約束の庭 (心にのこる文学 19)

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591046951

感想・レビュー・書評

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  •  今年夏に劇場公開される森絵都『カラフル』を探していたら代わりに発見した作品(『カラフル』は既に貸し出し済みでした…)。タイトルで適当に借りてきたが、夏が舞台の作品で「ああ、今が夏であるだけにこういう本に自然と引き寄せられるのかなー」とか思ってみたり。ゆうき作品では初めて。10年夏休みに読んだシリーズその6。

     小学生の女の子咲はある日、図書館でクラスメイトの倉田丈に話しかけられる。彼は「渦巻が銀河に似ている」と言ってアンモナイトの化石を見せてくれるのだが、翌日学校で会った丈は無愛想で少々感じが悪い。そして、図書館にて再び丈と再会した咲は彼に「隠れ家」へと誘われる。そこでの丈は、初めて図書館で会った日のように朗らかだった。しかし、学校と隠れ家でまるで二重人格のように性格が変わる丈の姿に咲は困惑するのだが…。夏に彼女が遭遇した不思議な出来事と、少年の知られざる過去を描いた作品。

     本作のキーアイテムとなっているアンモナイトの化石だが、それを銀河と重ね合わせているのはなんだか素敵。偶然にも、この本を読み終えた次の週、地元の博物館の恐竜展に行き、実物を見てきたのだが、不意に本作のこの表現を思い出した。太古の昔に生き、その渦巻を今に伝えている化石を、数億年も前に誕生し、今も渦巻き続けている銀河に例えたのは言い得て妙かもしれない。中盤には、隠れ家での丈が実は数年前に死んだ彼の兄である「翔」であることが発覚し、彼の過去と倉田家の闇のようなものが明らかになるのだが、親の前でだけは「いい子」になる丈(翔ではない、本物の方)とその母親になんだか腹が立った。結局、悪いのは弟の丈の方だけを可愛がり、翔の死をいつまでたっても受け入れられない未熟な母親じゃないか!と。この作品は幽霊との邂逅といった常識外の出来事をもすんなり受け入れる子供と、それを受け入れられない頭のかたい大人のすれ違いを描いているように思う。だが、翔と再会した母親、咲の父親はその後どうなったのか、何者だったのかが曖昧なまま終わってしまったように思う。これはこれでいいのかもしれないが、私は最後に少しだけもやもやした気持ちが残ってしまった。

     途中、隠れ家にて翔(この時点では、まだ翔であることは明かされていない)がコップに入れた地下水を窓辺に出し、「水に日を当てると太陽のエネルギーを吸収しておいしくなる」と言うシーンがあるが、今度実際に私もやってみたいと思った。

     夕立が降って涼しくなった夕方にでも読みたい一冊。

  • 放課後の隠れ家で会う丈は、本当に同一人物なのだろうか? 持った咲は、やがて丈の家族の秘められた歴史を知る。

  • 小学生の頃に読んだんだと思う。いまでも記憶に残る。

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著者プロフィール

1949年東京生まれ 1992年『こげよブランコもっと高く』で児童文学新人賞を受賞、『四月猫ヒノキの冒険』『約束の庭』『ストーブ戦争!』『少年アキラ』など著作多数。

「2023年 『ないない島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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