中原中也 魂の詩人(「別冊太陽」日本のこころ146)

  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582921465

感想・レビュー・書評

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  • 夭逝の詩人中也。

    “汚れちまった悲しみに今日も小雪の降りかかる”
    ”幾時代かがありまして茶色い戦争ありました“
    “思えば遠く来たもんだ十二の冬のあの夕べ”

  • 【詩をたのしもう(日本編)】
    日本の近・現代詩史に燦然と輝く詩人たちの作品を選り抜きでご紹介します。
    新学期、新生活にお気に入りの詩人をみつけてみませんか?

    <閲覧係より>
    神童と呼ばれ、若くして亡くなるまでの30年間、中也の人生は波瀾万丈だった。資料や豊富な図版によってその生い立ちを追ってみよう!
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    資料番号:91019270
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  • <満身創痍の詩人>


     久世光彦の『美の死』読後、人間・中原中也に関心を抱くようになりました。文学にくわしい人にはいまさらとりあげるまでもない逸話かもしれませんが、中也と、評論家の小林秀雄、グレタガルボに似た女・長谷川泰子との奇妙な三角関係を、久世は巧みに切り取っていました。

     動揺しました。少女時代に詩だけは読んだけれど、作者の生涯にはさほど思いを馳せず過ぎており、清冽な詩の印象と比べ、思いがけずなまなましく匂い立つ中也像をつきつけられた気がします。

     詩集をめくった時には雪が胸にしみるように感じたものだけど、よく見ると雪に赤いものが混じっているようで、穏やかならず★ 気づかなかった自分の鈍さに嫌気がさしつつも、中也にもう少し触れたいとの思いが兆したのでした。

     折よく、今年は中原中也生誕100年。記念に編纂された「別冊太陽」は直筆資料が豊富で、ノートや原稿、書簡類の写真を多数収めた上、中也と交際した多くの文学者の話をまとめた一冊。加えて堀江敏幸、中沢けいら作家が文を寄せていて豪華。

     そこから浮かびあがる中也像は……、骨がつき出して見えます。
     芸術それ自体を論じるよりも芸術家として、詩を書くというより詩人として生きることに、息苦しいまでに自覚的だった中也。「人生」について多く語りたがったとのことですが、それは単に衣食住を満たし永らえるのみの者が描く「人生」とは別次元の、苛烈な戦いだったことが伺えます。
     誰彼なく議論したけれど理解されることは少なく、ほぼ奇行と思われながら、自ら染め直した黒いコートの裾を引きずるようにして歩いていった男。想像すると、意外とゴシックなたたずまいです。

     わずか30年という短さのうちに、光も病みも傷も凝縮された、かなり過酷な生涯だったことを感じました。


    p.s.鎌倉文学館では、10月6日~12月16日まで「中原中也-詩に生きて」展が催されています★

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