- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582857450
感想・レビュー・書評
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内容は表題の通り。
1953年のアイゼンハワー大統領の「アトムズ・フォア・ピース」演説に始まる「核の平和的利用」。
アメリカ、並びに日本(やフランス、ドイツなど)原発の輸出入の歴史が詳しく書かれているのが参考になった。
「はじめに」の一文から。
“日本政府は「福島原発事故の教訓を活かし、世界最高水準の原子力技術を提供」するのは、「日本の責務」だとして、史上最悪レベルの事故さえも、輸出関連に利用している。 ”ー 10ページ
まさに、事故から何も学んでいないしか言えない。
そして、2014年、トルコ、アラブ首長国連邦との原子力協定が国会承認された。
なぜ原発を輸出するのか/しなければいけないのか?
それは、自国内での新規建設が難しくなり、「原子力産業」として成り立たず、新たな市場として途上国に輸出することで、企業としての生き残りを図るためとしかいえない。
「原子力産業」は、莫大な費用がかかるため、民間企業だけでは難しく、「国」(政府)の下支え、つまり、官民一体となった「国策」としての輸出産業となった。
その日本政府の原発を輸出しようとしてきた歴史・背景などを、関係省庁の方針やアメリカ政府の動向など多方面から指摘している。
日本は苛酷な原発事故を経験したのに関わらず、(あるいは、また起こるかも知れないが…)、本書の言葉を引用すれば、「加害者」でもある当事国が、安易に「国策」として原発を輸出していいものなのなのかと考えさせられる。
原発は、決して安定でかつ安価な電力源ではなく、欧米各国の新規原発建設がないことからも、将来性がないのは世界の常識だろう。
原発に関わる、日本とアメリカにおける様々な協定、政令の閣議決定、法整備。気づかなければ、知らないことばかり。
原発輸出は、「国策」で進められる。つまり、税金を使われているということだ。
そのことも忘れてはいけない。
最後に本書についての注文を。
少し専門的な内容なので、原資料となる参考文献などを、明記してほしかった。あるいは、関連するような書籍があれば、その紹介もほしかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「福島原発事故の教訓を活かし、世界最高水準の原子力技術を提供します!」これが日本政府のセールストーク。史上最悪レベルの事故さえも原発輸出推進に利用し、2014年、トルコ、アラブ首長国連邦との原子力協定が国会承認された。背景には国内での原発新設が困難な中、新興国への輸出で生き残ろうとする原子力産業の思惑がある。そして、米国の原子力政策も絡んでいる。