- Amazon.co.jp ・本 (165ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591119303
作品紹介・あらすじ
謀叛に失敗し島に流された男が、絶望のなかに新たな人生の境地を見出していく菊池寛の『俊寛』。巨大な体躯に釣り合わぬ童顔、工場に新たに雇われた男はうまくしゃべることもできなかったが…。忍耐と誠実でついに絶大な信頼を勝ちとっていく男の物語(八木義徳『劉廣福』)。異国で燈台守となった老人は四百段以上もあるらせん階段を上り下りする孤独な仕事に精励するが…。一瞬の油断がまねいた悲劇(シェンキェヴィチ『燈台守』)。運命の波に襲われた人間たちの生き方。
感想・レビュー・書評
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「俊寛」
こうあってほしい。
人間の強く自然な生きる姿を見せられた思いがする。
文明とか立場とか、それ以前の純粋な生きる力。
その姿は美しい。
その心は自由だ。
いい小説だった。
「劉廣福」
なんという好人物。
大きな丈夫な体に、きれいな心を持っている。
それをちゃんと感じて理解する人たちが、彼の周りにいる。
そして、一見、学が無い愚か者のように見えて、本当は賢い。
神様みたい。
心が洗われるお話でした。
「燈台守」
今まで自然の厳しさに打たれていた男が、安住の地を望み、とうとう手に入れた平穏。
それは人に破られたのか。
いや、やはり、望郷の念という、人として自然な感情によって乱されてしまったのだ。
あらがえないものがあるのだろう。
・・・しかし、仕事をしてからゆっくり読めばよかったのに、とも思う。
結果として故郷へ戻りたくなって、その場を去ることになったのかもしれないけれど。
仕事や生活を忘れるほどの衝撃に襲われて、故郷の言葉や思い出に再会したのだなあ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人生における幸せとは?と考えさせる三編。中でもシェンキェヴィチ『燈台守』は荒波を超えて凪に憧れる老境を描いて心に残る。57/100
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『俊寛』は能や平家物語の結末よりも結末はこうであって欲しいと思う物語でした。
流された先で一人残されてもそこで新たに家族を作って力強く生きたのなら都人の理想とは違っても幸せな生活だと思います。
悲劇的な俊寛しか知らなかったのでこの物語には救われました。
『劉廣福』の純粋な大男の心の美しさ、それを理解する婚約者や日本人の姿に清らかな美しさを感じました。
素敵な物語でこの本の中では一番好きです。
『燈台守』は過酷な人生で世界中を歩いた男が手に入れた穏やかな灯台守の仕事と世界が故郷の言葉で書かれた本を手に取ることで崩れてしまう悲劇。
年老いて異国で暮らすことの寂しさが溢れてしまったのだろうけれど寂しい終わり方でした。 -
名前は超有名だけど読んだことはなかった菊池寛。これを読んでみての印象はインテリエンタメ。ロケーションは平安時代の鬼界ヶ島。パッと目に浮かぶ明快なストーリーラインで読ませる。結論は予定調和。芥川龍之介なんかが近いんだろうか。
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菊池寛だけは読んだことありですが、後は初めて。
とはいえ菊池寛も、あまりにも何度も教えて系掲示板で「恩襲の彼方に」を見かけるので、青空文庫で読んだだけなんだけど(^_^;)
これに収録されている「俊寛」も割と見かける。
そういう意味では、ポプラ百年文庫的には珍しいかも(あんまり有名なのが入ってないイメージ)
どれも割とすんなり読めました♪(そういう意味では当たりの方)
菊池寛がわりかし読めるかも…という感触なので、そのうちリバイバルしてた『真珠夫人』とかいっちゃう?
装画 / 安井 寿磨子
装幀・題字 / 緒方 修一
底本 / 『菊池寛文学全集第3巻』(文藝春秋新社)、『八木義徳全集1』(福武書店)、『世界短篇名作選 東欧編』(新日本出版社) -
シェンキェヴィチ の『燈台守』が、一番波のテーマにあっていて、情景が細かに描かれている。
荒波に揉まれるように、人生の手のひらから、大事なものをひとつひとつ取りこぼしてきた老人が、やっと終の棲家に出来ると思ってたどり着いた燈台。
そこから見える景色の美しさ。
突然、ふたたび波にさらわれてしまう幸せ。しかも、思いもよらない形で。 -
菊池寛『俊寛』
八木義徳『劉廣福』
シェンキェヴィチ『燈台守』 -
図書室の奥深くからみつけました。「百年文庫」シリーズは、ここ100年間に世界中で書かれた短編小説を、一つのテーマに沿って本にした、いわゆる「アンソロジー(作品集)」。その中の一冊、「波」がこの本のモチーフになっている。
平家に反逆したために島流しになった惨めな僧侶は、どのようにして新しい人生に気付いたか。時代は飛び、満州の日本人が経営する工場にひょっこりと現れた、どもりのひどい、取るに足りないと見られた男が、いくつかの冒険を経て、工場で誰よりも信頼される工人になったいきさつ。そして最後の物語では、世界を放浪し、あらゆる運に見放された、ポーランド人の老いた兵士が、パナマ運河の灯台守の職を最後に得るが、そこに思いがけない事件が起こる・・・。
短編小説なので、意外にすぐ読める。時代を旅するタイムマシンのような本。このシリーズは傑作だー!