木霊みょうと (愛の絵本シリーズ 1)

著者 : 吉本直志郎

• ポプラ社 (1986年9月1日発売)

感想・レビュー・書評

[ウノサチさんの感想 · 2009年1月20日]

中島潔の女性画は、童画と少し趣が違う。ほとんど抑えられた背景、風の音と衣擦れの音しかないであろう世界で、「彼女」は風に髪をなびかせ、そこに立っている。「彼女」を示すものがタイトルしかないために、観る者は「彼女」の内なるものへ想像をかき立てられる。この作品は、絵本のていをとることによって、あるひとりの「彼女」の内なるものを背景、そして物語として描くことを試みた意欲作だと思っています。はかなくもうつくし。かよわくも芯があり。頁をめくったそこには、いつか女性画に観た「彼女」の内なるものが描かれていました。