』で知ったすなおさん(着付け師YouTuber)は先日東南アジアで、宇野さんはパリで実行された。
「それくらい”日本の服”をどんどん持ち出して楽しんじゃえば良いのだ」というマインドが伝わってくる。今からその究極体を目指すのには無理があるが、自分に合った着物スタイルに身を包み、晴れやかなドヤ顔で闊歩したいものだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
新しいということは古いこと、古いということは新しい。
このコトバがまさにぴったりくる内容だった。千代さんの感覚にまだ今の時代は追いついてないとさえ思う。
折に触れて読み返したい。 -
基礎があってそれを崩すのと、元もあったもんじゃないのとでは全く別もの。
当たりまえのものがない哀しさと寂しさ。 -
資料番号:010859767
請求記号: 593.8/ウ -
今週末から始まる着物を縫う会、参加者の一人はお気に入りのアフリカの布で縫うのだそうだ。考えてもみなかった!!色々な人が集まると色々な考えがでてきて本当に面白い。私はお気に入りのタイ名物黒檀染めの布を縫う。ゆくゆくは宇野千代さんのように自分で、お母さんが縫った着物ファッションショーができるのでは?どんどん夢が広がる。
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昭和20年代~30年代に書かれたものがほとんどらしいけれど、内容に古さを感じない。
逆に言えば、宇野千代さんの感覚やっと今頃世間が追いついたということかな?
大女優さんの若かりし頃の写真もモノクロだけど新鮮! -
男性ですが着物大好き人間の私自分のアンサンブルも持っている。面白かった。
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ページの中に大好きな高峰秀子の
着物写真があったので手にとった。
おしゃれとはお金ではなく、手をかけることなんやね。 -
お洒落は値段と比例しないと言う事を気づかせてくれた一冊。お洒落とは気概・・・なのかもしれないと思いました。宇野千代さんのデザインした着物やエッセイを見てゆくと、着物と洋服の敷居が低くなった気がします。着物って・・・と一歩引いてしまう方、読んでみたら面白いかもしれません。
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長寿で桜好きで恋多き女性、という印象しかなかったのだが、この本に現れている彼女の「常識や型に囚われず、今にあった着物の楽しみ方の提案」に共感。知識を持つ事と囚われて不自由になることは別だ。現代で着物を着るときにつきまとう「常識」問題へのひとつの答えだと思う。