ミクロコスモグラフィア マーク・ダイオンの[驚異の部屋]講義録

著者 :
  • 平凡社
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本棚登録 : 36
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582284447

作品紹介・あらすじ

伝統諸学のプリコラージュと、その先に望めるメタ博物館の地平。東京帝国大学の遺産が時空を超えて一堂に会する。「コレクション」のコレクションを経巡る、森羅万象のトリビア。いま、甦るミュージアムの原風景。

感想・レビュー・書評

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  • 展示の作品集のほうを持ってますがこっちはまだ持ってない。→つい最近入手。

  • 美学について語る。
    講義調で読みやすい。

  • 東京大学総合研究博物館教授の著者と
    現代アートをやってるマーク・ダイオンが
    コラボレートして行った展示会の内容を
    同博物館の工学ゼミ生に講義したものを
    本にまとめたものがこの本です。
    まるで芸大・美大の授業を受けてるかのような気分になりました。
    展示品もかなりの点数の写真が載っていて
    参照できる写真がある場合は
    ページ数の横に書いてあるのも親切。

    [驚異の部屋]というのは
    十六世紀から十七世紀に登場したミュージアムの原型で
    中世のお金持ちがありとあらゆるものを
    収集して集めた部屋のことらしいです。
    植物学者リンネが分類という考え方を作り出して以来
    近代の知はありとあらゆるものを分類し
    カテゴリーに当てはまらないものを
    黙殺することになったのですが
    [驚異の部屋]はリンネがそういった分類を作り出す以前のもので
    世界のあらゆるものを集めたある種の混沌であり
    それは合理的・合目的的な蒐集では見られない世界観であって
    本来のミュージアムとはそういうものだった。
    中世には「マルジナリア」という
    既存の枠組みに当てはまらないものを指す言葉があったんだけど
    プレ近代にあって近代に失われてしまった
    そういう間口の広さ・俯瞰する視点を
    取り戻そうとすることがこの展示の一つの目的のようです。
    この[驚異の部屋]っていうのは
    僕が目指している生き方のコンセプトに非常に近いので
    とても興味を持ちました。
    リンネの分類によって「知のアトム化」「知のナノ化」と呼ばれる
    あらゆるものの分類の細分化が進んでいるらしいのですが
    僕が世界のサブカルチャー化と呼んでいるそのものだし
    越境者願望と僕が言っているのは
    世界を俯瞰するようなすべてを包括する知であるわけです。
    近現代は知識や理性を根本とする
    主知主義と呼ばれる思想が基本となっているんだけど
    その結果、博物館や美術館にもたらされたのは
    展示物を見る前に解説を読んで
    内容を理解してからそれにそって鑑賞すること。
    作品を見て感じる原始的な感覚が失われてしまったんじゃないか。
    そういう思いから解説を省いた展示を行ったようです。
    どんなことでもそうなんだけど
    文字で伝えるよりも視覚的に伝えた方が
    効率がいいんですよね。
    だいたいのことは口で言うより見てもらった方が早い。
    雛型とか模型などを教育現場で使わなくなって久しいわけですが
    そういったものを使って視覚的に訴えることは
    教育に必要なことなんだってことも言ってますし
    僕もそれは非常に感じます。
    ちなみに展示物は東京大学の学術廃棄物が主なのですが
    それを展示する部屋に名前をつけて
    レイアウトしていくマークの手法は見事ですし
    アートとサイエンスの境界が時に曖昧になっていく感じは
    非常に見ていて楽しいです。
    椅子・机・標本・骨格標本・鉱石・
    化石・人体模型・建築模型・計測器具などを
    歴史的・学術的に解説していて
    一つ一つの深みに驚嘆しますし
    日本が西欧化する中で失ってしまった技術や
    西欧から学びきれなかった技術なんかを
    標本や剥製から解説しちゃうのなんて
    造詣の深さに感嘆します。
    西欧の封建的で支配的な美の意識と
    盆石のようなそのものに内在する美を見つけ出す感覚の違い
    なんてのもなかなか興味深かったです。
    アートもサイエンスも哲学・思想も歴史も包括的に語った
    この講義録自体がジャンルを越境した知の宝庫であり
    本の、活字の中に[驚異の部屋]を出現させているところに拍手を送りたいです。

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著者プロフィール

東京大学名誉教授/インターメディアテク顧問

「2023年 『ことばとかたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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