古本通 市場・探索・蔵書の魅力 (平凡社新書 318)

著者 :
  • 平凡社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582853186

感想・レビュー・書評

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  • 古書業界誌のベテラン編集者が語る古書の魅力。
    ほとんど知られることもない古書業界の仕組みや、古書探索の奥義や秘策、
    驚くような蔵書エピソードもあり、蔵書処分の方法まで教えてくれる。

    第一章 古書業界の仕組み
    第二章 古書価決定のシステム
    第三章 古本探しのツール
    第四章 古本探査の楽しさ
    第五章 蔵書百態
    第六章 有利な蔵書処分方
    第七章 古本のこれから

    という章立てでそれぞれみな興味深いが、特に印象に残った点を。
    古本流通の大きなカギとなるのが古書組合運営の「交換会」。
    古本を交換し合うわけではなく「セドリ」と呼ばれる人たちから、買い手である大店主流の入札会のこと。年間通して開催されているらしい。

    二章ではその「交換会」の運営の様子が描かれ、前半部分の特に面白かったところ。
    入札は基本的に一万二千円から。
    そして、この落札価格に一番大きく影響するのが「仕分け」の上手下手だという。
    本の背が見えるようにして何冊かを束ねるのだが、組み合わせ方が難易度が高い。
    一点数万円で落札されるような本や全集類をまず選び、そこに同系統のものを組み合わせて更に価値が高くなるようにしていくのだ。目利きじゃないと、とても上手く出来ない。
    専門的な蔵書を仕分ける時は業界のベテランを呼ぶらしいが、実に手早く正確で、その一流の古本屋の姿を見ながら、新人古本屋さんも学んでいくという。私がこの眼で見ることはないだろうが、読んでいても惚れ惚れとする場面だ。

    ちょっと面白かったのは、「平凡」「明星」などの芸能雑誌の古いところが一冊数万円で取引され、戦前の少年雑誌や探偵雑誌が一冊何万円もするという。
    しかし本書は2006年のものなので、現在も同じかどうかは分からない。
    世相を反映した流行は移ろいやすいし、購入者側の年齢層も違ってくる。
    三章では書誌学と様々な目録の名称が登場する。
    いやもう、さすが。よくぞここまでというほどの量だ。
    それらは非常に高価格なので、公共図書館利用が賢いかも。

    四章では「吾輩ハ猫デアル」が刊行された当時の価格は、三冊で2円75銭という話が。
    東京板橋の一戸建て借家の家賃が2円80銭だったそうだから、当時の文学がどういう位置づけだったかを教えてくれる。今の時代で本を買えて良かった。。
    五章の「好事家」の話では「私の本棚」で載せた鹿島茂さんのことが出てくる・笑
    「本が命」と言ってはばからない稀代の蔵書家も。ここは後半の読みどころか。

    最後に、皆さんが一番関心があるだろうことを載せてみる。
    蔵書の処分。これがね、実にノーマルな結論が出ている。
    ①なるべく本を増やさないこと ②読んだ本は元の位置に戻して保管場所を変えない
    ③毎日のように書棚を見て、どこに何があるか記憶を確かにしておく
    ということらしい。とにかく買ったらまず読む。その後不要な本は処分する。
    コレクターでもなければ、これが正論だと思うが皆さんはいかが?

    おまけ。本書の中で「雑本」と呼ばれ、筋の良い蔵書とはとても言えない本を多くお持ちの方、落胆することなかれ。
    「私の本棚」の中で唐沢俊一さんというサブカル研究のライターさんが、思わず納得の上手いこと言ってるから、そこを読んでみてね。
    以上、情報量が多くて上手くまとまらないが、日頃知られない分野の話が山のようにあった。
    古書のガイドとして貴重な一冊。興味のある方はぜひ。
    本の購入もネットが主流になった感はあるが、良い古本屋さんは残って欲しいよね。

    • nejidonさん
      夜型さん、こんにちは(^^♪コメントありがとうございます!
      今日は月イチの検査日で、お返事が遅くなりました。申し訳ありません。
      Dain...
      夜型さん、こんにちは(^^♪コメントありがとうございます!
      今日は月イチの検査日で、お返事が遅くなりました。申し訳ありません。
      Dainさんの本、読了されたんですね。
      本棚登録されたのは知っていましたが、きっと良い読書時間を過ごされたことと思います。
      こちらも載っていましたか?知りませんでした。拙いレビューで恥ずかしいです。。
      それにそれに、本にまつわる本の、そんなお話も初耳です。
      お会いしたこともないのに、読書猿さんと夜型さんにはすごい親近感を覚えています。
      読む本の中に毎回おふたりを見つけるような、そんな気にさせられています。

      教えていただいたサイト、面白いですね!こんなところがあるなんて。
      どれもみな、興味津々で何度も見ています。ありがとうございます!

