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- Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582702699
作品紹介・あらすじ
版画が熱かった一九六〇年代、一陣の風のように颯爽と現れ、忽然と姿を消した版画家がいた。わずか一年余のあいだに六十一点の銅版画を遺して二十二歳の若さで逝った菊池伶司。伝説の夭折版画家の全貌を明かす初の作品集。
感想・レビュー・書評
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少し感傷的な話をしたい。この世には出会うべくして出会ってしまうものがある。そんなことは絶対にあり得ないと頭では解っているが鳥肌が立つようなその感覚はどうにも否定しきれない。あたかも自分を待っていたかのような錯覚さえ起こる。感傷的な話である。
菊池伶司の作品は、どうもそんな作品の一つであるように思えて仕方がないのだ。
その感覚は、あるいは既視感とよく似た感覚であるかも知れないとも思う。どこかで出会うことを知っていたような感覚と言ってもよい。恐らく秀でた作品とはそんな既視感を多くの人に与えることができる作品のことなのであろうと思うが、同時に、その感覚を非常にパーソナルなものとして与えてくれる作品のことでもあるだろう。その個人に落ちていく感覚が感傷的な気分の源となる。そして言葉を語らせる。
しかし言葉は決して作品を写し取ったりはできない。そのことは重々承知である。それでも、じわじわと沁み込んで来ては何かを吐き出したい衝動に駆り立てるもの、それがこの本の中には詰まっている。そしてその放射性物質に似た何かと、それに汚染されてしまい何かを吐き出さざるを得なくなったものという構図もまた、この本の中には絡め取られている、そのことが一層面白いと思う。その網に自分もまた絡まることを知りつつ、言葉を重ねてしまうのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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