私はだんだん氷になった

著者 :
  • 二見書房
3.28
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本棚登録 : 596
感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784576221465

作品紹介・あらすじ

――この小説は私の黒歴史であり、これからの黒歴史になるだろう。
少女の心を繊細に描く著者が描き出す、辛い現実を生きられなかった少女たちが、誰にも言えない恋をしたがゆえに、幾つもの罪と懺悔を重ねていった――禁断の黒歴史ミステリ。
美しい少女・氷織の父である、有名登山家の信春はエベレスト登頂間際で猛吹雪に巻き込まれ凍死した。愛する父を失ったショックで声を失った氷織は心を閉ざし、学校では居場所を失い、やがて母の再婚相手である義父から性的虐待を受けるようになる。
氷織の唯一の生きる糧はアイドル「四宮炭也」の推し活だけになっていった。しかし、SNSで感染病流行によってライブが中止になったことを嘆くと、不謹慎だと大炎上してしまう。批難と擁護のDMが相次ぐ中、ある一件のメッセージを開いたとき、氷織の心臓は跳ねた。それは密かに憧れていた炭也の【なりきり】からだったからだ。以降、二人は文字上で逢瀬を繰り返すようになり、やがて氷織は顔も見たことのない相手に、依存するほどの恋に落ちていくが……。それはすべての悲劇のはじまりだった。

感想・レビュー・書評

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  • 「みんな蛍を〜」から読んだ方がいいと聞いていたけど、その通りでした。読んでなくても支障はないけれど、世界観が繋がってます。

    黒歴史すぎて(あとはオタク文化の専門用語多すぎて)、読むのがしんどすぎました。
    が、ラストは良かった。

    読み終わってここの感想を読むまで全く気づかなかったのですが、登場人物に某国民的アイドルグループをなぞってるらしく、どんな扱われ方であれファンとしては嫌な気持ちになるんじゃないかな。

  • ネットで恋愛、背後や推し、ちょっと入っていけない世界

  • ネットで誰かに恋をしたり、言葉や妄想だけでドキドキしたりそんな夢みたいなことが現実になるって幸せな事のはずなのに、そうじゃないなって思い直した本だった。姿や顔が見えないって、正体が分からないって怖いなって。でもその一方でそういう人を愛することのできる純粋な心を持つのも幸せだったりするんだろうとも思えた物語だった。
    視点がよく変わるので理解が難しいところも多かった。

  • なりきり、推し、Vチューバー、若いというかはじめて読む感じの雰囲気で最初とまどった。
    おもしろかったんだけど、なんか全体的に暗くてちょっと病む。

  • 私は四宮炭也さんのモデルと思しき人物の長年のファンでもあるので、作中の出来事はほぼ事実に沿って、一部脚色されて書かれていることがわかる。(涙をふいての主演は江口洋介だが)内容的には好きじゃないけど、彼のファンなので最後までなんとか読みましたよ。これガチで作者の黒歴史なんじゃないかと思う。涙をふいてで彼女役だった女優とのスキャンダルだとか、生涯何があっても愛する人への一幕だとか、現在の奥様のことだとか、いろいろ受け止められなかったのかなぁと。だからこれを書いて昇華したのかなぁとか。M本さんO野さんA葉さんのお名前も嫌な感じに使われててなんだかな。(唯一S井さんだけはいい書かれ方かも)ちなみに出てくる犬の名前「ハル」、これも彼の昔の愛犬のお名前です。こじらせガチ恋オタクの末路って感じですね。いろいろとしんどい読み物だった。

  • 全体的に今っぽい小説。
    推しとオタク、なりきり、炎上、Vtuber、コロナ……。

    現実に限りなく近いフィクションって感じ。

    主人公の推しのモデルが誰なのかすぐわかるので、最初の方は彼の顔がチラチラ脳裏に浮かんで集中できなかった。
    嫁の話とかまんまじゃねーか!

    内容としては重い。本当に重い。
    そして全員死ぬ。(語弊あり)
    それも含めて今っぽい作品だなーと思った。

  • こちらも一気読み。
    前作「みんな蛍を殺したかった」よりも、更に、濃くて暗い病みな話しだった。
    他人から愛される為の、黒歴史。
    文字だけの、なりきりの、恋愛。
    運命と絡まって知る、現実。
    展開と繋がりに読み応えがあった。

  • 心の奥底に隠していた少女達の闇を暴き出す黒歴史ミステリ。

    これは相当エグい。

    主人公は容姿端麗な女子高生・絢城氷織。
    名の知れた登山家だった最愛の父が遭難死した事で彼女の人生の歯車が狂い出す。

    転入した高校での壮絶なイジメ、母の再婚相手からの性的虐待。

    唯一の生き甲斐はアイドル・炭也の推し活だったが、コロナウイルス拡大によりライブは中止。
    それを機にSNSで炭也の「なりきり」との交流が始まる。

    もう危険な香りしかしないがネットの中に救いを求め彷徨う彼女達から目が離せない。

    SNS全盛時代の今、リアルにありそうで恐ろしい。


  • 一時の生を分かち合った主人公と彼女たちが
    ハマった虚構世界と現実世界の黒歴史の物語。

    悲観や絶望、無力感から避難するために
    何を縁にするは人それぞれ違うだろうし、
    その時々の時世に大きく左右されるだろうけど、
    人の体温を直に感じる対面の繋がりではなく
    映像や音声、もしくは文字を通して生まれる
    架空世界がとてもリアルになっていて、その
    境界線の危うさを覗き見た感じがしました。

    ーーー
    主人公である氷織の家族設定は、
    小説という点もあって非常に極端に思えたけど、
    家庭で役割を演し、集団の中で疎外感を感じ、
    嘲りの声を日々耳にすることで自分の存在意味を
    感じなくなったり、自己を透明化して過ごす
    主人公の苦悩や心情に胸が痛みます。

    家族、友人、趣味、SNS、その他いろいろな
    ものにバランスよくエネルギーを分散させて、
    感情発散の場を持てたなら、主人公に限らず
    生死が介在する黒歴史にならずにすんだのか?
    と想像すると、自分と相手の両方のベクトルに
    人との距離感の難しさを感じてしまい、
    思い悩まずにはいられませんでした。

  • 登山家の父の遭難死、心を閉ざした氷織に降りかかる、いじめ、虐待。安らぎは推しアイドルのなりきりとのメッセージの交歓だけだったが―。(e-honより)

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著者プロフィール

チレン(きな・ちれん)
京都府出身。大学在学中に応募した短編小説「溶けたらしぼんだ。」で、新潮社「第9回女による女のためのR-18文学賞」優秀賞を受賞。美しい少女の失恋と成長を描いた『静電気と、未夜子の無意識。』(幻冬舎)でデビュー。その後、少女の心の機微を大切に、多岐にわたるジャンルで執筆し、作品表現の幅を広げる。近著に、引きこもりの少女の部屋と京都が舞台の恋愛ミステリ『これは花子による花子の為の花物語』(宝島社)がある。黒歴史と少女の淀みを描いたミステリ小説『みんな蛍を殺したかった』に続くのが、本作『私はだんだん氷になった』である。

「2022年 『私はだんだん氷になった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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