だってだってのおばあさん (フレーベルのえほん 3)

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  • フレーベル館
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  • Amazon.co.jp ・本 (31ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784577003039

感想・レビュー・書評

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  • 表紙の「おばあさん」の右に立つ男の子、実は「ねこ」です(可愛いでしょ)。

    というわけで、いつもの図書館から借りてきた、『猫の日』絵本の第三弾ですが、まるでお孫さんのように、似合いの二人といった感じに見えますよね。

    しかし、年齢差もあることから、ねこの大好きな魚釣りに、おばあさんは一緒に付き合ってくれません。

    『だって わたしは 98だもの、98の おばあさんが さかなつりを したら にあわないわ』

    う~ん、確かにそうかもと思うけれど、内心、ねこは、おばあさんと一緒に行きたいんだろうなという雰囲気を感じさせつつ、それでも、ねこは元気に出かけていきます。

    そして、おばあさんは、その代わりに何をするのかといえば、窓の下の椅子に座って、畑で取れた豆の皮をむいたり、お昼寝をしたりと、う~ん、確かにそうかも。

    『だって わたしは 98だもの』

    しかし、このままで終わらないのが、佐野洋子さんの絵本の素敵なところで、この後、おばあさんは、自ら99歳の誕生日ケーキを作り、ねこに99本のろうそくを買ってきてもらいますが(ろうそくを数えなくっちゃ本当のお誕生日じゃないもの)、おばあさんのために急ぎすぎたのか、途中でろうそくを川に落としてしまい、持ち帰ってきたのは、たったの5本でした。

    ねこは悲しさのあまり、大きな声で泣いてしまいますが、おばあさんは5本でも無いよりましさと、それらをケーキに立てて、灯りを消して、ろうそくに火をつけて・・と、改めて気を取り直しての、お誕生日会の始まりです。

    「おばあちゃん、かぞえて」

    「1つ 2つ 3つ 4つ 5つ。ろうそくを かぞえると、ほんとうに おたんじょうびの きぶんに なるわ」

    もう一回、数えてみると

    「1さい 2さい 3さい 4さい 5さい。5さいの おたんじょうび おめでとう」

    「おばあちゃん ほんとに 5さい?」

    「そうよ、だって ちゃんと ろうそくが 5ほん あるもの。ことし わたし 5さいに なったのよ」

    「ぼくとおんなじ!」

    そして、その後のケーキを食べる二人の嬉しそうな顔といったら、見ている私まで幸せになるような、ころころした微笑ましさが印象的でした。

    えっ、そこじゃない?
    ツッコミどころが他にあるでしょって?
    いやいや、私からしたら、なんて素敵なおばあちゃんなんだろうって、思いましたけどね。

    そう、この部分の展開については、思っていた以上に深いものを感じさせられました。

    まずひとつは、おばあさんがねこの為に、こう言っているのではとないかということで、ねこの失敗を上手くフォローしつつ、いつもの元気なねこに戻って欲しくて、敢えて、おとぎ話風に演じてみせる、おばあさんの粋でおしゃれなところ。

    もうひとつは、お年を召されるにつれて、人は子どもに帰っていくような、そんな無邪気で愛らしい、おばあさんの一面があるように、ここでも、おばあさんの素の反応によって、ねこの喜ぶ共通性が偶然見出されたことで、こちらは、ねこにとって、奇蹟と思える程の嬉しさだったことでしょう。

    ということで、いずれにしても、ねこが大喜びする展開となり、この絵本は、おばあさんとねこの距離が更に縮まる、まさに猫の日のチョイスにふさわしい、ねこにとっての幸せを実感させられる物語でした・・・が、実はこれでまだ終わらず、もっと凄かったのは、この後のおばあさんでした。


    次の日の朝、ねこは、再び魚釣りにおばあさんを誘います。

    「おばあちゃんも おいでよ」

    「だって わたしは 5さいだもの……、あら そうね! 5さいだから さかなつりに いくわ」

    そうなんです。もう、この後の説明は要りませんよね? この後は、これまでの素敵なおばあさんとは、また違った、更に素敵なおばあさんを何度も見ることが出来て、まるで、上記のねこの台詞の、「ぼくとおんなじ!」そのものであり、これは、5才という年齢の素晴らしさを表しているようでもあるし、おばあさんと子どもが仲良くなれるのは、たとえ目には見えなくとも、何か共通した雰囲気をお互いに感じられるのではないかとも思えましたし、何より、これまで長い道のりを歩まれてきた、お年を召された方々に、大きな勇気と喜びを与えてくれるのではと強く感じまして(要は考え方次第で、思い込みでもオーケー!)、そこにあるのは、おそらく佐野さん自身の、彼らへの尊敬の念があるからこそ、ユーモラスながら心に響くものを感じられたのだと、思っております。


