- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582858358
感想・レビュー・書評
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https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685077詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【由来】
・図書館の新書アラート?
【要約】
・ザックリいくと
戦後、ドイツと日本では占領の状態が違った。ドイツでは連合国が絡み合ったのでアメリカは好き勝手にできなかった。そこで日本の占領についてはアメリカが自国だけで占領できるようにした。その結果、政治家はアメリカの言うことをよく聞く者から構成されることとなり、そのためであれば戦犯であっても構わないということになった。これはナチ関係者が徹底的に断罪されたドイツと比べても、その違いが際立つ。
アメリカが日本の軍事化へと路線を転換したのは、もちろん冷戦によるもの。アメリカは、日本における軍事行動に際しては当然日本からしかるべき主張が出てくることを予想していたが、それをしなかった。その結果、例えば核の持ち込みなども「慣習」化されることとなり、この「慣習」化によって日本の対米従属は構造的かつ永続的なものへと変質していった。
「核」「抑止力」は冷戦が終結し、テロが脅威となった今日の世界では説得力を欠くようになってきている。それなのに、「核の傘」頼りの日本でいいの?
【ノート】
・右翼でも左翼でもなく、それぞれに語りかける。こういう人の言論には説得力がある。しかも、一部の左翼がヒステリックにやってきたように、一方的に吉田茂ら保守政治家らの非を鳴らす、というようなスタンスではないのも、個人的には好印象。
・しかし、いっつも本の売り方とかにケチをつけてるみたいでアレですが、この帯はどうなんでしょうかね。もう売るためなら何でもやるってことか。もちろん、田中宇さんが展開しているトランプ確信犯説に立った上で本書のあとがきでサラリと触れられている内容を紐付けて、この帯を付けてるんなら秀逸ですが。 -
トランプ発言に便乗して、日米関係の不平等について戦後のお互いの政府の駆け引きを検証した著作。
冒頭の説明文書であるが、同じ同盟国でありながら、ドイツやイタリア、フィリピンとも違う、日米の奇妙な関係を、外交、占領の歴史を手がかりに繙くとき、見えてきたのは、主体性を失い続ける「日本」の姿だった。
自ら従属を深める日本。
真の独立のために何が必要なのか。
ということで、内容ですが、
第1章 従属の現実―世界に例を見ない実態
1 裁判権があるのに「裁判をしない」不思議
2 日本全土がアメリカの訓練基地なのか
3 ドイツは主権のために地位協定を改定した
第2章 従属の原点―日本とドイツの占領の違い
1 占領期にアメリカの意図が貫かれたかどうか
2 対米自主性のある人物が支配層になったか
3 独立と同盟への過程でも違いが広がる
第3章 従属の形成―「旧安保条約時代」の意味
1 マッカーサーが与えた「エジプト型の独立」
2 建前としても平等を放棄した旧安保条約
3 世界史に前例のない裁判権の全面放棄
第4章 従属の展開―新安保でも深化したワケ
1 自主性の回復が新安保条約の建前だったのに
2 積み重ねが従属を慣行にする
3 平和か戦争かの決定権がアメリカに
第5章 従属の深層―独自戦略の欠落が背景に
1 鳩山政権の普天間問題での挫折が意味するもの
2 日本型核抑止力依存政策とその形成過程
3 対米従属から抜け出す防衛政策への道
となっています。
読み進めれば進めるほど、日本の外務官僚の事なかれ主義に腹立たしさを覚えます。
徳川幕府が結んだ不平等条約解消に戦った明治維新政府の心意気を見習って欲しいものです。
この本の最後にヒントが書かれています。
「アメリカを変えられるのは日本が独自の哲学を持つ時だけ」
「国民自身の覚悟が問われている」
です。
日本の政府、政治、国民の何が問題点なのか、戦後の歴史を紐解いています。
一読の価値はあります。