巨大翼竜は飛べたのか-スケールと行動の動物学 (平凡社新書)

著者 :
  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582855685

作品紹介・あらすじ

ペンギンやマンボウは海中で、ミズナギドリや鵜は大海原で、どうやって餌を捕り、活動しているのだろうか?観察できない動物の行動を調べる-そんな研究が、記録装置「データロガー」を取り付けることで可能になった。動物自らがとってきたデータから、泳ぎ、羽ばたく野生の姿を、生き生きと再現する。現生動物から翼竜まで、動物たちの知られざる姿が明らかに。

感想・レビュー・書評

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  • 前著「ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ」も面白かったが、こちらはさらに楽しめた。カメとマンボウの相似形とか、羽ばたき周波数で採餌の結果を推定する方法とか、いろいろと面白い。例によって院生を騙して研究させる描写も秀逸で、これを研究すれば君も「ドクトルまんぼう」になれる、と口説く辺りでは吹いてしまった。前著で活躍した院生の楢崎友子嬢は今回も大活躍していて、その点も嬉しかった。

  • バイオロギングなる研究分野があることを知る。微分積分、対数ってこういうところに生きてくるんだなぁ。

  • 動物にデータロガーを取り付けての実測実験。苦労の末の成功が心地よい。

  • 新書文庫

  • 本のタイトルは釣りだ。題名からの期待は裏切られたけれど、それ以上に面白かった。バイオロギング・・・つまりいろんな生物にセンサー&記録装置をつけて放し、普段どんな活動をしているかを情報収集し、そこから様々な新発見を導き出す研究。その中でもスケーリングという方面の成果が報告されていて、生物学というより工学に近い雰囲気がある。タイトルの巨大恐竜が一切登場しないわけではなく、鳥類のバイオロギング結果から導いた体長・体重・飛翔力等の相関からプテラノドンは飛べないんじゃないかという仮説を発表した経緯が書かれている。

  • わかった事実から次の関連課題へつなげていく姿がパズルを解いているようで興味津々。

  • 研究者魂が熱い。

    出版が2011年1月という、震災直前。そして著者の職場が大槌町。

    webで調べたところ、やはり東京大学大気海洋研究所附属国際沿岸海洋研究センターは津波に襲われて大被害を受けている。

    著者は無事かと心配されたが、研究室のページによると、柏に職場を移しているとのことでほっとした。

    とはいえ、研究施設の被害は甚大なもの。一日も早い復旧を願う。

  • バイオロギング―生物の行動記録を基に研究を進める著者の、動物の体の大きさと行動の相関性に注目した本です。
    大学の図書館で借りたのですが、すぐに読めてしまいました。

    まずはペンギンを軸に水生動物の遊泳速度と体の大きさの関係を調べています。ペンギンでもその他の魚でも、だいたい秒速2mほどで泳いでいるとのこと。肺呼吸をするペンギンが、速く泳ぐことと長く泳ぐことのバランスをどのようにとっているのか、というのは実に興味深く、休止代謝速度という、普段特別なことをしていない時の酸素消費量から、最も省エネな速度をチョイスしているという結論に至っています。

    それ以降はウミガメ、マンボウ、ヒメウ、アホウドリ、などなどの不思議な生き物たちの不思議な生態について、盛り沢山な研究内容が述べられています。
    最後に翼竜が本当に空を飛べたのかという問題を、スケールと体重の問題から論じ、そもそもの大きさの推定に問題はないのかという疑問、さらには大気の密度が高かった可能性という興味深い仮説を提示しております。
    研究生活での小話などもおもしろく、読んでて飽きません。というかすぐ読んでしまいました。
    ぜひぜひ。

  • 著者の佐藤先生は、京都大学大学院農学研究科水産学でウミガメの研究の成果で博士号を取ったそうです。

    水産学という学問は、食用にされる海や川の生き物をターゲットにするわけですから、ウミガメというのは異色だったそうです。
    けれど、データロガーという小型記録装置を取り付けて、その生き物の速度や加速度などの行動データを解析するバイオロギングサイエンス(動物が記録する科学)がやりたくてウミガメを選んだようです。

    その後、東京大学海洋研に所属し、様々な生き物の行動を計測し、その結果を分析したところ、タイトルにあるように巨大翼竜は(少なくとも継続して長時間は)飛べなかったという結論が論理的に導かれたというわけです。

    ★★★

    ちょっと面白かったのが、逆上がりの話。

     例えば、子供の頃に得意だった鉄棒が、大人になると苦手になったりする。子供の頃にはいとも簡単に逆上がりができたのに、小学生にお手本を示そうと思って久しぶりに鉄棒をしたら、逆上がりができなくなっている自分に気がついて愕然とした、そんな経験はないだろうか。これは、胴回りに醜く付着した脂肪層のせいだけではない。

     ─略─

     もしも、子供のときから全く体系が変わらぬまま、身長が2倍になったとしよう。筋力は筋断面積に比例するので、腕の筋肉は子供の頃に比べて、4倍の力を生み出すことができる。しかし、悲しいことに体重は8倍になってしまっている。結果的に、鉄棒する大人の体重を支えるだけの腕の筋力は圧倒的に不足することになる。

    なるほどね。ついこの間、アイススケートで異様に足首に力が掛かって「こんなはずでは」と感じたのも足の筋肉の成長が2乗倍なのに比べて体重の増加が3乗倍だったからなのかな。

    ★★★

    さて、ジャンルは違えど、ソフトウェアでもデータロガーの考え方はありますね。
    メトリクスというやつです。

    昨年のSQiP研究会で、IBMの細川さんや、ソニーの永田さんが率いるレビュー分科会では、『間接的メトリクスを用いて欠陥予測を行うレビュー方法の提案』というタイトルで、プロジェクトのコンテキストに目を向けた間接的データからどこをレビューすると効率的かというユニークな研究をしていました。

    とても、面白い研究で、きちんと相関が検証されるデータがそろえば、この本のように『巨大プロジェクトはリリースできたのか』といったタイトルでまとめられるんじゃないかなぁと思いました。


    # 今回の、東日本大震災で、佐藤先生の研究室も被災されたとのことです。「津波によって、全ての紙資料とHDやCDに保存したデータが無くなった」という一文を読んで涙がでそうになりました。かける言葉もありません。

  • 動物の体のつくりと行動の相関関係が緻密なデータで明らかにされていって、緻密なデータの部分はさっぱり??でしたが、おもしろかった。
    ウミガメからペンギン、アホウドリときて翼竜にまで広がっていく好奇心が、楽しそうでよい♪
    この先生、研究所が大槌町にあってご自宅が釜石だそうで・・・。あとがきに「2010年12月、この時期にしては妙に暖かい岩手県三陸沿岸にて」って書いてあるのが怖い…(津波で研究所にあったデータ等は流されちゃったけど、学生さん方もご無事だそうです)

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著者プロフィール

佐藤克文 1967年、宮城県生まれ。東京大学大気海洋研究所行動生態計測分野教授。農学博士(1995年京都大学)。著書に『ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ』(光文社新書)、『巨大翼竜は飛べたのか』(平凡社新書)などがある。2020年より小学校国語五(東京書籍)に「動物たちが教えてくれる海の中のくらし」が掲載されている。ナショナルジオグラフィック協会のエマージングエクスプローラー受賞(2009年)。

「2020年 『海の中のくらし 動物たちが教えてくれる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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