- Amazon.co.jp ・本 (112ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582839074
作品紹介・あらすじ
「昭和のくらし博物館」に届いた荷物。その箱に入っていた人形やままごと道具、絵日記から、高野文子と調査員が持ち主の姉妹の物語を読み解き、その記憶の世界を再構成する。
感想・レビュー・書評
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すわ!高野文子の新作が出ていた(2022年9月発行)!私としたことが!
取り寄せて紐解いてみると、高野文子の絵はほとんどないのであった。でも、これは高野文子が「昭和のくらし博物館」学芸員となって、一つの展示会の準備をした、その全貌なのである。紛うことなき高野文子著作と言っていい。
昭和のくらし博物館、紛うことなき「マニアック博物館」である。外観はまるきり昭和の二階建て木造住宅。その2階で2017年「山口さんちの子ども部屋」という展示会があった。1961年、9才のいずみさん、7才のわかばさん姉妹の持ち物・人形や玩具、日記などさまざまな「暮らしのかたち」が再現された。実にタイムカプセルのような、お母さん静子さんがとっておいた箱が博物館に寄贈されたのだ。
高野文子の絵はほとんどないけど、構成は普通の図録では見たことないほど微に入り細に入り表現されて、後半は山口姉妹のインタビューも入って、とっても楽しい。
私の家には姉妹はいなかったので、あんまり暮らしは被らないけど、それでも60年代豊島区千早町の子供の世界は想像できた。おはじきや、手作りの着せ替え紙人形、絵日記、国語ノート、お人形ごっこの豊富な衣装、小道具、紙着せ替えの歴史、果ては身寄りのない少女を家に住まわせていたこと(子どものお世話係)、都会の家の独特な間取り等々、60年代の暮らしを覚えている女性にとっては、いろんな発見がある本だと思う。
題名の由来。写生画の裏面にお母さんの筆跡で「この絵はよくかけてあるので、とっておいてはどうですか」というメモがあったという。それを高野文子が筆跡を真似て題名にした。
私はあんまりモノを使っての遊びはしなかったから、残るものは少ないけど、私のたくさん描いた図画、仏壇にしまっておいたはずの創作ノート、夏休みの日記、抱っこ人形‥‥あれらはいったい何処へ行ったのだろう。
博物館住所 東京都大田区南久が原2-26-19
開館 金・土・日・祝 10時〜17時
機会があれば行ってみたい。
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突然に始まるのは、この本の舞台「昭和のくらし博物館」。
昭和26年に建った木造住宅のその中にも家財道具がそっくり残っている。
とても綺麗に管理されてるなぁ…と感心する。
そして、とっておいてどうですかのタイトルどうりそのままに懐かしいものがたくさん残っている。
おもちゃはもちろんのこと絵日記や宿題ノートなど。
保存していることに驚いた。
日常に使用していた、洗濯板やタライ、火鉢、七輪など昔の道具を置いてることによって、暮らしの営みを知り、知恵と技を伝え体験する。
それが繋がっていく…大切なことだと感じた。
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その博物館に届いた荷物。
それは寄贈された、昔の思い出の詰まった玩具一式と日記。
彼女たちの過去の姿や話に想いを馳せ、展示に至るまでの記録。
・玄関に荷物が届きました。
・「国語ノート」(日記)を読む。 ・もっとよく見る。
・姉妹に会いに、しいな町を訪ねます。
・新しい荷物が届く。 ・展示の準備を始める。
昭和のくらし博物館の紹介有り。
箱を開けたら登場するのは、昭和の子どもたちの思い出。
よくぞ残してくれたと感嘆するほどの、玩具の数々。
昭和の子どもの生活と成長が伝わってくる日記。
それらはまるで、その時間に止まった時が動き出し、
彼女たちが遊ぶ姿が蘇るような、不思議な感覚がありました。
手作りの愉しさ、成長が垣間見られる日記。
カステラハウスの人形の家やお小遣い帳には、驚きも。
驚いたのはソフトビニール製人形。
幼い頃、近所の10歳くらい年上のお姉さんが、衣類一式と共に
譲ってくれた人形と同じでした。「カール人形」という商品名や
メーカー会社が判明して、感謝感激です。
人形供養したので手元には無いけど、あの頃遊んだ自分を
思い出させるノスタルジーを感じ、心が熱くなりました。 -
一回りほど上の方の子供の頃に品々ですが、私の子供の頃とはさほど変わらず、本当に懐かしく、今更ながらあの当時のおもちゃが良質だったと気づかされたました。
紙人形の着せ替え、付録についていたり自分たちで切り抜きしたり、絵を書いて切り抜いて・・・なんて豊かなお遊びだったんでしょう!
そうそう、おままごとのお皿や調理器具など、素材もプラスティックでなく本物のミニチュアに近かった。
なにより、おもちゃがきれいな姿で残っていたことがなにより凄い!!!
この時代の子供たち、捨てたもんじゃないなぁ、幸せだったと思います。 -
高野文子さんの作品はいつも唐突、そして独特の浮遊感がある。本書も特に説明なくはじまり、意思の強い「わたしたち」にぐいぐい押されるように進む。最後まで読み終わると、なんだか狐につままれたような、特別な時間を過ごしていたような気持ちになった。
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高野文子先生の手にかかると、長い間箱の中で埋もれていた昭和のある子どもたちの玩具や生活がいきいきと蘇る。
自分の人形もそうだったが、人形用の服や布団は手作り。主婦が皆洋裁が出来て当たり前の時代ならではのワードローブ。当時の住宅の図面の再現、カステラの箱で作ったドールハウス、博物館で展示された時の展示資料、など、見ていてわくわくする写真の数々。 -
子どものころの日記、人形、おもちゃ、大切にとっておいた個人的なものが、時を経て、みんなが振り返る生活史になる。昭和の、生活が豊かになっていく途上の、東京の女の子の生活の一部。知らない生活なのに、なんだか懐かしいようにも思えるのは、不思議。
平成も令和も、いつかこうやって懐かしむ時が来るんだろう。
小学生の時に書いた日記が一冊残ってる。読むと、子どもの頃、どんなふうに世界を見ていたか思い出すから、恥ずかしさ満載なんだけど、捨てられない。
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よくぞ残っていたなあという貴重な家族の資料。血が通った昭和という感じでほのぼのする。