新書765知られざる天才 ニコラ・テスラ (平凡社新書 765)

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  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582857658

感想・レビュー・書評

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  • 先週(2016.4)近くの本屋さんの店頭で見つけた本です。今から9年程前に3か月間程アメリカで研修していて、冬の時期にナイアガラの滝に行ったときに、大きなニコラステラの彫像を見つけました。

    そこに書かれていた説明文を読んで、エジソンとの競争に勝って、彼の発電方法(交流発電)が採用されたことを知りました。それ以来、彼のことが気になっていましたが、詳しい生い立ち等についての本に出会うことがなく今に至っていました。

    この本は、エジソンとの出会い、資金面で援助してくれたモルガンとの出会い、そして資金打ち切りに至るまでの経緯、交流発電以外にどのような発明を成し遂げたのか、当時に置かれていた彼の立場等について書かれていて、彼のことがよくわかりました。

    なんとなく、天才作曲家と言われた「モーツァルト」に似ている気がしました。

    以下は気になったポイントです。

    ・直流は工場での電気メッキ作業などに用いられたが、送電に必要な大電力をつくるのが問題であった。発電機でつくられた電流は直流とは異なり、電線の中で電流の方向と大きさが周期的に変わる交流である(p39)

    ・単相電源で交流モータを起動するには、回転磁場を生み出すための仕掛け(コンデンサー等の始動装置)が必要なこと、送電に用いる場合も損失が大きく非効率という欠点があった。それを解決したのがテスラ最大の発明と称えられる「二相交流モータ」である(p45)

    ・テスラは、エジソン社のヨーロッパ法人として設立された、コンチネンタル・エジソン社に入社した(p48)

    ・交流の商用化にいち早く名乗りを上げたのは、同じく発明王の、ウェスティングハウスの創始者であった(p56)

    ・テスラが研究所を開いた1887年には、エジソン系発電所は57か所、全米で数十万個の電球を直流で灯した(p59)

    ・直流システムには適当な変圧方法がなかったtめ、大電力を送るには電流を大きくするしかなく、損失も幾何級数的に大きくなる、これば直流システムの抱える本質的な弱点。送電距離はせいぜい2キロ程度(p60)

    ・テスラ(60ヘルツを主張)はウェスティングハウスの技術者が、当初から133ヘルツで実験してきた技術者と衝突が続き、ウェスティンぐハウスの研究所を去って、マンハッタン研究所に戻った(p63)

    ・1890年、エジソンのごり押しに屈して、ニューヨーク州では世界最初の電気椅子処刑が交流電気で執行された(p64)

    ・エジソン・ゼネラル電気会社は1891年、トムソン・ヒューストン社ら競合会社数社と合併し、エジソン・ゼネラル・エレクトリック社(現在のGEの前身)となった。ウェスティンぐハウス電気会社も、同年、数社と合併して、ウェスティンぐハウス電気制作会社となった。投資家は、テスラとの契約破棄を求めた(p66)

    ・1893年、ナイアガラ開発会社は滝を電力利用することに決めて、ウェスティンぐハウスとGEに発電機の競争入札をッ要求した。面白い事に、GEも交流システムを提案した、合併相手のトムソン・ヒューストン社が交流推進だったため。発電所には、ウェスティンぐハウスの二相交流システム、送電にはGEの三相交流システムが採用された(p70)

    ・テスラは、電磁波にも光と同じ、反射・回折・干渉の性質があることを確認、さらに定常波の波長から伝播速度は秒速30万キロと測定した(p79)

    ・低周波の交流は感電によって体組織に致命的なダメージを与えるが、高周波交流の一種である光では障害が表れない。電圧を上昇させることで、相対的に電流を小さくして、完全に無害な電流を得た(p87)

    ・1891年7月、待望の市民権を獲得した移民の発明家は、これをいかなる科学的栄養にも勝る喜びであると語った(p88)

    ・1898年5月の無線操縦ボートの公開実験では、現代に通じる3つの技術の複合体であった、無線通信技術・無線による遠隔制御技術・ロボット技術である(p101)

