- Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582762945
感想・レビュー・書評
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分かりやすく物語風に書かれた作品。哲学に関する本としては取っ掛かりやすく親しみやすい作品だった。
哲学史をたどりながら自分の哲学を拡げていく話なので一方的な持論展開でなく、自身の整理にもなる。個人的には、自分の大好きな漫画『進撃の巨人』に通ずるところが沢山あり非常に面白かった。
とりあえず、哲学は美しく生きるためのものらしい。哲学とは何なのか、自分とは何なのか、自由とは何なのか、私はこのままで良いのだろうか?と日々考えてしまう自分に嫌気がさすこともあったが、美しく生きるために必要だったんだと背中を押してくれた気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ふと思い立って、教養文庫コラボのフェア冊子を読んだ。ここ数年、入手はすれども通読せず状態で、何となく取っつきがたいイメージってだけで敬遠していたんだけど、ちゃんと読んでみると、なんとまあ、結構魅力的な作品が多いこと。そんなに難解な感じでもなく、それならってことでピックアップしたものをなるたけゲット。実際読んでみた感触も、モノによっては新書の方がハードルが高いくらいかも。前置きが長くなったけど、要は難なく通読可能だった、ということ。で、本作。哲学の変遷をたどりつつ、自身の哲学論も順次開陳されるという、なかなかの読み応え。哲学史を学ぶというより、その活かし方を習得するための一冊かな。
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中学生にも読みうるように、という条件のもとで、哲学史に題材を取りながら著者が自らの問題意識を語った哲学への案内。
自分の手で働いて生きる者のための哲学、と著者は自ら謳っている。
生きることの意味を明らかにすることは、働くことの意味を明らかにすることに他ならない。働くことの意味が決定的に損なわれた近代において、それを回復させるために何が必要か、という内山哲学の原点が、きわめて平明な言葉で綴られている。 -
『哲学』と『冒険』の二つの言葉が一緒になっていることに少し興味を持ち購入。父親と少年の会話が凄く分かりやすく、引き込まれる様に一気に読み終わる。
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人間の生きる意味は人間の歴史に参加すること
すなわち何かを生み出すこと
本来の労働とは何かを生み出すことそのものだった
産業革命以降人間の労働は歯車になった
その中で生きる意味を見失っている
哲学とは今の人生と理想の人生のギャップを
埋めるための精神的活動
理想を描くのが難しい社会になっている
主体的に理想を探すことこそが自由ということ -
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内山節『哲学の冒険』読了。内山節という人は俗に言う「哲学(を研究する)者」ではなく、まさに「哲学する人」なのだ、と(彼の講義に数回しか出なかったことを申し訳なく思う反面、そのれでも彼の言葉にひっかかりを覚えてこれまで彼の本を何冊か読んでいるのは、比較的僕の言動にマッチしているからだけではなく、そのような後ろめたさがある種の原動力となっているのかもしれない)。「自分の手で働いて生きていく」ための哲学を模索する「僕」の冒険のなかで、内山は非マルクス系の初期社会主義思想を「存在論的社会主義」とよびならわして、高く評価している。内山の「労働」を「作品」としてとらえかえす試みは、労働というものが本質的にもっているとする喜びや尊厳というものを創作の喜びや創作物および創作者への敬意、自らの創作物ないしは創作活動に対する誇り、それらへの比喩的な連想をスムーズに呼び起こしてくれる。
そこで考えさせられるのは果たしてこの僕は何か内山の言う労働らしい労働を成しているのか。実際に本書でも第3部で「僕」と対話する「父さん」が企業での労働者として僕自身が直面しているような苦悩を述べている。
ただ、重要なことには内山における「労働」あるいは「作品」の射程というのは何も賃金や報酬を前提とする狭義の労働に限定されず、ひととひととの関わり、ひとと社会との関わりにまで及ぶ。この辺の発想というのは、先日中之島哲学コレージュで出会った現代戯曲家?の岸井大輔のそれと近しいものがあるように思う。
なんにせよ、平日昼間の労働の作品性に本質的な限界を感じるのならば、その外でいかに魅力的な作品をつくりだせるか、いかに可能性のある作品を築けるか、当面はその路線でいってみよう、そんなことを思わせてくれた本だった。