- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784585290858
作品紹介・あらすじ
村長の息子である「ぼく」やんちゃな洟たれ小僧「タルペ」お姉さん肌のしっかりもの「セルドン」化身ラマとなった「ニマ・トンドゥプ」チベットの村で生まれ育った4人の子供たちの成長と挫折、そして再生の物語を描く、新しい世代による現代小説!
感想・レビュー・書評
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チベット農村の牧歌的な子供時代と、大人になった都会の孤独と。
懐かしさと、それでも帰りがたい故郷。
天を仰ぎ、あの日見た雪を待つ。 -
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山深いチベットの暮らし、子供時代のエピソードが微笑ましい。雪を待つタイトルがエクセレント。
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前編と後編の対比が凄まじいチベットの長編小説。前編の舞台はチベット東北部。山に囲まれ半農半牧の民が静かに暮らすマルナン村では、村長の息子であり主人公のぼく、幼馴染のタルペ、ニマ・トンドゥプ、そしてセルドンの四人が野を駆け巡る。白く覆われた山裾に朝の陽光が当たり雪面がキラキラと光り輝く様、凍てつく空気に喉が締まり吐いた息が染まる様、チベットの大地に子らが跳ねる姿が眼前に広がるようでただただ美しい。しかしのんびりとした暮らしも時が進むと共に不可逆的な変化を経て、後編、二十代後半になったぼくは息が詰まるような都会でただ一人雪を待つのだった。大人に諾々と従うだけだった四人の子供が成長し、それぞれの欲に溺れるようになった現代。そんな今の時代だからこそ、人として忘れてはならない宝が何かを呼び覚まし、心に刻み付けてくれるような作品だった。
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チベットの若い作家の長編。
半農半牧で暮らしを送る寒村の、失われつつある伝統的生活を描いた前編と、近代化が進む首都ラサのいまを描く後編に分けられた構成が、成功していると思う。郷里を同じくする四人の幼なじみの、村を出てからの運命を追う後編が哀切。
2000年代に書かれた小説であり、そこに生きる人間たちは意外なほどわれわれ現代日本人とおなじ病に苦しんでいる。小説的技巧も、いま的小説として馴染み深いスキルで、未知の国チベットを期待すると肩すかしを食う。いまこの世界の文化的一様性が進む様を見るようだが、物語世界の登場人物たちは、そんなことお構いなしに今を貪欲に求め、その結果振り回される。
紹介の少ないチベットの、現役作家の小説を、多国語に先駆けて出版した勉誠出版。チベット文学にこだわる勉誠出版に拍手。