    ・テスラによれば、地球は絶えず膨張と収縮を繰り返しており、その振動周期はおよそ、1時間49分である。収縮し始める瞬間に爆薬を爆発させると、収縮波は増幅され、1時間49分後に増幅波が返ってくる。これが修復波に転じる瞬間にまた爆薬を爆発させて増幅することを繰り返すと、地球を二つに割れる。但し地球の振動周波数を正確に知るのは困難(p110)

    ・テスラは、地球の帯電を確認し、電放電の観察から地球の定常波を発見したと確認した。これを利用すれば無線による効率的な送電および、定常波との共振によって、我々をとりまく環境から無尽蔵のエネルギーをくみ取れるかもしれない(p127)

    ・ライバルである、マルコーニ成功の報(無線実験)を受けたモルガンは、首を傾げた。アンテナ以外なきわめて小型であった(p132)

    ・無線送電が実現すれば、当時、電力会社が建設を急いでいた交流送電網は用済みになる。これは電力会社、それを支える投資家にも死活問題であった。無線通信だからこそ、モルガンも支援を承知した(p133)

    ・マルコーニは最初から無線電信一本に絞って取り組んだ、理論よりも実験から空中の伝播を重視し、アンテナとアースの改良に努めた結果、大電力の装置は不要になった。そして、送信距離を延ばすことに資源を集中させた(p136)

    ・1913年にテスラを資金面で支えてきた、JPモルガンがローマで死去。新当主となった2世は、テスラタービンの商業的価値を認めて、15万ドルの支出に同意したが、それ以上の投資には応じなかった(p131)

    ・ノーベル物理学賞において、無線の業績はマルコーニが代表して受賞した。当時の科学界では、イギリスを盟主とするヨーロッパが中心で、新興アメリカ科学界の力がまだ弱かった(p155)

    ・科学界を騒がせたノーベル物理学賞受賞騒動は空振りとなったが、2年後に、アメリカ電気工学界最高の栄誉がテスラに贈られた。1909年に設立された賞の名前は、「エジソンメダル」であった(p156)

    ・1956年に、生誕100年を祝す記念会議がベオグラードで開催され、磁束密度をあらわす国際単位系として「テスラ」の採用が決定した。名を使われている科学者は、ニュートン・パスカル・ジュール・ワット・オーム・ボルタ・アンペール(アンペア)・ファラデーである(p191)

    ・日本では、エジソンのもとで直流システムを学び、東京電灯に入社した岩垂は、同僚の藤岡とともに直流システムを推進した。岩垂は、交流の優位を見抜いて、退社後は、関西に移って大阪電灯(開催電力の前身)を設立、交流の実用化をすすめた(p198)

    ・シカゴ万博、ナイアガラ瀑布発電所における交流システムの成功を受けて、東京電灯会社も交流に転換した。このとき同社が導入した、ドイツ製発電機が50ヘルツを採用していたので、東京電灯の供給範囲は50ヘルツ(p199)

    ・西日本では、大阪電灯会社が、ウェスティンぐハウスのライセンス供与を受けてGE製の60ヘルツ発電機を採用したので、60ヘルツが普及した(p199)

    ・2008年6月、横浜市にある東京電力の「電気の史料館」にテスラの銅像が設置された、日本での設置は初めて(p234)

    ・生前は不遇であった電力の無線伝送も蘇ってきた。IT機器や電気自動車の充電方法として話題にのぼるワイヤレス給電である。テスラの無線送電システムで給電、テスラの誘導モーターで駆動、テスラの無線操縦で自動操縦される電気自動車。その夢のテスラカーの実現は迫っている(p236)

    2016年4月11日作成

  • 日本ではあまり知られていない科学者であり、発明家のニコラ・テスラ。エジソンと同時代を生き、エジソンを越える発明をした人物である。米国の電気自動車のテスラを思い出す人がいるかもしれないが、イーロンマスク氏のテスラへの尊敬の意かもしれない。そもそも交流で電力を使えるのはテスラのおかげだ。本書を読んで、テスラがいなかったら、人類はどのような生活をしているのか怖くなった。インターネットなんてないし、そもそも照明はガス灯だったかもしれない。テスラに感謝である。

