- Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582768343
感想・レビュー・書評
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ヤコブソンに関してはこの前、ホーレンシュタインの現象学的構造主義を読んだが、内容が難解且つ概説的であったため、またヤコブソンの著した各論考も読みたいと思い、本書に手を出した。マヤコフスキに基づき、ロシア文学におけるбыт(日常)に関する既存の解釈への批判や文学における構造主義の適用、詩学の研究必要性はとても参考になった。ロシア語やロシア文学について関心があると、全体を通して非常に興味深い内容となっており、ロシア語学ひいてはスラヴ語学において、ヤコブソンが寄与した功績はとても大きいと再認識した。
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やっとロマン・ヤコブソンの邦訳本が文庫で出た。
彼とレヴィ=ストロースの邂逅が構造主義の発端と言える。80年代だか90年代に日本でも「フランス現代思想」ブームが来たが、そのときたいがいの日本人はドゥルーズやラカン、レヴィ=ストロースなどの原典をロクに読まずに巷で安売りされているミーハーな解説本だけ拾い読みして知ったかぶりをしていた。この国民の知性の低さと見栄だけは張る間抜けぶりは当時から明らかだった。
レヴィ=ストロースの主著はまだ高価だが、ヤコブソンが突如出てきたことを喜びたい。
アンソロジーとしての本書は『一般言語学』よりも比較的取っつきやすいように思える(3編ほど重複している)。
最初のマヤコフスキイについてのエッセイ(1931)は、親交のあった友人ならではのオマージュだが、普通の文学評論っぽい。
だが次のプーシキン論(1937)はいきなり構造主義的文学批評になっていることに驚く。
残りの9編は言語学の領域に属する物で、最後の方のは専門用語も多くてやはり素人には簡単にはわからない。
「シニフィエ」と「シニフィアン」という対立項の強調はソシュールの専売特許では無く、2千年以上前のストア派の学問に既に見られたものだとヤコブソンが再三強調しているのが印象的だった。
長篇論文ではないのでヤコブソンの思想をこれだけで把握することは不可能だが、そのエッセンスを楽しむことの出来る1冊だった。