(045)地 (百年文庫)

  • ポプラ社
3.14
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (149ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591119273

作品紹介・あらすじ

馬を追い野宿しながら暮らす孤独な少年イエーリにとって、幼なじみのマーラと交わした結婚の約束が何より心の支えだった-。純朴な若者がたどった過酷な運命の物語(ヴェルガ『羊飼イエーリ』)。毒ヘビに噛まれた男の一日を描いて鮮やかな印象を残す『流されて』(キロガ)。動物園の子熊に子どもが指を噛まれた-小さな「熊騒動」が大人たちの憎悪を呼び起こしていく。体面を繕いながら敵愾心を燃やす者たちの顛末(武田泰淳『動物』)。人間の傲慢さをくだく衝撃の三篇。

感想・レビュー・書評

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  • 武田泰淳『動物』
    戦後すぐの話なのだが、不思議と現代の状況と重なる部分がある。

    48/100

  • 少年時代の恋を実らせたものの妻は子供時代の友人と通じ…典型的なコキュとなってしまった主人公の結末が悲しい『羊飼イエーリ』。

    短い物語だけれど人が死にゆくさまがリアルに感じられる『流されて』。

    熊を中心に人の狡さや恨みが書かれる『動物』。
    計算ずくで上手く生きてきた南木が人の考えの及ばぬ動物を相手にして心が乱れる様子は自然の力の大きさ、人の思考の小ささを感じさせられました。

  • 「羊飼いイエーリ」
    バカにして見くびり過ぎたんだな。
    大地が美しいだけでなく時に厳しいように、
    人も美しいだけではない。
    残念で、哀しい。
    マーラは、きっと浮気の結果の子供を産み落として、それなりに罰を受けた人生を送ればいいのだ。

    「流されて」
    人の命はあっけない。
    まさか死ぬとは思ってもいないのに、亡くなってゆく命。
    わかっているつもりで、ちっとも実感としてはわかっていない、人の命のあっけなさを、見せられた思いがする。

    「動物」
    人間の理性や知識だけでは、コントロールできないものある。
    本能や感情、恨みや呪い、自然の力、
    そういったものを、どこかバカにして生きてきた南木は、
    最後はそれらの圧倒的な存在感に押しつぶされそうになり、怯える。
    大地から響く咆哮を、私も聞いたような思いがした。

  • ヴェルガ 『羊飼イエーリ』
    キロガ 『流されて』
    武田泰淳 『動物』

    どれも唐突に終わってしまった気がする三篇。
    短編から興味を持って他の本も読みたい!となる機会の多い素晴らしい
    百年文庫。
    今回は自分と相性が悪かったのかな?
    あまり心に響く話がなかったので評価低めです。

    『羊飼イエーリ』 イタリアのシチリアが舞台。
    おそらく地元あるあるネタが豊富に含まれていて、シチリアーノから見たら
    大絶賛ヒュー!なのかもしれない。
    しかし日本から出たことがない人間が読むと、とにかく景色の描写が長いのです。
    話の8割方は大自然・田舎町・そこで暮らす人々の服装などの細やかな説明でした。
    しかも四季折々に触れて丁寧に変化を教えてくれます。
    一方、人間関係や出来事は断片的なので、頭の中でつなぎ合わせて
    ストーリーを推測する感じ。
    本の半分以上はこの話でしたが、どうにも小説というよりは、絵画的な作品でした。


    『流されて』
    エッ!?Σ(゜Д゜)という速さで終わります。
    思わず顔文字を使ってしまうほどです。
    「主人公、どうしてもっと奥さんに助けを求めなかったの……」
    全てはこれに尽きると思います。


    『動物』
    右翼・左翼の活動やそれに関わる政党への考え方……
    そうしたことが説明されないまま話が書かれています。
    (当時の人にとってはいちいち書いて説明することではなかったのでしょうね)
    なので、現代の我々が読んで理解するのは少し難しい内容が多いです。
    短編ではなく、長編でじっくりこの登場人物たちの今後が見たくなる作品。


    人間の傲慢さをくだく衝撃の三篇、がこの本の後ろに書かれたテーマ。
    それぞれの話でこの傲慢の罪を犯したのは、おそらく羊飼いでは妻であり、
    流されては主人公であり(何故奥さんを頼らなかった)、そして動物では
    すべての登場人物なのだと私は解釈しました。

  • ヴェルガ『羊飼イエーリ』
    キロガ『流されて』
    武田泰淳『動物』

  • ヴェルガ「羊飼いイエーリ」、貧しい羊飼いのなかに渦巻く心。キロガ「流されて」、あっという間に読了、トラブルから自らを救うため船に乗り込んだ男の記憶。竹田泰淳「動物」、感情を表面に出さない地方大学の教授の心の中。三編を通じた書題の「地」は、いくらとりつくろっても人間のこころに潜む地の部分を示している。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、2階文庫本コーナー 請求記号908.3/H99/45

  • 人間の傲慢さをくだく衝撃の三篇・・・ではないと思う。どの作品にも「動物」が登場するし、そこそこの役割を担ってはいるけれど、比重は各作品でかなりばらつきがあるし。それはヴェルガの場合「投影」、キロガは「装置」、武田は「連結」かな?うーん、ただこの百年文庫シリーズは好きです。

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