    本書はテスラの入門書だ。エジソンを知っている人で、電気を使って生活している人は読んだ方がいい。

  • 今までほとんど知らなかったニコラ・テスラを良く知れた。著者のテスラ好きがよく伝わり、よく調べあげてることは評価出来るものの、好きなあまりに客観性に欠けてテスラが凄いとゴリ押してる感じが...(たしかに彼のおかげで現在の我々の生活が成立はしてるが)
    あと、11、12章は少し蛇足な気がする

  • 三相交流や誘導モーターの父ということは知っていた。
    正真正銘の天才、独創的すぎる発明の数々、長身イケメン、生涯独身、これほどロマンあふれる人はそういない。
    地球コンデンサ、共振による人工地震、放射能発生器など単語だけでおもしろい。
    潔癖症や神経症に悩まされていたことから、側頭葉てんかんだったのではという説があるようだ。

  • ニコラ・テスラの伝記。日本での認知度はライバルであるトーマス・エジソンには及ばないが、グーグルの協同創始者ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、「テスラモーターズ」のイーロン・マスクなど、テスラを尊敬するベンチャー企業家たちは多いという。

  • 私はようやく最近、ニコラ・テスラのことを知ることができました。

    交流技術、無線技術、ワイヤレス給電等々などのニコラ・テスラが発明したり、業績を上げた技術が、さまざま現代までに活用されてきていること。
    それらの膨大でとてつもない業績の大きさに驚くというよりも圧倒されてしまいました。

    テスラはものすごい勉強量を積み重ねてきたことがこの本でも書かれています。

    また本の中で名前を挙げられている人たちも、昔の人達も含めて大変な人たちばかりです。

    世界ではニコラ・テスラに対する評価や尊敬がものすごく高いそうです。
    それに比べて日本ではあまり知られてはいないそうです。

    この本を読みながら、日本はどんどん世界から取り残されていってしまうのではないのかと、ものすごく不安になってしまいました。

  • ニコラ・テスラの入門本として最適。

    たいそうな名前の「世界システム」とは、無線による電力の送電システムと情報の伝達のシステムを合わせて名付けたもの。
    これを「地球コンデンサ理論」に基づき実施しようたした点が間違い。
    マッドサイエンティスト的なミスリードをされてきた嫌いもあるが、そういう素質もテスラ自身にはあっようなので、ネットの時代の今、殺人光線、人工地震装置、スカラー兵器などなど、信じてはいけません。

  • 原子 制御できない
    テスラ 葬式 ニューヨーク大聖堂 5番街の?
    マークjサイファー 魔術師
    テスラは交流
    エジソンは直流
    周波数
    ドイツ製発電機50ヘルツ 東日本
    GE製60ヘルツ 西日本
    スミソニアン博物館 交流システム
    名古屋科学かんしんかん テスラコイル

  • 新書文庫

  • ニコラ・テスラ秘密の告白と書いてあることが似ているが、こちらはより客観的に書かれている。しかしテスラの本当の心の内を理解するのは難しく、より深く知りたい人は本人の手による著作物を読むほうが良いかもしれない。

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著者プロフィール

1948年、神奈川県生まれ。横浜市立大学文理学部卒。テスラ研究所所長、テスラ記念協会会員。ニコラ・テスラ、チャールズ・バベッジなど、知られざる天才の発掘に情熱を注ぐとともに、その発想を現代にいかす道を探る著作活動を続けている。主著に 『発明超人ニコラ・テスラ』ちくま文庫、『ニコラ・テスラ未来伝説』マガジンハウス、『逆立ちしたフランケンシュタイン - 科学仕掛けの神秘主義』筑摩書房、『知られざる天才 ニコラ・テスラ - エジソンが恐れた発明家』平凡社新書、『江戸の科学者 -西洋に挑んだ異才列伝 』平凡社新書、他多数。

「2019年 『天才ニコラ・テスラのことば』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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