日本を貶めた戦後重大事件の裏側

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784584135051

作品紹介・あらすじ

中国海軍レーダー照射問題、下山事件、オウム真理教事件、警察庁長官狙撃事件…大事件の背後に陰謀あり。インテリジェンス戦争の実態は一般人の目には触れないようにできている。

感想・レビュー・書評

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  • 主に井沢元彦氏の「逆説の日本史シリーズ」を読んだ影響もありますが、私達が学校で習ってきた歴史を始めとして、現在記録に残っている歴史は勝者に都合のよいものになっていると理解するようになりました。

    この本は、起きた事件がそれほど長く経っていないので歴史にまでなっていないような、重大事件について、実際にはどうであったのかを解説しています。名前を薄らとした覚えていない事件も含めかなり多くの事件が取り上げられていました。

    これを書かれている方が、元公安庁というそのような事件を扱う部署に属していたので、私としては惹かれるものがありました。1995年まで勤務されていたということは、あの有名な地下鉄サリン事件等を経験されているわけで、それに関する記述は興味を持ちました。驚いたのは、事件を騒がせた物質が本当に「サリン」であったが証明されていない(p178)というものでした。

    この本で、長期間に渡って「大統領候補」だった、金大中氏がなぜ韓国大統領になれたのかがわかったことが収穫でした(p122)

    以下は気になったポイントです。

    ・ひとつだけ覚えてほしいことは、真相は世論とは逆、ということ、通説にこだわっていては真実はつかめない(p2)

    ・中国は1979年を最後に、外に対する武力行使をやめてしまった、国内の経済発展にまい進し始めたから(p18)

    ・中国共産党が今も独裁的に中国を支配できているかは、1)日本軍国主義の中国侵略から解放して中華人民共和国をつくった、2)共産党がなければ今の経済発展は無いということ(p19)

    ・第二次世界大戦中の潜水艦は、ほとんど海上にいる時間の方が長かった。酸素の補給が必要であったため。そのために原子力潜水艦が作られた(p31)

    ・対潜哨戒機(P-3C)は、潜水艦の位置を特定する。米ソ冷戦時代は西太平洋上で、ソ連の潜水艦をおいかけてきたので能力も高い、日本の海上自衛隊はそのためにある(p33)

    ・大韓航空機のボーイング747は、アメリカの偵察機(RC135)に似ているので、ソ連戦闘機に撃墜された(p33)

    ・支那事変で中国と日本が戦争状態であったとき、蒋介石に一番多く武器を売っていたのは、ドイツ。なので南京大虐殺の大宣伝をやったのもドイツの新聞。(p41)

    ・海上保安庁に入ろうとする若者が日本では大勢受験したが、中国では海洋局が新規募集したら一人も応募しなかった。中国、韓国人にとって一番大事なのは、自分の身内、次が同郷の人(p43)

    ・ゾルゲは、銃殺ではなく巣鴨の刑務所で絞首刑になった、今のサンシャインビルのあるところ。本来ならば軍人の将官を処刑するのに、国際的なルールでは銃殺にしなければならないのに、当時のアメリカはそのようにしなかった(p57)

    ・言葉には階級差があって、下層階級の人は宮廷で使うような、日本語でいえば標準語みたいなものは、殆ど話さない(p80)

    ・アメリカ占領軍は、GHQのしたにG2という組織があり、ウィロビー少将の下で、日本の治安や諜報をになっていた。G2のしたに、CICという組織があり、全国を6つのブロックに分けて部隊を派遣していた。北海道、東北、関東・甲信越、近畿・北陸・中部、中国・四国、九州である(p91)

    ・1961年に朴少将が軍事クーデターを起こして権力を握り、大統領に就任して軍政をひいたが、それに反対ということで大騒動になった。北朝鮮は、中国ソ連の支援のもとで発展していた、そのためアメリカの働きかけもあり、日韓の国交正常化となった(p104)

    ・日韓両国は請求権をすべて放棄して、日本は賠償ではなくて、経済援助という形で有償無償の公的資金を、5億ドル、民間借款として3億ドルを提供した。当時の韓国の国家予算は4億ドル(p106)

    ・日本が戦争に負けたのちに、38度線より南は米軍が、北はソ連軍が軍政を敷いた。もともと南は日本の朝鮮軍司令部の管轄、北は満州の関東軍司令部の管轄下であった。関東軍はソ連軍に降伏したので(p106)

    ・1971年に反対運動ができない状況にしておいた状態で韓国で大統領選挙が行われた、対立候補の金大中氏は、それまで2期7年やっていた大統領に97万票差(634vs537万)まで迫った。アメリカでは金大中氏は民主党において人気があった。(p109)

    ・韓国では、ノテウ大統領までの軍事政権はすべて慶尚道政権(慶尚北道)であった、全羅道の人は差別されていた、金大中氏はそこの出身(p110)

