- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784585221937
作品紹介・あらすじ
出版文化が花開いた江戸時代、さまざまな知識が書物によって伝播していく中で、人びとのなかに「学び」への熱が高まっていった。
彼ら・彼女らはどのような知識を求め、どのような体系のなかで知を自家薬籠中のものとしていったのか。
そして、それを担う書物はどのように読者の手に伝えられたのか。
当時のベストセラーである啓蒙書や教養書、そして、版元・貸本屋の記録など、人びとの読書と学びの痕跡を残す諸資料の博捜により、日本近世における教養形成・書物流通の実情を描き出す。
感想・レビュー・書評
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「図書館と江戸時代の人びと」「江戸の読書会」「江戸の蔵書家たち」「江戸の本屋さん」と読んできたが、もしや本書でコンプリートかと思われる。
これまでの本と違い、庶民の学びにスポットを当てているからだ。
ここで言う庶民とは、士農工商の「士」以外の人びとのこと。
上記4冊のように、「豪農」「豪商」という言葉も登場しない。
資料(主に『重宝記』と呼ばれる古書)からの引用が大変多く、解説もそのすぐ後に載っている。図版もあり、大変具体的で分かりやすい展開だ。
近世初頭の本の流通・読書会、出版状況、庶民の学問の内容と目標、江戸初学者の勉学、女性の読書、浄瑠璃本、食事作法、貸本屋略史、貸本屋大惣・・
内容が膨大なため、これまで読んだ本には記載されなかったことを載せてみる。
「学問の道は、善を行い、悪を去るを旨とする。学んで書物を読んでも善を好まず行わなければ、何の用もない」
・・上記のような文面が何度となく出てくる。
今の価値観をあてはめて、時代錯誤だなどと批判しないようにね。
別段間違ったことは言ってないし、学ぶ目的を明確に把握していた時代なのだ。
意外なことに「相手尊重の教え」もある。
身分階級社会の中では、指示する者と従う者という図式が浮かぶが、これは上位者や男が都合の良いように解説してきたものらしい。
現実には、上位者は下位者に対する配慮を大切にし服従は二の次だったという。
家庭内にあっても、女性ばかりに罪を負わせることがないようにと、配慮されていた。
にわかには信じがたいかもしれないが、躾も作法も相手尊重からくるものなのだ。
言われないと分からない。教えられないと身に付かない。ひとはそういうものだ。
泰平の世になって教育の大切さが四民に熟知されるようになったのだろう。
もうひとつ特筆すべきことは、女子教育について記す書が非常に多いということ。
現代においても女子教育を禁ずる国があるというのに、なんと先進的だろう。
文字を覚え書物を読むことでものの善悪を覚え、風流を知り、心まで優しくなると。
お勧めできない本の中に源氏物語があり、この頃は好色本という位置づけだったらしい。
本を読む女性の絵も数多く紹介され、遊女たちの世界ではいかに知的美人になるかが客を喜ばせる最良の手だてだったという話も。
ということは、客である男性も知的美人を好んだということになる。
江戸中期以降は、学問としてよりも知識を得ることを楽しみとする読書に変わり、女子も同じだったという歴史が力強い。
日常の食事作法を書いたものがちょっと面白いので載せておこう。
「麺類を食うことは、汁を置きながら一箸二箸すくい入れて、汁を取りあげて食う」
「食い終わった料理に、骨や固い物、嫌いな物があったら、平壺や汁椀などの蓋のある内へ入れて蓋をして置くのがよく、食い荒らしたままにして置くのは見苦しい」
等々、相当に細かくて恐れ入ってしまう。
しかしこれもまた、教わらないと身に付かないものなのだ。
これらの本は、整版印刷になってから出版部数が格段にあがり、寺子屋教育の隆盛もそれに伴うようになる。
需要の多い教科書や啓蒙書を製作しては販売し、本屋と作者と読者が相互に関連しあうことで洒落本や浮世草子などが生まれ、読まれていったのだ。
三者の結びつきがそのまま現代の本屋に繋がることを思うと興味深い。
社会においても家庭においても相互に尊重しあうことを大切にし、女子の教育も奨励され、四民が読書好きだったという時代。むろんいつの頃も背く人はいただろうが、理念が理念として大切にされたということが尊い。
学ぶことへの意欲はいつまでも失いたくない。本書を読んでまずそれを思う。高価な本を購入してくれた図書館にも心から感謝です。 -
大事にしたいね「『学び』への熱」
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教養熱(ブーム)は江戸時代にもあった!
出版文化が花開いた江戸時代、さまざまな知識が書物によって伝播していく中で、人びとのなかに「学び」への熱が高まっていった。
彼ら・彼女らはどのような知識を求め、どのような体系のなかで知を自家薬籠中のものとしていったのか。
そして、それを担う書物はどのように読者の手に伝えられたのか。
当時のベストセラーである啓蒙書や教養書、そして、版元・貸本屋の記録など、人びとの読書と学びの痕跡を残す諸資料の博捜により、日本近世における教養形成・書物流通の実情を描き出す。
http://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&cPath=9_14_38&products_id=100803 -
近世期における読書や学問がどのような環境にあったか、どのような目で見られていたかということの概観が得られる。一章一章が別に発表された文章をもとにしているということもあり、全体として何かを主張するというよりは、多くの事例を凝縮したノートのような印象。引かれている文献の多さは圧倒的で、細切れの論文でなく一冊の本になってしまうあたりは大御所ならではの余裕のようでもある。索引あり。
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NDC(10版) 019.021 : 読書.読書法
これは、表記法に関してです。
https://www.writing-...
これは、表記法に関してです。
https://www.writing-office.com/blog/archives/979
ありがとうございます!
「」と『』の使い分け、新しい視点です。
ところで「図書学辞典」を読み終えました。
まぁ面白いこと...
ありがとうございます!
「」と『』の使い分け、新しい視点です。
ところで「図書学辞典」を読み終えました。
まぁ面白いこと、何度でも読み返してしまいます。サイズ感もいいですね!