      何か嫌な思いをされたのでしょうか。
      良いことがそれよりもっともっとあって、忘れてしまえますように、ってこれは私の考え方ですが。
      何の役にも立てませんが、私は夜型さんの存在にどれほど助けられているか
      言葉に出来ないほどです。そんな人間もいるということを、たまには思い出して下さいね。
      教養の定義づけは、そうですね、「より良く生きるための指針」かな。
      「本にまつわる本」も、だいぶ色とりどりになりました。
      絵本、児童書、小説、エッセイ、書評、ブックガイド、本屋について、図書館について、
      文豪あるある本、写真集・・・ああ、楽しい・笑 
      いつもお読みいただいてありがとうございます!
      2020/06/08
    • 夜型さん
      おはようございます。
      検査、お疲れ様でした。暑かったですね。

      Dainさんの本には古本通は載ってませんでした。これはこちらの書き方が...
      おはようございます。
      検査、お疲れ様でした。暑かったですね。

      Dainさんの本には古本通は載ってませんでした。これはこちらの書き方が酷かったです、申し訳ない。
      Dainさんは本そのものを所有することよりもなんとしても本の中身を味わうことに力点を置いてるため、古本は射程外らしいのです。

      Dainさんが書籍で取り上げていた、「読書の歴史」などの歴史書もよいですよ。
      ぜひ、「本にまつわる本」の仲間に加えていただきたいです。

      読書猿さんのマシュマロの回答は以下です。

      https://scrapbox.io/marshmallow-rm/%E5%8F%A4%E6%9B%B8%E3%81%AB%E5%B0%8E%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AA%E6%9C%AC%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%A7%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86%E3%81%8B%EF%BC%9F

      https://scrapbox.io/marshmallow-rm/%E3%81%AA%E3%81%9C%E8%89%AF%E6%9B%B8%E3%81%8C%E7%B5%B6%E7%89%88%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%86%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86%E3%81%8B%EF%BC%9F_%E8%89%AF%E3%81%84%E6%9C%AC%E3%81%BB%E3%81%A9%E7%B5%B6%E7%89%88%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%84%E3%82%93%E3%81%98%E3%82%83%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%8B%E3%81%A8%E3%81%99%E3%82%89%E6%80%9D%E3%81%88%E3%81%A6%E6%82%B2%E3%81%97%E3%81%84%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
      2020/06/10
    • nejidonさん
      夜型さん、こんにちは(^^♪
      再訪して下さりありがとうございます!
      そうですか、Dainさんは古本は射程外なのですね。納得の理由です。
      ...
      夜型さん、こんにちは(^^♪
      再訪して下さりありがとうございます!
      そうですか、Dainさんは古本は射程外なのですね。納得の理由です。
      おお、その「読書の歴史」はこちらの図書館にもありました!ありがとうございます!
      Dainさんのレビューも読んで参りましたよ。
      いつも自分を内部から温かく励ましてくれるような、そんな情熱を感じますね。
      今借りている分を読み終えて返却したら、次に借りてみます。楽しみです。

      読書猿さんのマシュマロの答えを貼り付けて下さったんですね。
      話の流れがとても見えやすく分かりやすいです。
      確かに「古書通」の表紙画像がありました・笑
      その下の「良書ほど絶版になりやすい」の答えが、まさにその通りだなぁと。
      最後の行が胸にしみます。書物の森を潤す、小さなひとしずくでありたいです。

      今日も暑くなるようです。どうぞご自愛ください。ありがとうございました。
      2020/06/10
  • マスコミも伝えない古書業界の仕組み、古本探索の奥義と秘策。古今のユニークな蔵書家たちとアッと驚く蔵書のエピソード。果ては蔵書処分の方法まで、コレ一冊に古本とつきあう法が満載。古書業界誌のベテラン編集者が語る、奥深く尽きせぬ古本の魅力。(カバー)

