- Amazon.co.jp ・本 (171ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582922271
感想・レビュー・書評
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S図書館
20220916別本
49若冲がフラクタル構造を理解して描いている作品が80以上発見された
フラクタルとは、自己相似性といって同じ形が再現していることをいう(ネット情報)
「梅花小禽図」ばいかしょうきんずでは、
羽を広げた鳥と同じ形に枝が描かれていた
面白い!
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<「草木国土悉皆成仏」。絵を愛し、生きものを愛した奇才。 >
伊藤若冲(1716~1800)。京都の青物問屋の長男として生まれるが、商売には興味がなく、とにかく絵が好きだった。40歳にして家督を弟に譲って隠居。画業に没頭する。
若冲の号は禅の師であった相国寺禅僧・大典顕常から与えられたといわれる。『老子』の「大盈(たいえい)は冲(むな)しきが若(ごと)きも、其の用は窮(きわ)まらず」、つまり「満ち満ちているものはむなしいように見えて、そのはたらきは窮まることがない」から来ているという。
来年は生誕300年。蕪村と絡めた展覧会が開催中(『若冲と蕪村』(サントリー美術館))だが、来年に掛けてさらに特別展があるのかもしれない。
本書は節目の年を機に、長年若冲を研究している著者が選んだ「この百図」。
釈迦三尊像を飾るものとして制作された絢爛たる大作、30幅の「動植綵絵」、タイルを並べたような枡目描きの「鳥獣花木図屏風」、釈迦入滅を描く涅槃図を野菜や果物に置き換えて描いた墨絵「果蔬涅槃図」、ネガポジ反転のような不思議な味わいの拓版画「乗興舟」など、多彩な技法の代表的な作品が収められる。
怒濤のように紹介される図版の間に、技法や交友関係の解説も挟まれている。
「動植綵絵」は絹絵であるが、表からの彩色の他に、裏彩色、そして肌裏紙から透ける色もあって全体の色が構成される。例えば黄金色に輝く白鳳の表現には、表には白い胡粉を場所によって厚みを変えて施し、裏彩色として黄土(鉄系の顔料)や白で濃淡を創り出し、通常は生成である肌裏紙には濃灰色のものを用い、全体として輝くような白色と黄金色を生み出している。
拓版画というのは、漆黒の背景にモチーフを白く浮かび上がらせる版画に対して付けられた名称である。通常の版画とは逆に、下絵を彫り込む(陰刻)。彫った版木の上に紙を乗せて水分を含ませ、上から刷毛やタンポで色を乗せていったもので、拓本の手法との類似から名付けられた。ぼかしの高度な技法などに関しては、制作手順が不明な点も多いようだ。
若冲の絵の中には空想の動物も出てくるが、実在の珍しい舶来動物や多様な魚介類も多く見られる。そうした動物に関する知識を若冲はどこで手に入れたのか。文人・木村蒹葭堂や儒学者・皆川淇園との関連が推測される。当時の博物学の広がりと合わせて興味深い。
絢爛豪華な彩色画も、飄々とした墨絵も、そして不思議な静謐さを持つ拓版画も。若冲の絵はどれも楽しい。
卓抜した技術の一方で、人を威圧するのとは違う、どこかとぼけた「味」がある。
過剰なほどの技量の絵を目を丸くして眺めながらも、どこからか笑いがこみ上げてくるのだ。
若冲は「自分の絵の価値が分かる人を1000年待とう」と言っていたという。
生誕後、いまだ300年。近年、注目を集め、人気も高まっている若冲だが、その絵の中にはまだまだ知られぬ秘密も眠っているのか。
未だ知られぬ謎を、そうとは知らずに眺める。そんな想像もまた楽し。 -
代表作「動植綵絵」30幅を含む 100点を、小林忠岡田美術館長が選んだ。辻惟雄 Miho Museum 館長と若冲を語り、若冲の生涯についても解説している。多数の図版、若冲入門に最適
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若冲生誕三百年と言うことでいろいろ出てたけど、買ったのはコレ(全部把握してこれを選んだわけじゃ無いから、たまたま)
特殊な技法(裏彩色など)の説明もさることながら、まさか若冲がフラクタル構造まで理解して描いているとは!! -
この本は若冲の保存版としてとてもいい。
それにしても、やっぱり若冲はエキセントリックなスターである。圧巻。 -
美術好きでは全くないが、若冲は好きだ(梅原猛の百人一語を読んだのがきっかけ)。サントリー美術館の「若冲・蕪村展」に先立ち本書を購入(やはり、別冊太陽のコスパは素晴らしい)。ウットリ眺め、改めて、好きな若冲作品を考えてみた。
① 花鳥人物屏風(墨絵の12枚の連作屏風。鶏、鴉、鸚鵡、野菜、魚、おっさんとヒョウタンなどが墨で闊達に簡潔にユーモラスに描かれて、それぞれの生き物の魂が躍動しているよう。昨年のプライス展で圧倒された)
② 果蔬涅槃図(大根を釈迦に見立て、入滅する横たわった大根を南瓜や椎茸や梨や数十種類の野菜の弟子達がこれを取り囲んでいる楽しい墨絵)
③ 象と鯨絵屏風(陸の白象と海の鯨の交流を描いたファンタジックな墨絵の屏風。白と薄いグレーが美しい)
④ 蔬菜図押絵貼屏風(1枚につき、茄子、椎茸、慈姑、南瓜、蓮根などの野菜が、それぞれ、ドデーン、ドデーンと描かれた墨絵連作屏風。サントリー美術展に出品のようだ。観たい!)