    実は私の職場において、本書の年齢にこそ及ばないものの、80代半ばのおばあさんがいらっしゃって、もう二年近くのお付き合いになりますが、少し耳が遠いことを別にすれば、とても快活で愛嬌のある、キュートなおばあさんで、毎日、自転車で通勤してきて、元気に働いて下さってます。

    そのおばあさんと、初めて心を通わせた印象的なエピソードは、私が彼女に初めて仕事を教える事になった時でして、たまたま人員配置を変更しなければいけなかったのですが、まだまだ入ったばかりのひよっこの私が、この道30年以上になる、大先輩に教えられるのかなんて、とても不安な気持ちを抱えていました。

    そして、そんな悶々と一人考えていた時に、後ろから私の服の裾をくいくいと引っ張られる感覚がありまして、後ろを振り向いたら、そのおばあさんが「あなたが~さんね?」と、苗字を尋ねられた事にびっくりして、おそらく前日に、誰かから私の名前を聞いていて、それを忘れずに言って下さったのが嬉しかったですし、しかもその聞き方がごくごく普通の世間話のような感じだったから、私も可笑しくって、「そうです。こちらこそ、よろしくお願いいたします」と言ったら、「えっ!?」となり、そうだ、耳が聞こえづらいんだったと、耳の側に近寄って、もう一度大きな声でゆっくりと同じ事を言ったことが、もう遠い昔の出来事のように感じられるくらい、懐かしいです。

    そして、それ以来、気さくに話したり、話しかけられたりと、誰に対しても人懐っこいことに加えて、とにかく好奇心が旺盛で、見るもの感じるものが、今でも新鮮に映ってるのだろうなと思わせる、その初々しさは、見ていて時折、ハッとさせられるものもあって・・私の職場は、社員もパートさんも同じ場所で昼休憩をすることが出来るのですが、そこでも彼女の天真爛漫な話しぶりは印象的というか、少し離れて聞いていると、思わず何回もぷっと吹き出してしまい、その純粋さが面白く、それが可愛く思われて、つい、何か言ってあげたくなる魅力があるんですよね。


    少し話が長くなってしまいましたが、この絵本の中の、更に素敵になったおばあさんを見ていて、何となく、私の職場のおばあさんと似ているなと思った事で、あながち、ここに書かれている事は、奇蹟のひと言で片付けられる話では無くて、実は、現実にも起こりうるのかもしれないと思うと、いくつになっても、人はキラキラと輝ける素敵な道があることを教えてくれたようで、これから先も、生きていくのが楽しみになりました。

  • おばあさんと猫の、ほっこりした二人暮らしのお話です。「だって わたしは ◯◯だもの」が口癖のおばあさん。いかにも昔の(それも躾の良い)女性という感じですが、「だって…」と前置きしておいて、やらかしちゃう遊び心も持っていましたね。

  • だって私は98歳だもの
    が、口癖のおばあさん
    ねこが魚釣りに誘っても一緒には行きません
    おばあさんの99歳の誕生日
    ロウソクを買いにいったねこが泣きながら帰ってきました
    ロウソクを川に落としてしまい、手元にあるのは5本だけ
    ケーキにロウソクを立ててお祝いです
    1、2、3、4、5
    5歳!
    5歳になったおばあさんはなんだってできます
    だって5歳なんですもの

    読み聞かせ時間は8分弱です
    気の持ちようって大事よね

  • お誕生日のろうそくが5本だったので5歳。5歳のつもりで魚釣りにでかけるおばあちゃん。気持ち次第なのか元気で何より。

    C8771

  • なるほど、おばあさんが川をジャンプで飛び越えてたのは5歳までか。
    5歳で飛び越えられる運動神経は素敵だけど、それ以降は飛んだことがなかったのねえ。

    結構長いし、そんなに派手な話ではないから、つまらないかもなあと思いながら読み聞かせで読んでみたのですが、結構興味津々で聞いてくれました。

  • おばあちゃんとこどものやりとりがかわいい

  • 一人で生活しているおばあちゃん、頑張ってますね、作者のあとがきが、心温まるわ~

  • 絵がほんわかして、目を引きつける。作者のあとがきには、心が温まる。

  • 子どもの教科書に載っていて、読みながら大爆笑してしまいました。おばあさんが可愛すぎます。

  • おばあさんを言い訳に、猫とのお出かけもしぶっていた。でも出かけてみると楽しい!ケーキの心配をしている猫もかわいい。

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