絵は語る (10) 彦根屏風-無言劇の演出-

著者 :
  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (115ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582295207

感想・レビュー・書評

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  • この彦根屏風図を観た時のことは忘れられない。この春東博で行われていた「名作誕生展」のほぼ最後の展示室で本当にすっと目に入ってきたのだ。人物はモチーフとして多分様々な機会に目にしていたが、作品として認識し、目にしたのはこれが初めて。一目見て惹きつけられた、すごい作品だと感じた。心が揺さぶられた。静かなようだが絵の中の人物たちは生きていて、アンニュイな空気が漂う。これは何だ?
    知りたい知りたいと思ったけど、ちょうど良さそうな一般書がなさそうで、引っかかったのはこの本くらいでした。でも取っ掛かりとしては必要十分。「絵に描かれていること」を、歴史や時代背景、古今東西の関連する絵画を踏まえて解釈してくれる。これって結構大事で、絵の外側ー歴史や時代背景、描いた人なんかが中心になりがちな解説が多いのだが、この本は絵に描かれたことを中心に、素人では気づかない知らないポイントを、専門家ならではの詳細な調査と知識でしかも平易な文章で見せてくれました。
    舞台は京の六条にあった遊郭。太夫と禿に傾奇者と若衆、遊郭の経営者やその妻、検校など15人の登場人物は1つの物語場面を構成しているというより、彼らの着物、持ち物、姿勢、顔、画中の屏風図などがすべて図象として意味を持つんだそう。能の世界、中国の格言、平安王朝文学などから受け継がれてきたシンボルを示している。これは教養がなくては描けないし、鑑賞もできないだろう。でもこの絵の出来自体が素晴らしいので、単に絵そのものを見るだけでも伝わってくるものがある。私は素養がないので絵の意味することはさっぱりわからなかったけど、絵を見たときに感じた、生き生きとしていながら静かでアンニュイな空気というのは間違ってないみたい。本当にすごい作品はきっとそういうものだと思う。1度目は無心で観て、その後に背景や解釈を知って改めて観るとより深まる。なかでも大事なのは実際に本物を見ること。本物だからこそ語りかけてくるものがあると感じた。

  • 日本絵画にイコノロジーの視点を適用したジェネラルブック

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著者プロフィール

1953年愛媛県に生まれる。東京大学文学部卒、同大学院人文科学研究科博士課程単位修得退学。国華社研究員、大阪府立大学総合科学部専任講師、大阪大学文学部助教授を経て教授。
京都国立博物館研究員、大和文華館評議員など。
著書:『屏風をひらくとき』(阪大出版会)、『俵屋宗達』(新潮社)、『舟大本・洛中洛外図――町のにぎわいが聞こえる』(小学館)、『彦根屏風――無言劇の演出』(平凡社)、『新編名宝日本の美術25 洛中洛外図と南蛮屏風』(小学館)、『懐徳堂ゆかりの絵画 』(編共著、阪大出版会)、『桃山時代の美術』(編共著、東京美術)、『琳派美術館2 光琳と上方琳派』(編共著、集英社)など

「2018年 『畫下遊楽 全二巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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