トリックスターの系譜 (叢書・ウニベルシタス 756)

  • 法政大学出版局
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  • Amazon.co.jp ・本 (646ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784588007569

作品紹介・あらすじ

神話世界のトリックスターから現代のトリックスター的芸術家までを縦横に論じ,秩序と無秩序の境界を越境するかれら〈文化英雄〉たちに文化創造の秘密をさぐる。

感想・レビュー・書評

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  •  1998年著。
     人類学で分類されたトリックスターの概念によって、物語上、ないし歴史上それに近い人物たちの「系譜」を記したものと予想して読み始めたが、勝手が違った。トリックスターの諸機能をその最深部まで考察し、むしろ哲学的と言えるまでに掘り下げた思考を展開する、なかなか手強い書物であった。
     著者ルイス・ハイド氏は経歴を見ると、広範な知識を駆使するが主に文学評論に携わってきているように思える。本書テーマである人類学のほか、芸術に関する知識などもかなり深く、文学ばかりか視覚芸術にも詳しい。
     彼によると芸術家そのものはトリックスターではないが、彼らの行為の一部が、トリックスター的な役割を帯びるということである。古代的な神話の世界から遠く隔たった近代・現代の文明世界において、トリックスター的な価値転倒の役割を担う者は、もう芸術分野にしか見られないという意味だろう。

    「トリックスターがときどき行うことは、これら(概念の)対の状態を混乱させ、それによって意味の網それ自体を混乱させることである。」(P.113)

     本書でトリックスター的にふるまう芸術家として取り上げられるのは、マルセル・デュシャン、パブロ・ピカソ、ジョン・ケージ、アレン・ギンズバーグなど。
    「構築物はつねに排除から生まれる」(P.450)が、それに対し「まだら」のような「構造破壊力」のイメージを駆使するのもトリックスターである。

    「予言者的トリックスターは、現実に起こっていること、濁ったもの、曖昧さ、騒音に人の心を向けさせる。
     それらは現実の一部であり、濾過して取り除くべき何かではない。
     ひとつひとつが異なる言語で書かれている多くのメッセージが同時に届くのである。」(P.454)

     本書は、音楽において私自身が研究し、行おうとしていることに関し、素晴らしい示唆に満ち、最高に意義深い書物であった。
     論旨は必ずしも明解でない部分もあるが、全体に驚くほど豊穣であり、今この本に出会えたことは私にとって幸運であった。

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