- Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
- / ISBN・EAN: 9784580821880
作品紹介・あらすじ
受験勉強にはげむ蘭は、六月のある夕暮れ、塾のあるバス停を乗りすごし、町はずれの野原に来てしまう。海岸にあるはずの灯台が、広い野原の真ん中にそびえ、蘭を誘うように長い影をのばしている。「こんなところ、いつできたんだろう?」「気が遠くなるほど昔から、あったさ。」灯台守のおじいさんがともす、まばゆい光に包まれた蘭は、なぜか、住みなれた町がちがって見えはじめる。いつになくにぎやかな夜の町、やけにやさしい両親、夜にはじまる学校、白い顔をしたクラスメートたち…。みんなニセモノ?それとも、ニセモノはわたし?-。
感想・レビュー・書評
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[墨田区図書館]
新六年生の息子の課題図書にどうかと重松清さんあたりを探しに行ったが近隣図書館には一冊となく、背表紙から"それ系"と見込んで借りてきた数冊のうちの一冊。
この著者は意識したことがなく、名前もおそらく初めて見たが、背表紙で見つけて少し立ち読みしてみたらやはりそれ系。主人公が女の子だけれど、中学受験の大変さと親友による突然の受験宣言から生じた、疑問、葛藤、妬み、嫉み、、、自分を見つめ直す過程を、立場が逆となる異世界で描いている点はやや現実世界から離れるが、細かな出来事や設定から変化していく心情読み取りが生じる「完全現実モノ」よりも、主人公の心情は読みやすいかも。また、その後の「修復」については書かれず、異世界から現実に戻ったところで終わるので、そのくだりについての考察は要らない、もしくは勝手に「自分なら」を展開できる。恐らく高学年の読書感想文として扱いやすい物語。
この手の男児モノを探していたが、却って女子を主人公とした方が差異も出てネタとなり書きやすいかも、と一候補にしたが、結局この本は採用されず。でもいい意味で有名ではないはずなので、覚えておきたい素材かな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
優等生の蘭は、ある日、塾をさぼってしまい、町外れにある野原の中に立っている灯台を見つけて…。
昼の学校、夜の学校。立場が逆転した世界。
SFっぽい妖しさにドキリです。
いじめられる側ではなく、いじめる側の心と葛藤がえがかれていて、ひょっとしたら、登場人物に眉をひそめたくなるかもしれません。
でも、誰でも、心のほつれというか、沈んだ澱を持っているんですよね。
「相手の立場になって考える」
こんなに簡単そうで難しいことはありません。
蘭は、夜の学校の世界にきて、正に相手の立場になって考えはじめるのですが…人の心とか、つながりって、ホントに難しいですね。
著者の、この本を読む子どもたちを応援する気持ちが伝わってくるような気がしました。 -
世界が変わっていじめを受け、雫ちゃんの気持ちがわかって良かった。
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灯台の光による、自分の住んでいる世界と似ているようで似ていない世界に来てしまう蘭。その世界で蘭は、もう1人の自分に会います。そこの2人の蘭の会話がポイントです。
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あるはずのない灯台から、別の世界へ入ってしまった蘭。でも、そこは一見いつもの自分の世界と同じ。けれど、生活習慣もお父さんお母さんの様子も、そして教室の友達の様子も欄がいつもいる世界とは全く違うところだった。
そこで、蘭は自分が弱い立場になることで、今まで自分が友達にしてきたことを振り返る。
「友だちの気持ちになって考える」と先生にいわれても、実際は難しい。そこを感じるために作者はこの話を考えたのだという。
いじめや受験や離婚なんていう、現代の子どもたちが抱えているものを織り交ぜて、主人公の蘭がそれらに巻き込まれていくが、重い雰囲気にはならない。文字数もそんなに多くないので、さらりと読める感じです。
でも、一つ、パンチがなかったかなぁ。だから★は3つ。 -
児童書というか
道徳の教科書みたい。
求めていた感じではなかったけれど
いじめっ子たちに読んでもらいたい。
あ、いじめっこは本なんか読まないか・・。
そうなると、低学年のうちに
道徳の授業でやるとか~?? -
初心忘れるべからず。
自分の目標をどうしてそれにしたのか、それを達成するためにどうしようと思ってがんばっていたのかを忘れてしまうと、すべては苦行になってしまう。
お友達もどうして好きだったのか、嫌いになったのかを考えないと、「あいつが嫌なやつだから」で終わってしまう。
結び目の元は何なのかをほぐしてみて、はじめてわかることがたくさんあるんだろう。
「自分」って、自分の意思と周りの人でできているんだね。
蘭はどこでも自分としてやっていけると思っていたけど、夜の学校では自分が出せなくなってしまった。
それはもしかしたら自尊感情とか、自己肯定、というものかもしれないけど、相手を思いやる気持ち、も足りなかったんだよね。
自分が傷ついてはじめて相手を思いやることがわかる。けれど、そこで自己否定に走るのは違うことなのかもしれない。
雫と仲直りできるといいね。 -
6年生になってから、中学受験で塾で勉強の日々。家ではママが毎日勉強の話ばっかり、パパはそっけない。そんな日々に耐えきれなくなり、塾に向かうためのバスで、いつものバス停で降りずに終点まで行ってしまった。そこにあったのは「願いがかなう」という噂のある灯台だった…
パラレルワールドに行くことで元の世界の自分自身や友人の気持ちを見直す話。ちょっと綺麗過ぎる描写な気がしますが…「相手の気持ちを慮る」ことの大切さの伝わる物語。