    ・全羅道の人達は、慶尚北道の人達を嫌う理由は、1300年前の三国時代まで遡る。慶尚道は新羅の国、全羅道は百済、韓国は儒教の国なので、儒教のメッカがあるほうが格が上という感覚がある。儒教の世界では武は蔑まされる(p113)

    ・金大中氏は北朝鮮とのつながりがあることを選挙直前に流したので当選できなかったが、キムヨンサム大統領時代に、アジア通貨危機で韓国経済が破たんした。そのため当選できないはずの金大中氏が当選してしまった(p122)

    ・朝鮮において創氏改名に反対したのは、両班の人達で、自分の家柄を持っている人達。実際には喜ばれた(p131)

    ・北朝鮮の国家予算は1兆円にもならない、なので日朝国交が正常化して経済援助が数兆円となると、北朝鮮の経済発展は間違いなく起こる。それ以上にアメリカが心配なのは北朝鮮が日本の経済圏に入ってしまうこと、これは韓国の場合に実際に起きたこと(p144)

    ・天安門事件のときに警察では鎮圧できなかったので軍隊がでてきて虐殺した。その経験から日本の機動隊に学んでつくったのが、武装警察隊である。これは160万人にいて、人民解放軍よりも多い、しかし暴動が年間20-30万件起きるので足りない(p155)

    ・日本国憲法は、皇室典範を国会の議決する普通の法律にしてしまったから、皇室内部の問題である問題が国会で議論される。明治憲法では皇室典範は憲法と同格(p205)

    平成27年4月26日作成

  • 著者は東大法学部を卒業後公安調査庁に入り、対外情報の総責任者である調査第二部長を務めた。日本のインテリジェンスの最前線にいた人である。その人が語るソ連の対日諜報活動、安保闘争と左翼陣営、オウム真理教事件の本質はそれぞれとても面白い。しかしこの本で注目すべきは北朝鮮についてだ。1983年に日本の貨物船第十八富士山丸事件というのがあり、日本人船長と機関長が拘束され7年間抑留されていた。これを連れ戻す為に自民党副総裁金丸信、幹事長小沢一郎、社会党副委員長田辺誠らが訪朝し、日朝国交正常化を進めようとした。しかしこれがアメリカの逆鱗に触れる。結局この時から(そのだいぶ前から動きは明らかだったが)北朝鮮の核開発疑惑が突如としてマスコミをにぎわし、アメリカの言いなりである外務省が難色を示し、日朝国交正常化は頓挫する。また金丸氏は検察に追及され失脚。『まさに田中角栄さんの時と同じです。それはもちろんすべて日本の検察がやったものです。しかしその背景にアメリカの意図・意向があるわけです。』日朝国交正常化が成ると北朝鮮経済は発展するが、アメリカは良く思わない。『一番の問題点は北朝鮮が日本経済の影響圏に入ってしまうことです。』韓国はあれほど成長したが、1965年の日韓条約締結から対日貿易収支はずっと赤字。北朝鮮も同様に発展すると、更に日本にお金が入る。『これをアメリカもEUも、中国も認めない。だから日朝国交正常化に反対するわけです。』だそうだ。田中角栄・金丸信・小沢一郎とアメリカをすっ飛ばそうとする政治家が、アメリカに嵌められたのは周知されてきたが、北朝鮮の核疑惑等についてもアメリカの意向が反映している事は注意しなくてはならない。現在の対北朝鮮ネガティブ世論はアメリカに作られたということである。ジム・ロジャースが今後投資したい国の筆頭が北朝鮮だ。韓国とほぼ同じ民族であり、軍隊の行進も実にきっちりやれている。これは国民の潜在力・ポテンシャルが高いということであり、将来性が有ると私も感じていた。ジムは日朝国交正常化も見越しているのだろうか。北朝鮮と交渉の行方に注目したい。

  • 中国における反日教育は「物語の上書き更新」を意味する。つまり鄧小平の読みは当たったわけだ。恐ろしい事実ではあるが、大衆の再教育(≒洗脳)が可能であることを示している。
    http://sessendo.blogspot.jp/2014/12/blog-post_31.html

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著者プロフィール

東京大学法学部卒業後の1959年、公安調査庁入庁。入庁後すぐ、ドイツ・マインツ大学に留学、ドイツ連邦情報局(BND)に派遣され、対外情報機関の実情の調査を行う。帰国後、対外情報活動部門を中心に旧ソ連、北朝鮮、中国の情報収集に35年間従事。対外情報の総責任者である調査第2部長を最後に1995年に退官する。アジア社会経済開発協力会を主催しながら、評論活動を展開。主な著作に『この国を脅かす権力の正体』 (徳間書店)、『日本人が知らない地政学が教えるこの国の針路』(KKベストセラーズ)、『ヤクザと妓生が作った大韓民国』(ビジネス社)、『米中新冷戦時代のアジア新秩序』(三交社)、『元公安調査庁2部長が教える 「統一教会」問題 本当の核心』(秀和システム)などがある。2022年12月、永眠。

「2023年 『元「日本版CIA」だから書けた 日本核武装試論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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