こうしてみると、自分は、自分が一般的に世評の高い、豪華絢爛で細密画的な動植綵絵や鶏の暑苦しい色絵は、凄いと思うが、あまり好きでないのかも(ただ、色絵の中の鶴や鸚鵡を書いたときの白の濃淡の美しさにはほれぼれする)。本人が息を抜いて楽しんで書いたであろうユーモアのある動きのる墨絵に深い愛着を感じるようだ。あぁ、若冲・蕪村展が楽しみ。
追記1【若冲・蕪村展前半@サントリー美術館】
やはり若冲素晴らしい!
より大らかでユーモアに富む晩年の作品が好み。
以下の絵に感銘を受けた。
・象と鯨図屏風 ノスタルジックで夢物語風でこれが江戸時代で晩年の作品なんておかしい
・五百羅漢図 じいさんになって、漫画もどきの、でも、500の人間や動物の書き分けも細かいこんな絵書くなんておかしい
・蔬菜図押絵貼図 しいたけや大根やクワイなど野菜1つ1つをふすま1枚にドカドカ書いて並べるという発想自体おかしい
追記2【若冲・蕪村展後半@サントリー美術館】
前半の方がよかったかな。後半よかったのは以下の絵。
・隠元豆・玉蜀黍図 繊細なデリケートな線の墨絵は若い頃のものがよい。
・石峰寺図 これはユートピアを描いた現代の絵でしょ。つくづくこれが80を超えた爺さんの描く絵とは思えん。
追記3【若冲生誕300年記念@東京都美術館】
滅多に見られない(天皇家所蔵)動植綵絵が全部見られるというので、駆けつけた。若冲の一大傑作というが、ホントに素晴らしい。構図、デザイン、その緻密さ、色使い。絵画の最高峰ではないか。特に、花の白とピンクの美しさにはため息。その驚嘆すべき細かい緻密な筆使いにはこ大げさでなく人間か悪魔か!?とも思った。この息がつまるほどの完全性とは別の、墨絵や晩年の漫画性にあふれたユーモアたっぷりの絵も描けるのだから、画狂と言えよう。いやいや素晴らしかった(「菜蟲譜」もよかった)。これで、若冲の有名な作品はあらかたみたと思うが(静岡県立美術館の「樹花鳥獣図屏風」ぐらいじゃないかな)、好きな若冲作品再構成。
① 動植綵絵(個人的には息が詰まる絵は好きではないが、これは素晴らしいとしかいいようがない)。
② 象と鯨図屏風(白とグレーの色使い、象と鯨のノスタルジックさ、そのイマジネーションに脱帽。心を別のどこかに連れて行かれる)
③ 花鳥人物屏風(プライス所蔵。その筆のおおらかさに、それぞれの生き物の魂が躍動。見ていて楽しくて仕方がない。) -
近年特に名前や作品をあちこちで見られるようになって嬉しい。雪の表現が大好き。鳥も動物も草も花も虫も魚もあれもこれも。
作品の紹介も勿論ですが、コラムも執筆陣が多様で面白い。欲張りな一冊。\(^o^)/ -
生誕三百年だそうで、ここのところ続いている若冲ブームもまた一段と活気を帯びそうだ。これは、さすが別冊太陽、表紙をはじめ写真がきれいで迷わず購入。うっとりと眺めている。
巻頭で監修の小林忠氏が書かれているとおり、若冲の絵には心地よい愉しさがあふれている。見ていて本当に幸福感のある絵だ。小難しいこと抜きに、絵そのものを味わう。色も形も本当に素晴らしい。
最後のほうの座談会を読んでいたら、来年の「若冲三百年展」で動植綵絵の展示ができそうだというくだりを発見! おお、若冲と言えば、何と言っても動植綵絵。あれが見られるのね! 何点出るの?どれが出るの? 動植綵絵でわたしがとりわけ好きなのは「蓮池遊魚図」。画集で見た時、まるでデザイン画のような斬新さに「これが日本画!?」と衝撃を受けたのが忘れられない。
もちろん、若冲得意の鶏も是非見たい。鸚鵡も孔雀も、もう見たい物だらけ。楽しみだ~。