    古本の流通方法がわかりやすく書かれており、雑学として面白かったです。
    ただ、作者様の本に対する意識がとても高く、ついていけないところがありました(「くだらない本」という表現は嫌いです)。

  • 本書を読了後、「筋のいい蔵書」ではない自分の本棚を見ていると、馬鹿にされているようで悲しくなる。雑本ばかりだが、それなりに愛情を持って集めた物だ。自分の場合、研究者でもないし、面白そうだと言う一点だけで購入しているので、当然といえば当然なのだが。

    本書は「通」を題名にしているわりには、入門的な話題も多く楽しめた。もう少し、所謂、雑本や文庫本に関するウンチク話もあったら聞かせて欲しかった。

  • 日本の古本業界の状況がよく判る。
    著者の興味がある分野の古書の話も多いが、自分の興味分野とは異なるので、まあそうですかという感じ。
    基本的に書籍はなくならないが古書の価格は下落の一方ということでしょう。

  • 最後は斜め読みをしてしまいました。

  • 優秀な蔵書は必ず、辞書、書誌の類が充実してますね
    樋口秀雄

    鈴貴信太郎 p127   贅沢

    p133蔵書の整理
    読書はよく食行為にたとえられる。本を味わう、租借・消化するといったような言い方である。しかし排泄にまでげんきゅうされることは、あまり一般的に見かけないようだ。

    追いつく人は本好きではなくて、読書好きなのである。
    買うに追いつく読書人なし(L嫌いの弁『虫の居所』奥本)

  • 本って、愛さなきゃいけないのね。

  • 古本に興味の有る方は読むべき。かなり楽しめて勉強にもなる内容です。

  • [ 内容 ]
    マスコミも伝えない古書業界の仕組み、古本探索の奥義と秘策。
    古今のユニークな蔵書家たちとアッと驚く蔵書のエピソード。
    果ては蔵書処分の方法まで、コレ一冊に古本とつきあう法が満載。
    古書業界誌のベテラン編集者が語る、奥深く尽きせぬ古本の魅力。

    [ 目次 ]
    第1章 古書業界の仕組み
    第2章 古書価決定のシステム
    第3章 古本探しのツール
    第4章 古本探索の楽しさ
    第5章 蔵書百態
    第6章 有利な蔵書処分法
    第7章 古本のこれから

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
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    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
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    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 古来、洋の東西を問わず、書店と古書店、出版社とは一体であったケースが多い。かの岩波書店や有斐閣は古本屋から出発したし、一方、老舗古書店として名高い大屋書房や浅倉屋もかつては出版を手がけていた。
    本書はそうした書籍出版の歴史と表裏一体である古書販売業の歴史や現状を著した一冊だ。

    前半は、古書業界の仕組みや流通経路についての解説が中心。時に数百万円単位の作家原稿が競られる事もある「市場仕入れ」や、本棚数台にまとめて値を付ける「宅買い」など、一般には知られることの無い業界の舞台裏が描かれる。
    一方、後半は古本愛好家の側に焦点を当てた話題が中心となるが、とりわけその中の「蔵書百態」が面白かった。いわゆる豪華本の収集家や辞書辞典専門のコレクター、全ての蔵書を自作の箱に収めた箱好きの蔵書家や目録作りに熱中する好事家などなど。「日本古書通信」の編集者だった著者だから知り得た様々な蔵書家の悲哀が面白い。

    惜しむらくは、本書に出てくるような旧来の古書店の数がめっきり減ってしまったことだ。ブックオフやネット販売で安価な新古書が手に入るようになったのは歓迎すべきことだけど、それは同時に古書の買取価格が低くなった事も意味する。それ故、多くの貴重書が古書市場に還流する事なく処分されている現状は勿体無いとしか言い様がない。

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著者プロフィール

昭和29年、茨城県生まれ。法政大学法学部政治学科卒業。昭和54年1月、日本古書通信社に入社、故八木福次郎の下で雑誌「日本古書通信」の編集に携わる。平成20年4月より編集長。著書に『古本ずき』(私家版)、『古本通』『三度のメシより古本!』『古本愛』(以上、平凡社)、『戦争俳句と俳人たち』(トランスビュー)がある。俳句同人誌『鬣(たてがみ)』同人。

「2021年 『自由律俳句と詩人の俳句』 で使われていた紹介文から引用しています。」

樽見博の作品

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